断罪✕2
「ベータ・カロチン公爵令嬢!」
「アルファ・アード王太子殿下!」
「お前との婚約を破棄とする」
「殿下との婚約を破棄致します」
「「なっ!?」」
この日、王太子であるアルファ殿下と公爵令嬢のベータ嬢の婚約式として盛大なパーティーが開かれているなか、主役であるはずの二人があり得ない発言を仲良くハモるように叫んだでいた。
会場に集まる者達は何が行われた始めたのか固唾を飲んで見守っていた。
「ベータ!私のマネをするな!」
「アルファ様!マネしないで願います!」
「なっ!?」
またもハモる二人。
皆は互いに断罪を行われようとしている事が解ったが、互いにハモりながら断罪を行っているため、重たい空気となるはずの断罪の場が軽く感じられた。
皆からの覚めるような視線に構うことなく二人は断罪を続けた。
「貴様はあろう事か、ここにいる・・・」
「殿下はあろう事か、ここにおります・・・」
「アルマ男爵令嬢を苛めていただけではなく・・・」
「アルト男爵令息を苛めていただけではなく・・・」
「階段から突き落とす悪行は我慢ならん!」
「階段から突き落とす悪行は我慢なりません!」
「よって、私はデータ公爵令嬢を断罪する!」
「よって、私はアルファ殿下を断罪致します!」
「真似するな!」
「真似しないで下さい」
もはや仲が良いのでは?
会場に集まる誰しもが感じていた事だ。
それだけ、二人の台詞は見事なまでに重なっていた。
しかし、皆は戸惑う。
見事はハモりに内容が入って来ない。
今もハモりながら断罪を続けている二人が何を言いたいのか解らないでいた。
皆が婚約するなか一人の令息が一つ前へ出る。
「あ、あのう・・・」
「何だ!」
「何ですの!」
「二人同時に話されましても解りませんので、ここは互いに意見を話されていてはどうでしょうか?」
「「確かに・・・」」
二人は勇気ある令息の進言に納得するとハモる事を終わりにした。
まずはアルファから発言をする事にした。
この辺は確りと譲るベータ。
やはり仲が良いのではと疑いたくなる。
「ベータ、お前はアルマ男爵令嬢を散々苛めた挙げ句、階段から突き落とすと言う許されまじき悪行を犯した。よって私は貴様との婚約を破棄するものとする」
「私は妃教育で忙しいうえ学園にいる時も一人で行動する事はございませんわ。寧ろ、殿下がアルト男爵令息を散々苛めた挙げ句、階段から突き落とすと言う許されまじき悪行を犯しました。よって私は殿下との婚約を破棄致しますわ」
「私は王族だぞ、王族の者には常に陰が監視している。そのような中でそんな稚拙な行いなどすれば、既に父上や母上に報告されておる。貴様こそ自身が行わず仲の良い令嬢を使って犯行に及んだのだろう」
「何て事を申しますか。解りました、ビーカー様、メスシリンダ様宜しいでしょうか?」
データ公爵令嬢の声掛けによりいつも公爵令嬢と一緒にいる二人の令嬢が前に出る。
「お二方は殿下が述べた罪状に心当たりはございますか?」
「私はデータ様がおられない時は、多くの方に勉強を教えておりましたので皆様が無実を証明して下さいます」
「私はデータ様がおられない時はお仲間の皆さんと共にお菓子作りをしております。出来上がったお菓子を皆でお配りしておりますので皆さんが無実を証明して下さいます」
二人の発言に多くの者が頷いていた。
無実の証明は明らかであった。
「見たことですか私共は無実ですわ。それよりも殿下の方こそ側近の方を使って犯行に及んだのではございませんこと」
「な!?フラスコ!プレパラート!」
アルファ殿下の呼び出しにより二人の令息が前に出た。
「お前達はデータが述べた罪状に心当たりはあるか」
「殿下、俺の正義は剣です。苛めなど稚拙な行いなどは興味御座いません。もし俺が行うなら決闘による命のやり取りです」
「殿下、私は父である宰相を目標としております。私でしたらそのような稚拙な行いはせず完璧に私の目に入らないよう排除しております」
二人の発言に多くの者が引く。
無実の証明は恐怖へと変わった。
「見たことか、私共も無実である事が解ったであろう」
「寧ろ怪しいですわ」
「な!?」
