塩をかける
そんなカオスな空間のなか、エドガーに駆け寄る足音がふたつ。
筋肉がムキムキの庭師と、お団子頭のメイドの二人だ。筋肉ムキムキの庭師の腕には、塩の瓶と、エドガーの着替えがあった。
「エドガー先生! 言われた通り塩と着替え持ってきたぜ!」
筋肉ムキムキの庭師がとてもよい笑顔で叫びながら、エドガーのもとへ駆け寄ってくる。
二人はエドガーのもとへ来ると立ち止まり、肩で息をして呼吸を整えた。
「二人とも遅かったっすね」というエドガーの嫌みに、お団子頭のメイドがぷくーと頬を膨らませた。
「乙女は色々としたくに時間がかかるんですー!」
「はいはい。わかった、わかった。」
「わかってませんー!」
プリプリ怒るお団子頭のメイドを制して、エドガーは筋肉ムキムキの庭師に言った。
「お団子はおいといて、ハイドさん。
早速で悪いっすけど、塩まぶしてもらえません?」
「ああ、まんべんなくかけた方がいいか?」
「そうっすね。自分の時はどうしたんすか?」
「頭からざばっと、潔く塩を被った!」
「それは塩がもったいないんで、じゃあヌメヌメのところだけ塩をかけてほしいっす」
「まかせろ!」
筋肉ムキムキの庭師が、抱えている塩の瓶からひとすくい塩をすくうと、エドガーの頭に優しく塩を振りかけた。
すると塩をかけたところから、ネバネバした粘液は水になり、ポタポタと滴になって地面へと落ちていく。
「顔がずぶ濡れっすね。残りの塩も肩とかに……ってお嬢様、何キラキラした目でこっち見てるんすか?」
「私もやってみたいわ!」
「お嬢様の身長だと、かなり近づいて塩をぶっかけないといけないんで、ドレスが汚れるっすよ」
「それでもやってみたいわ!」
「……。うちの女どもはなんでこう……。はあ、もういいっすよ。どうぞ塩を思いっきりかけてください」
そう言って両手を広げるエドガー。
筋肉ムキムキの庭師から塩をひとすくい受け取ったルクソニアは、エドガーに向かって塩を投げつけた。
それを見たお団子頭のメイドが「なんか面白そうなんでわたしもやりたいです!」と言い出し、さらにそれに便乗して泣きぼくろが印象的なメイドも名乗りをあげ、最終的には流れでヨドもエドガーに塩をぶつけることとなった。
「なんか皆さん、俺に塩かけるの楽しんでません?」
ふて腐れるエドガーの目に映ったのは、瓶ごとエドガーに投げつけようとするルクソニアの姿だった。
「待って、待って! もう塩はいいっすよ!」
慌てて止めるエドガーの阻止により、ルクソニアは渋々、塩の瓶を筋肉ムキムキの庭師に渡すのだった。




