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突然の再会・揺れ動く気持ち

「空が綺麗だなぁ。」

いつになく綺麗に晴れわたっている空を見上げて未紀は言った。

今日は高校の入学式。

胡柳未紀こやなぎ みきは今日から高校1年生。

でも1つ問題があった。

それは同じクラスに知っている人が一人もいないことだった。

「あーあ。誰か知っている人いないのかなぁ。」と呟いていると、クラスの名簿に見たことのある名前があった。

「あれ!?たしかこの名前って…。




そっかぁ!!ミニバスで一緒だった…。『呉羽涼太くれは りょうた』。」

その人の名前は呉羽涼太。小さい頃にやっていたバスケのチームで一緒だった。


なんだか未紀は涼太に妙に親近感を感じた。



未紀には絶対に入ると決めた部活があった。それは『バスケ部のマネージャー』

未紀達の高校には女バスはなかった。中学までバスケ部に入っていた未紀は絶対に入ると決めていたのだった。

入部してみてビックリ!!

「涼太もバスケ部だったんだ…。」


涼太はとても人なつっこい性格で、どんな人とも仲良くなっていた。


ある日部活に行く途中、未紀はふと前を見るとトボトボと涼太が前を歩いていた。

「涼太君!!一緒に部活行こっっ。」ちょっと恥ずかしかったが言ってみた。

「お-!胡柳かぁ。行こ行こ!!。」

いつものあの笑顔…。

【涼太は特別カッコイイ訳でもないが、あの笑顔はきっと学校中で一番】

未紀は涼太の笑顔を見てそう思った。


この日から無意識に涼太のことを目で追っていることに、まだ未紀は気づいていなかった…。



涼太と話しをすることが出来るのは部活のときだけだった。


クラスでも話そうと思えば出来たかもしれないが、未紀はあえてクラスでは話さなかった。

未紀にとっては、バスケ部にいるときの涼太が一番涼太らしく見えたからだった。


「もぅすぐ文化祭だね!!。未紀は誰か好きな人いないのー!?。」一緒にマネージャーをやっている咲穂さきほがいたずらっぽい顔をして聞いてきた。「うーん…。好きなのか分からないやっっ。でも一緒にいれて凄く楽しい人はいるよ!!。」ちょっと戸惑いながらも未紀は今の正直な気持ちを咲穂にはなした。


「え〜誰だれ!?。」


「……涼太君…。」



「ぅそ―!!。私も涼太君いいなって思ってたの!!。」



「えっっ…そうだったんだ。」



「あの笑顔が可愛くない!?。」




《…咲穂も同じところを好きだったんだ……あの笑顔が私だけに向いてくれたら…》


そう思うと心の奥がチクンってなってその場にいるのが辛くなり、勝手に足が動き出してしまった。

「未紀…?…未紀!!どうしたの!?。」そんな咲穂の声が聞こえないくらいに、夢中で走っていた。「…いった…い…。」

どこかで足を捻挫したみたいで見てみると足がパンパンに腫れていた。


「どうやって帰ろう…。」


外をみるといつの間にか暗くなり、夕焼けが出ていた。


未紀の家は学校から4キロもあり、自転車で来ているので捻挫している足では到底帰れるような距離ではなかった。


親も遅くまで仕事をしている。

「このまま……。」



――『ガラガラッ』


「あれっ!?。…もしかして胡柳か?。」


ふと顔をあげるとそこには汗でクシャクシャな涼太が立っていた。


《…どおして…!?…》


未紀は驚きで身動きがとれなくなっていた。



「あっっ。足捻挫してるじゃん。」


「……うん。」


やっとの事で一言だけ喋れた。


「歩ける!?…訳ないよね…。……送ってくよ!!家どこ!?」


耳を疑った。

《送ってく?誰が…?涼太君が…?誰を…?…私を…?》


もう未紀は何が何だか分からなくなっていた。




「家…。」


涼太の声で我にかえるとビックリ!!

