大掃除-2-
サンドイッチを食べ終えた二人は、ようやく照の家の大掃除をし始めた。
飛鳥の家から二人分のマスク、雑巾、バケツ、ゴム手袋。洗剤、大量のゴミ袋。掃除機を借りて挑んだ。
制服は汚れると思ったので、二人は一旦学校指定のジャージを着た。
「まずは玄関から順番にしましょう」
決意とやる気を固めて飛鳥は照の家の扉を開けた。
そこには、飛鳥の予想以上の汚さが待っていた。思わず手にかけた扉をそのまま閉めてしまいそうだった。
「照くん、よくこんな状態で住めますね……マスクしてても臭ってきます……」
「そうか? 全然臭わねーけど」
「もう鼻が麻痺してるんですよ……」
それでも飛鳥は挫けず、まずは乱暴に置かれてある靴を救い出した。
照の物と思われる革靴とスニーカー、運動靴を全て確保したら、今度はそれ以外のゴミと思われるモノをゴミ袋に入れる。
ゴミの多くは食品などを包む袋で、たまに生ものと思われる物体もあった。
ゴミを撤去していき、ようやく玄関の床が見えてきたところで一息つく。
そして、ゴミでわからなかったが、ちゃんと靴入れが存在していた。
「なんで靴入れに靴を入れないんですか?」
「いつも使ってるから、入れるのめんどーだし」
「はぁ……」
ゴミ拾いは一旦止めにして、今度は床や靴入れを雑巾で拭いた。
洗剤を使ってへばりついた汚れを一つ一つ取り除いていった。
靴入れの中も外も綺麗になったら、靴も一つ一つ綺麗にした。靴を綺麗にする道具も靴入れにちゃんと入ってあったので、それを使って汚れを落としたり磨いたりした。
ようやく玄関だけだが前とは別物みたいになった時にはすでに、ゴミ袋が一つパンパンになっていた。
「これでお客さんを玄関に招くだけはできますね」
「奥見ただけで帰りそうだけどな」
次は玄関から続く一本の廊下を掃除した。
この廊下も玄関と同様、まずはゴミを取り除いてから床に掃除機かけたり、最後に雑巾で拭く。
途中、照や陽の失くしたと思っていた物が発掘されたりして感動していた。
玄関より長い面積だったため、時間はかかったがちゃんと綺麗にはなった。
「廊下になんで服があったりしてたんですか?」
「脱いだやつをそのまんま放置」
「せめてハンガーにかけたりタンスにしまっておいてくださいよ……コートが出てきたのは本当にびっくりしたんですから」
廊下の掃除が終わったところで、日は地平線を越えていた。それに代わり、月が辺りを照らし始めていた。
掃除している途中、同じフロアの住人にひどく驚かれていて、エールとおやつを貰ったりしていた。
「お疲れ様でした〜……」
半日かけたはずなのにまだここまでしか終わらず、これからまだまだ掃除箇所が残っていることに飛鳥は少し憂鬱になっていた。
「……つか、なんで俺まで掃除しなきゃいけなかったんだ?」
「それはこの家の持ち主が照くんだからですよ」
「くっそ、ほんとはあいつ一人でやるはずだったのに……」
「さすがにそれは拷問ですよ……」
んー、と飛鳥は体全体を伸ばして疲れた身体を休める。色々なところを使っていたようで、痛い箇所が意外と多かった。
「んで、これからどーするんだ?」
「そうですね……明日は休みですし、照くんが構わないなら、その……」
モジモジと飛鳥は指同士で弄る。
何か言いづらいことなのかと、照が思っていた時に飛鳥がやっと口にした。
「よ、夜ですけど……掃除、続けていいですか?」




