いずれくる危機
「だって……みんなわたしの事好きすぎるから、隠していたんでしょう?
わたしが本当は奴隷の身分に落ちてもおかしくない魔力量の持ち主だってこと。
今まで外の人と会わせてくれなかったのも、それを隠すためだったんでしょう?」
ルクソニアの瞳からポロポロと大粒の涙が溢れる。
「それは……っ、その」
泣きぼくろが印象的なメイドが言葉をつまらせ、エドガーに助けを求めるように視線を向ける。
都合がいいときだけ頼るの卑怯っすよ、とでも言いたげな視線を、泣きぼくろが印象的なメイドに返すエドガー。
「ほら、何も言えないじゃない!
それに王立選のことだって、ナイショにしてたわ!
わたしにも関わることなのに、ナイショにして、子供扱いしてたんでしょう?
子供にはわからないからって、教えてくれなかったんでしょう?」
泣きぼくろが印象的なメイドは、エドガーに視線で助けを求めた。
エドガーは深いため息を吐くと、頭がネバネバになるのも気にせず、ガシガシかいて言った。
「それは誰の入れ知恵っすか?」
「それはどういう意味だろうか?」
それまで黙って見守っていたヨドが口をはさむ。睨みあうエドガーとヨド。
「そのままの意味っすよ。
自覚があるから口はさんできたんすよね?」
「それは違うわ! ヨドはわたしに本当の事を教えてくれたのよ」
涙ながらに訴えるルクソニアに、エドガーは再びため息を吐いた。
「うまく丸め込んだっすね。
その手腕に舌を巻くっすよ。
さすがは東の部族の生き残り。
こうなることも見えていたんっすか?」
「エドガー! わたしを無視しないで!」
ルクソニアが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「じゃあ言うっすけどお嬢様。
その考えは本当に自分自身の考えっすか?
だったらなぜ今まで俺たちとのほほんと過ごしてたんすか?
そう思うには、なにかきっかけがあって、心境の変化があったんすよね。
それは、そこにいるヨドさんの影響なんじゃないんすか?」
眼鏡を光らせながら言うエドガーに、ヨドにしがみついたまま、ルクソニアが反論する。
「違うわ。城の書庫にある本を読んだの。
それで本当の事を知るために、外の世界を見に行こうとしたのよ!
だってエドガー達に聞いても、きっとうまく誤魔化すでしょう?
今だって、本当に肝心なことは答えてないじゃない!」
「それは……そうっすね。じゃあ答えるっす。
お嬢様はまだたったの5歳。
政治の話やこの世界の仕組みについて話すには幼すぎると判断して話さなかったっす。
それにこの城の周辺の森には、収入源としてわざと多くの魔獣が放たれてるっす。
まずはこの国の事より、魔獣の対処法を教えることが先決だと、俺たちは判断したっす。
ごく一般的な大人の判断としては、妥当なラインだと思うんすけど、それはそんなに責められることなんっすか?」
今度はルクソニアが言葉をつまらせた。
それに助け船を出したのはヨドだった。
「それはルクソニア嬢の世界を狭めてしまう判断ではないだろうか。
王立選の期間中、多くの事が変わるだろう。その変化にルクソニア嬢がさらされ、ついていけなくなったとき、エドガー殿はどう対処するつもりなのか、お聞かせいただきたい。
子供だからと言ってすべてを話さないと言うのも、子供からしたら不安だろう。
それに、ルクソニア嬢が自分で判断できる範囲も狭まってくる。
もし今までと同じ状況ではなくなり、まわりがルクソニア嬢を守れる状況にない時、果たしてその対応でいいのか疑問が残るが、いかがだろうか」
ルクソニアはヨドのローブの裾を握りしめ、ヨドを見上げた。
ヨドはルクソニアの視線に気づくと、優しく微笑む。