涼太の顔が未紀の目の前にあったのだ。


「うわっ!!。家…は―――――。」




それから先は何を喋ったか覚えていない。


気がつくと未紀は涼太の背中の中にいた。



涼太の匂いと大きい背中にドキドキしながら


「ごめんね。重すぎだね。」と平然を装ったけど、きっと心臓のドキドキが聞こえてたかもしれないね。



「胡柳軽いからそんな心配なんかしなくていいよ。」と涼太はあのいつもの笑顔で答えてくれた。


いつもと違う横からの涼太は何だか凄く男の子っぽかった。ポタッ…ポタッ

涼太の背中に冷たいものが落ちていた。

――未紀の涙だった。

「えっっ。どうしたの!?足そんなに痛いのか?。」


「ごめ…ん…。違うの…。なんでだろう?」

涼太はなんにも言わずに未紀を背中で泣かせてくれた。


「チャリ置き場着いたよ。ホントはダメだけど…今日は特別ってことで。」

小さく笑って未紀を自転車の後ろに乗せてくれた。

自然に笑顔になっていた。


「おっ。胡柳やっと笑ったな。胡柳は笑顔の方が似合ってるよ。」

《普段あまり誉めたりしない涼太君が…》


ちょっとしたことだったけど凄くすっごーく嬉しかった。


そして無事に家に帰ることができた。



帰り際、涼太は未紀に

「ごめんな。半強制的に送って。」と言って帰っていった。


《そんなことないよ。すっごく嬉しかったよ。》と言いたかったけど、涼太のすまなそうな顔をみると何だか言えなかった。




いつもとなんら変わりのない毎日。

しかし1つだけ変わったこと――


――『涼太のことが好きだということ』



あの日から未紀は涼太を避けずにはいられなかった。


《 ―泣いた顔

  ―笑った顔

 見られちゃったもんな…。》


《部活でもなるべく涼太君と目を合わせないようにしよっと…》


未紀がそんなことを思っていた時だった。


「胡柳!!。」

涼太の声だった。振り向こうか迷う暇もなく、涼太が

「なぁ、審判やるときの笛どこある?」と聞いてきた。


仕方なく教えてあげると、“ありがと”と言うと、いつもの笑顔よりももっと大きい笑顔で笑っていった。


《ずるいよ…》

未紀は今まで避けてきたことがバカらしくなってきた。



そして前よりももっともっと涼太のことが好きになっていった…


あとわずかで文化祭。


未紀は文化祭で告白することに決めた……

文化祭当日。

未紀は文化祭の3日目に後夜祭があることを知り、ダンスを踊っている途中で呼び出して告白することにした。



文化祭前日、咲穂からメールがきた。

咲穂が涼太を好きということを知ってからなんだか気まずくなっていたのだった。


『★未紀え☆

未紀は涼太君のこと好きなんだよね!?それなのにあんな軽いこと言って未紀の気持ち考えてたら嫌だったょね? ホントにごめんね(T ^T)

今は私、涼太君のことなんとも思ってないよ!!

