応接室にて
その頃、城の中にある応接間では、領主であるリーゼンベルクがキセルを片手にチェスをしていた。ソファの上に着流し姿であぐらをかき、キセルを吸って口から煙を吐き出す。
「どうやら落ち着いたァみてぇだな」
盤上にあるポーンを動かし、チェックをかけるリーゼンベルク。
チェスの相手は、赤の王子の右腕と言われる魔法騎士のジュドーである。
「そのようですね。風のざわめきがやんだ」
キングを守るためにナイトを動かし、取られるジュドー。
「まァたなんか、やらかしたみてぇだなァ。うちの娘は。
おしとやかに育てるよう、重々言い聞かせてるんだがなァ」
風の精霊から得た情報を知り、眉を寄せるリーゼンベルク。
ジュドーがクイーンを動かし、ポーンをとる。
「今、おいくつでしたっけ」
キングを動かすリーゼンベルク。
「今年で5才だ」
ジュドーがポーンを動かす。
「なら、今が一番手を焼く時期ですね。
口が達者になってくるし、背伸びしたい年頃だ」
リーゼンベルクはキセルをふかしながら、クイーンを動かし、チェックをかける。
「知った口だなァ。おまえさんとこも子供がいるのか」
少し悩んだあと、クイーンでクイーンを取るジュドー。
「ええ。うちは3人、全員息子です。
下から0才、3才、6才になります」
キングを動かし、クイーンを取るリーゼンベルク。
「そりゃあ賑やかなもんだな。剣の修行をつけたりすんのか」
「一応それなりに、基礎は叩き込んでますがね。まだ子供なもんで、剣の握りが甘い。」
ジュドーは盤面をみつつ、次の手を考えている。
「そりゃあそうだ。まだ手もちぃせぇもんなァ」
ジュドーは悩みつつ、キングを後退させた。
「もう詰みだ。悪あがきはよかねェな」
リーゼンベルクはキングを動かし、チェックをかけた。
「……。なかなか大胆な手を使いなさる。
さすがは無敗のリーゼンベルク。
盤上でも手厳しい。」
「昔の話をすんじゃねェよ」
キセルを吹かしながら、ジュドーに不敵な笑みを向けるリーゼンベルク。
「もう戦場へは戻られないのですか」
ジュドーはキングを後退させる。
「チェックだ。
もうそういうのは止めたんだよ。
年寄りに無茶いっちゃいけねェ」
ジュドーはキングを横に動かす。
「逃げ回ってちゃ勝てねぇよ。
これで終わりだ、観念しな」
リーゼンベルクがキングを動かし、ジュドーのキングをとった。
「潮時なのはわかってたんですがね。
ここで負けを認めると交渉自体が破談になるでしょう。
赤の王子はそういうの許さない質なんで、退くに退けなかったんですよ。やっぱり俺には、こういう頭を使うゲームは向いてない。
慈悲をくれるなら、今度は手合わせで願いたい。」
リーゼンベルクの目が光った。
「勝てる気なのかい?」
「そっちの方が俺らしい、と言うだけですよ。慣れているので」
「なるほどなァ。流石は赤の王子の右腕だ。脳筋で困るねぇ」
「そういう頭脳労働系は全部、赤の王子と軍師の仕事ですから」




