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無能姫はショボいバリアで無双する。  作者: だんち。
エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。
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職権乱用

「ふう、思い止まってくれてよかったっす」

安堵するエドガーに、ルクソニアが澄んだ瞳でこう言った。

「わたしはまだやり足りないわよ」

キラキラした目でエドガーを見つめるルクソニアと、顔がひきつるエドガー。

シトリンの粘液が溶け、半身ずぶ濡れ、半身土まみれになったエドガーは、渋い顔をした。

「諦めてください、お嬢様。もう塩はいらないんで。やんちゃが過ぎると俺も怒るっすよ」

「やんちゃじゃないわ、ネバネバを溶かすのよ!」

「ネバネバはもうないっす」

「あるかもしれないじゃない!」

「全部水に戻ったんでないっすよ。

ーーそれにしても服が濡れてて動きにくいっすね」

エドガーは服の裾を絞り、水をきっていく。

「ーーそれならいい考えがありますよ?」

満面の笑顔で言う泣きぼくろが印象的なメイドに、嫌な予感を感じたエドガーは頬をひきつらせた。

「なんか嫌な予感しかしないんで遠慮しまーー」

泣きぼくろが印象的なメイドは、ガシッとエドガーの手を掴むと言った。

「まあまあ、遠慮なさらずに。

そのままだと、肌が痒くなっちゃいますわ」

にっこりと笑顔を顔に張り付けたまま言う、泣きぼくろが印象的なメイド。

嫌な予感に冷や汗を流すエドガーを無視して、魔法を使った。エドガーに。


五分後。

泣きぼくろが印象的なメイドの風魔法により、左右上下に体を揺さぶられているエドガーの姿があった。

飛び散る水滴と塩の粒、舞い上がる土煙に、ルクソニアが目をしぱしぱさせていると、ヨドが後ろからルクソニアを引き寄せ、ローブで彼女をかばう。

「アンさんんんん、これ酔うっすううう!」

「もう少し我慢してくださいね、エドガー先生」

にこにこ笑顔で言う、泣きぼくろが印象的なメイド。

「もう少しで完全に水や塩や土が落ちてくれるはずなので、ファイトですわ♪」

「アアアア!! もう落ちたっすよ、もう落ちたっすよ!」

「もう少し我慢しましょうね~。

とはいえ、上手く搾れてないわね……。

ーーそうだ。メアリ、あなた水魔法が使えたわよね?

服についた水分を使って、体についている土をまとめて地面に落とすことってできるかしら」

泣きぼくろが印象的なメイドが、お団子頭のメイドに聞いた。

「出来なくはないですけどぉ、私そこまで魔力コントロール上手くないですよー?」

「水を使って土をまきこみ、一緒に地面に落とすイメージでやってもらえたら大丈夫よ」

「うーん……。じゃあとりあえずやってみますね~?」

お団子頭のメイドが目を閉じ、両手を組んで意識を集中させる。

するとエドガーの周囲に飛び散っていた水の粒が浮かびあがり、くるくると彼を取り巻くように回りだした。水の粒は塩や土の粒を巻き込んで旋回し、一定の距離を保つと力なく地面に落ちる。

「ふうー、私の力ではここまでが限界ですぅ~!」

お団子頭のメイドがやりきった顔をして、額の汗をぬぐう。

それと同時に、エドガーを揺さぶっていた風魔法も解かれ、エドガーはそのまま地面へとヘナヘナと崩れ落ちた。

「エドガー先生、大丈夫か!?」

エドガーを心配してしゃがみこみ、背中をさする筋肉ムキムキの庭師。

「酔ったっす……」

口許を押さえて青い顔で言う、エドガー。

ふらふらと立ち上がると、いつの間にか吹き飛んで地面に転がっていた眼鏡を回収し、顔に装着する。

「お嬢様……は?」

しわがれた声でルクソニアの姿を探すエドガーに、ヨドが静かにローブをまくり、ルクソニアの姿を彼に見せた。

「お嬢様……こちらへ」

エドガーは青い顔でヨロヨロしながらも、ルクソニアに近づいてくる。

しばらく悩む、ルクソニア。

「俺のこと、嫌いになっちゃったっんすか?」

数歩手前でエドガーは立ち止まると、膝を折って腕を広げるエドガー。

「だってエドガーはわたしを甘やかして、なにも教えてくれないでしょう?

守られてばかりは嫌なの。

私だって、みんなを守りたいのよ。

みんなのこと、大好きだから……!」

ルクソニアの瞳から涙がこぼれ落ちた。

エドガーの目が少し見開かれる。

「お嬢様……。

そんなに早く大人にならないでほしいっすよ。寂しくなっちゃうじゃないっすか」

困ったように笑うエドガーをみて、ルクソニアはヨドから離れ、エドガーの胸の中へ飛び込んだ。

「お帰りなさい、お嬢様」

噛み締めるようにルクソニアを抱き締めるエドガーに、泣きぼくろが印象的なメイドが言った。

「あとでちゃんと叱ってくださいね、エドガー先生。」

「目を離したお団子と一緒に、ちゃんと叱るっすよ」

ルクソニアは静かに身を離してこう言った。

「やっぱり怒るの?」

「怒るんじゃなくて叱るんすよ、お嬢様。

大好きだから叱るっす」

「大好きだから?」

「そう、大好きだから。

ヨドさんよりもずーっとずーっと、お嬢様の事が大好きだから叱るんすよ」

「それってロリコーー」

「言わせないっすよ、アンさん。違うっすから!」

食いぎみにつっこむエドガーに、ルクソニアは無垢な瞳で聞いた。

「ロリコってなに? エドガー」

言葉につまるエドガーの代わりに、ヨドが代わりに答える。

「ロリコ、ではない。

ロリコンだ、ルクソニア嬢」

「ヨドさんも余計な知識を与えないでほしいっす!」

ルクソニアをぎゅっと抱き締めてヨドにつっかかるエドガーに、お団子頭のメイドが少し頬を赤くしていった。

「エドガー先生ぇ、その流れだと、同じように叱る私のことも大好きなんですかぁ?」

「お団子はただの職務怠慢だから、アンさんと共に減給っすよ」

泣きぼくろが印象的なメイドと、お団子頭のメイドに衝撃が走った。

「減給……!?

そんなのひどいですわ、エドガー先生。

職権濫用ですっ」

うるうるとした目で(ウソ泣き)訴える泣きぼくろが印象的なメイド。

「そうだ、そうだー!」とそれに同意するお団子頭のメイド。

それを無視して、エドガーはルクソニアを抱き抱えたまま、立ち上がった。

「文句なら後でたーっぷりお説教した後に聞くっすよ、二人とも。

とりあえず俺はお嬢様を風呂に入れるんで、後のことはよろしく~!」

言ってエドガーは転移ゲートを出し、ルクソニアと共に入り、泣きぼくろが印象的なメイドらの目の前から消えていった。


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