しかし、側近二人が述べた通り二人が代行して行ったとしてはあまりにも稚拙過ぎた。
互いが罪状に矛盾を感じる。
「では、どういう事だ?」
「では、どういう事ですの?」
「「・・・」」
「アルマ男爵令嬢!」
「アルト男爵令息!」
二人の叫びにより会場の者達が二人へと視線を向ける。
新たにスポットライトを当てられることになった二人は息が揃ったように仲良く忍び足で会場を抜けようとしていた。
「どういう事か説明して貰おう」
「どういう事か説明して貰えませんこと」
衛兵に捕まる二人は仁王立ちする王太子殿下と公爵令嬢の前に連れて来られていた。
おそらく、この会場内で最強である二人の威圧に男爵令息・令嬢ごときが勝てる訳がない。
「「申し訳御座いませんでした」」
二人は声を揃えて頭を地に着けた。
可笑しな断罪劇は幕を閉じる。
ことの真相はこうだ。
実は二人は双子であった。
双子の二人は互いに恋をした。
方や公爵令嬢に、方や王太子殿下に。
身分不相当の恋であったが、二人は諦める事をしなかった。
アルマは公爵令嬢を貶めるかのように王太子殿下に進言し、アルトは王太子殿下を貶めるかのように公爵令嬢に進言していました。
二人の計画は上手くいっているように思えた。
だが、まさか同じ日に同じ場所で同じタイミングで二人が断罪するとは思いもせず、今宵のような珍事が起きる事となった。
王家はアルマ男爵令嬢とアルト男爵令息に王家による婚約を虚偽により破談させようとした罪を罰し、互いに異性接触禁止の最果ての修道院にそれぞれ送られることとなった。
また、男爵家も領地を没収され爵位も返上となった。
そして、断罪劇を行った張本人達は・・・
「だけど、あの時の君の迫力は凄く、思わず本当に破棄となるのではと心配してしまったよ」
「まぁー、それはこちらの台詞ですわ。私、本当に捨てられると思い涙が出そうになりましたわ」
「御免御免、私が君を捨てるなんて事はあるわけないよ。こんなにも君の事を愛しているのだから」
「アルファ殿下・・・」
「データ・・・」
「あのう・・・宜しいでしょうか?」
二人の世界に割り込むように入り込む勇気ある人物はパーティーで手を上げた勇気ある令息であった。
令息は勇気ある発言を買われ王太子に仕える事となった。
そんな勇気ある令息の他にもこの場には王太子殿下の側近と公爵令嬢の取巻きもテーブルで互いの手を握りながら見つめ会い二人だけの世界に酔いしれている二人を冷ややかな目で見ていた。
「どうした?」
「どうしましたの?」
「二人は仲の悪かったのではないのですか?」
「「私達が?」」
互いに顔を見合わせると思わず二人同時に吹き出した。
「すまんすまん、私達は仲が悪い所か寧ろ良すぎる方かな」
「そうですわ。何でも相談し会える仲ですのよ」
二人の仲は会場に集まりし者達が感じた通り仲睦まじかった。互いに公務によって学園に通う事が少なく、互いに通う日も違っていた。
また、公私混同しないよう学園では極力接触しないよう心掛けていたため、世間からは仲が良いように思えなかった。
それが今回のような喜劇が生まれる事となった。
「それにしても怖かったですわ。可笑しな令息に付きまとわれて殿下に相談しましたら、殿下も似たような令嬢に付きまとわれていると仰られた時は驚きましたわ」
「ああ、本当に驚いたよ。更に調べてみたら二人が双子だと言うからな」
「驚きましたわね。虚偽・発言・やり口全て同じでしたのも双子ならではだったのかしら」
双子は知らなかった。
学園ではほぼ交じることが少ない二人であったが、王宮では暇があれば顔を合わせて世間話や相談を行っていた。
それによって双子が行っていた事は常に情報交換されていた。
「皆様も知っておられたのですか?」
側近&取巻き達は首を横にふる。
側近&取巻き達が呆れるように二人を見つめている姿を見て勇気ある令息は殿下に仕える事になった事を少し後悔していた。
「いやー、面白かったな」
「そうですわね」
「断罪には・・・」
「断罪ですわね」
「はははははは」
「ふふふふふふ」
仲睦まじく笑い会う二人を見て勇気ある令息は思う。
今度、婚約者に何か贈ってみたいと。




