大切な話
間抜けな声をあげて叫ぶエドガーと泣きぼくろが印象的なメイドのふたりをハラハラしながらみるルクソニア。
泣きぼくろが印象的なメイドはにっこり笑顔を顔に貼り付け、言った。
「大丈夫ですよ、お嬢様。
私たち大人ですから、喧嘩はしないんです」
「そうそう、大人だから水に流せる……って、なんか俺、さっきからサンドバックになってません!?」
「あらいやだわ、エドガー先生。なってませんよ」
「取って付けた返答をありがとう、アンさん! お嬢様、良いですか? こんな風に気軽に人を蹴れる大人になっちゃダメっすよ」
エドガーはもう一発、泣きぼくろが印象的なメイドに背中を蹴られた。
「痛いっすよ、さっきから!」
「すいません、足が滑りました。シトリンの粘液で」
有無を言わさぬ笑顔で言う、泣きぼくろが印象的なメイド。
エドガーは虚空に向かって叫んだ。
「ハイドさーん!! 早く塩、持ってきてー! そしたらネバネバがとれるからー! 蹴る理由もなくなって蹴られなくなるからー!」
むなしさだけが残ったのは言うまでもない。
それを見たルクソニアは、静かに泣きぼくろが印象的なメイドとエドガーの間に割って入り、エドガーを庇うように背にして立った。
「あのね、アン。エドガーがネバネバなのにも理由があると思うの。
だからちゃんと話を聞いてあげましょう?
ね?」
泣きぼくろが印象的なメイドはひとつ咳払いをすると言った。
「それはお嬢様が聞いてほしい話があるから、そう言うんでしょう?」
「そうなんすか?」
背中越しに質問を投げ掛けられ、くるりと身を翻して今度はエドガーと対峙するルクソニア。
「あのね、エドガー。大切な話があるの」
「大切な話……っすか?」
「どんな話か私にもお聞かせいただけるかしら、お嬢様。」
ルクソニアは、背後にいる泣きぼくろが印象的なメイドの凍りつくような眼差しに寒気を覚え、ブルッと震えた。