未紀さえ良ければまた前みたいに仲良くしたいなって思ってるんだけど…ダメかな!?』


このメールを見た瞬間、心につっかえていたものがすうっと消えていったような気がして、涙がとめどなく流れてきた。そして文化祭で告白することを言った。


すると“がんばれ!!応援してるよ(o^-’)b”と返ってきた。



《咲穂、応援するって言ってくれた…》


嬉しくてうれしくってたまらなかった。




文化祭はとっても楽しかった。

―クラス発表、模擬店、体育祭、パフォーマンス大会、ミスコン…

どれも初めてのことだらけで凄く楽しかった。



いよいよ後夜祭。


未紀達の学校には好きな人に鈴をあげるという伝統があった。



もちろん未紀も鈴を買った。


《よし。当たって砕けろだ!!》

ポケットの中の鈴をギュッと握りしめて未紀は自分に気合いを入れた。



自分で呼び出すのは恥ずかしいので、咲穂に涼太を呼び出してもらった。



―7時21分


涼太がだんだんと近づいて来た。

《いやだー。逃げたいo(T□T)o》

未紀はそんな気持ちを振り払うかのように涼太に笑いかけた。



「ごめんね。呼び出しちゃって。実はね…私…涼太君のことが……好きなの。」



この時未紀は気づいた。

涼太の顔が今まで見たことのないくらいの真顔だということに…



「涼太君は好きな人いる!?」


「…ううん。」


「じゃあ…じゃあね、私と付き合って下さい。お願いします。」


「………。」


《そんなこと突然言われてもそりゃあ困るよね》未紀はそう思って

「あのね、今すぐに返事しなくても良いから…ちゃんと考えて欲しいんだ。」



「…わかった……。」


そう言うと涼太は小さく手を振って戻っていった。



《あ―――!!鈴渡してない(+o+)》

未紀は鈴を渡し忘れてしまったのだ。


仕方なく未紀はみんなの元に戻っていった……


次の日、未紀は学校に行くのが嫌だった。

まだクラスで会うだけならいいが、部活もあることを忘れていたのだ。



《嫌だ―!!どんな顔して学校に行けばいいの!?》


未紀は今までないくらい涼太のことを避けまくった……



涼太の方はいつもならクラスの中心にいて明るく振る舞っているのに、今日は今までが嘘のように静かだった。


《私は何をしているの!?涼太君のあんな顔が見たかった訳じゃないのに…》


未紀は涼太が真剣に考えてくれていることに対する嬉しさと同時に、いつもとちがう涼太にしてしまったことに対する罪悪感でいっぱいだった。



《いっそのことなかったことに出来ればいいのに…》



そんなことを思っていたとき、メールが届いた。

―涼太君だ…


涼太からメールがきたときに流れる着うたが流れている。


内容は―

『今から体育館の前に来て。』



無我夢中で走っていった。

《涼太君が答えを出したんだ…》


怖かったけど直接答えを言ってくれることに嬉しさを感じた。



体育館に着いてみると、涼太が階段のところに座っていた。



「俺、ちゃんと考えて答えを出した。

胡柳は俺にとって凄く大切な人だと思う。

だから今すぐには恋愛感情で見れないけど、胡柳のこともっと知っていくとこから始めようと思う。だから付き合お!!。」



《―フラれると思ってた…

でもこんなに考えてくれて、しかも付き合うなんて…》


ビックリしたけど凄くすっごく嬉しかった。言葉だけでは表せないくらい…


「…はい!!。あ!!あのね、この前に渡し忘れちゃったから…。」

未紀は渡し忘れた鈴を涼太の前に出した。


すると涼太は

「これってぅちの学校の伝統の…!?」


「うん。」


「胡柳ってどじだな。鈴渡し忘れるとか。普通忘れないだろ?」


そう言うと涼太は今までに見たことのないくらい爆笑していた。



えくぼがとっても可愛かった。



こうして涼太と未紀は付き合うことになった。



もともと同じクラス・同じ部活なので、付き合い始めてもあまりカレカノという意識はなかった。



それよりは、前よりも仲が深まったという感じだ。

それでも一応付き合っているなりに一緒に帰っていた。


「胡柳〜!帰ろ。」


「あのね、一応付き合ってるんだから…その…。」


「なんだよ。言ってみ?未紀!!。」


《未紀…って言ってくれた?》


自然と顔がにやけてしまった。


「なんでもな〜い!!涼太っっ。」


『涼太』と言った瞬間かあ〜っと顔が真っ赤になった。



「なに真っ赤になってるんだよ。」


涼太もちょっとだけ真っ赤だった。


「涼太も真っ赤だよ〜!!」


そう言うと涼太は

『うるせっっ。』と言ってちっちゃく笑っていた。


《照れてる。かわいい!》



未紀は付き合い始めてから涼太の知らなかった一面をたくさん見つけた。



―あっというまに夏休みが近づいて来た。


今まで誰かに告ったことも、もちろん付き合ったこともない未紀は初めて彼氏と夏を過ごすことになる…

涼太は未紀と比べ物にならないくらい頭が良かった。


「未紀もちょっとは勉強しろよ。」


「だって何をいってるのか分からないんだもん…」


未紀は涼太の提案で図書館デートに来ていた。

《初デートが図書館って…あ〜あ、二人で遊園地とかに行きたかったな…》


未紀はちょっと不機嫌になっていた。


「よ〜し!!できた。未紀は?」


「あともうちょっと…」

しぶしぶ課題を終わらせて図書館を出ると、

「俺、ちょっと寄って行きたいとこあるんだけど…つきあってくれない!?」


さっきまでの不機嫌が嘘のように未紀は

「うんっ。どこいくの?」と元気いっぱいに聞いた。


「内緒〜!!。」


涼太は怪しい笑みで言った。




未紀は言葉が出なかった……。


《遊園地…??》


「涼太なんで…。」


「なんでって初デートはやっぱり遊園地だろ!!驚いたか?」


「………」


「未紀…?あ〜泣いてるし!!未紀は泣き虫だな。」


「泣いてないもん。」

ちょっと強がってみたけど涼太にはお見通しだったかな…?






――夕暮れ……

「あ〜楽しかった!!ありがと。涼太!!」

「……」


涼太はいつになく真剣な顔をして未紀を見つめている。


「未紀…。あの時は恋愛感情じゃないって言ったけど、今は未紀がいないと凄く寂しくて仕方ないし、他の男と楽しそうに喋っているとやきもちやいたりするぐらい未紀が好きになっているんだ。だから付き合って下さい。」


「え…?もう付き合ってるじゃん。」


「前のは未紀から俺への告白。これは俺からの未紀への告白。」


「あはっ。…はい。お願いします。」


「……目つぶって。」


「え…?」


「いいから早く!!」



『ちゅ…』



未紀はこの日、生まれて初めて両想いを経験し、生まれて初めてキスをした。


涼太になら、ファーストキスをあげてもいいと思ったから…。







「この先、どんなことがあっても、たとえ涼太が私を好きでなくなったとしても私は絶対に涼太のことがずっとずっと好きだよ。」



「ばーか。俺だって未紀が俺のこと好きでなくなったとしても俺は絶対にずっとずっとず―っと未紀のこと好きだよ。」




二人で誓った約束は、永遠のものだった。


だけど現実はそうも簡単なものではなくて……

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