大掃除-4-
「終わった……」
滅多に掃除をしない照にとって、一人で進んでこの量をこなすのは骨が折れる作業だった。
しばらくここで休んでから居間にいる飛鳥の様子を見てみようと重たい腰を上げて向かう。
そこは前のゴミだらけで暮らしていた居間ではなく、新しい物件と疑うほどの綺麗とした部屋になっていた。
おお、と感心していた照に、ソファーに寝転んでいた飛鳥が片手を上げながらが細い声で言った。
「が、頑張りました……」
お腹から鳴る音の方が大きかったため、照に聞こえたかはわからなかった。が、それでも照は冷蔵庫を開けた。
適当に入れておいたはずの冷凍食品や飲み物が、綺麗に整理整頓されていて戸惑うものの、目的の物を見つけて電子レンジに入れる。
何分か経ち、温めが終わった音が鳴る。照はそれを取り出して皿に盛る。
出来たてホヤホヤの匂いが部屋中を包み込み、その匂いはいやがおうにも飛鳥のところへ向かってくる。
「ほら」
「へ?」
匂いの元はソファーの前に置かれてあるテーブルの上で止まった。
「ピラフ……」
「食え。腹の音がうるせえ」
わざわざ照が飛鳥のために用意してくれたのだ。
そのことに驚きを隠せない飛鳥だったたが、食欲に負けてしまい、スプーンを手にとってピラフを食べる。
それはあっという間になくなり、空の皿がテーブルに置かれた。
「ごちそうさまでした~」
「ん」
「冷凍食品たまに食べるとおいしいですね」
すっかり元通り元気になった飛鳥は意気揚々と立ち上がり、皿を片しに台所に向かう。
慣れた手つきで皿を洗剤で洗いながら、飛鳥は鼻歌交じりに言ってきた。
「あとはおトイレだけですね」
「テンション高いな」
「だってもう少しで大掃除が終わるんですよ」
洗い終わった皿を拭き、食器棚に置いて、飛鳥はそのまま意気揚々とトイレを掃除しに向かった。
その後ろをついて行った照だったが、トイレ前で飛鳥が照にストップをかける。
「ぼ、ボクだけで大丈夫ですから。照くんはもう休んでてください」
トイレ自体大きくはなかったため、二人も入れるかはわからなかった。
その問題もあるが、飛鳥はなんとなく男子と二人でトイレに入りたくなかったというのもあった。
だが照は後者のことには気付かないまま、一人で居間に戻った。
ふぅ、と一安心した飛鳥だったが、トイレは意外にも綺麗にされていた。思わず拍子抜けの顔をしながらも、飛鳥はやれるところだけでも掃除をした。
五分もかからぬうちに出てきた飛鳥に対して、テレビを観ていた照は少し驚いたが、
「そう言えば陽がマメに掃除してたな」
以前のことを思い出して言った。
なんとなく照の言ったことがわかった飛鳥は、頬を少し紅く染めて軽く喉を鳴らす。
「と、とにかく、これで終わりましたね」
「終わったな」
「「…………」」
実感が湧かないまま、照の家の大掃除は幕を閉じた。




