交渉の余地
リーゼンベルクがキセルをふかして言った。
「戦闘力の方に目が行きがちだが、なかなか頭が回る王子だと聞いているぜ。この前も辺境の地で治水工事を指揮してたそうだしなァ。国の整備を積極的にしてるのは赤の王子だけだし、こう見えても俺ァ結構、おたくんところの大将を買ってるんだぜ?」
「なら王立選では、ご協力いただけると考えていいんでしょうか」
「それは条件次第だな。
領地が戦火にのまれるならアウトだ。出直してきなァ」
煙をふぅーっと口からはく、リーゼンベルク。相手を値踏みするように見る。
対するジュドーは不敵な笑みを浮かべて言った。
「なら、うちの陣営に乗った方がいいでしょう。条件はこちらに」
ジュドーは机の上に巻物を置いた。
リーゼンベルクはキセルを机に置き、巻物を手にする。蝋で止めてあった封を切り、中の文章に目を走らせるリーゼンベルク。
「ここに書かれてることが本当なら、穏やかなことじゃあねェな。魔獣を使った兵を作るなんてェのは頭のネジがぶっ飛んでる奴のやるこった」
「国境付近のいざこざが長く続けば、致し方ない選択かと。
恐らく三つの陣営の中で、一番我が陣営が条件のよい提示ができているはずです。リーゼンベルク殿、どうか判断を誤らなきよう、賢明なご判断を」
リーゼンベルクは巻物を巻くと机に置き、代わりにキセルを手にし、煙をくゆらせた。
「賢明な判断ねぇ。一番はこの戦争がなくなることだが、恐らくそう上手くは解決できゃあしない。どっちが先に消耗するかの、削り合いになってきているしなァ。
かといって、ここに書かれている内容をハイそうですか、協力いたしますってな形で認めるわけにはいかねぇなァ」
「それは、この魔獣軍が完成したら、無能力者や魔力が微量の者を戦地に向かわせることになるからですか?」
「戦地で魔獣を飼い慣らして闘うなんて芸当、魔法が使えても出来ねぇことよ。
無能力者や微量の魔力保持者が一朝一夕に出来ることじゃあねェ」
リーゼンベルクは口から吐き出した煙のいく先を見つめて言う。
「それをこれから訓練を積んでーー」
「そうやすやすとはいかんだろうよ。
それに、これ以上悪評を積んでどうする?」
試すようにジュドーを見る、リーゼンベルク。
「ーーこれは交渉決裂、ですか?
他の陣営はなんと言ってきているんです。
それよりもよい条件を出しましょう」
「黄も青もまだ何もいってきてねぇよ。
こんな辺境の地、誰も興味なんざぁ持たねぇしな。
今のところ、熱心さではおたくの勝ちだ。
ーーあァ、青はさっき来たか。風の精霊が騒いでたもんなぁ。
黄はうちのエドガーが嫌がるから門前払いするつもりでいるが、あとはまあ、交渉次第だな」
「ということは、まだ我が陣営にも希望があるとみていいのでしょうか?」
リーゼンベルクはにやっと笑って言った。
「好きにしなァ。逃げも隠れもしねぇよ」




