丸投げ
しばらく黄昏たあと。
泣きぼくろが印象的なメイドはエドガーに向き直り、念をおした。
「お嬢様の出生のこと……ご本人はまだなにも知りません。
どうか時が来るまではご内密に。」
「わかってるっすよ、そこは」
エドガーはふぅと、深いため息をはいた。
「でもまあアンさんが言ったことが事実だとすると。
なんで森のなかに不審者と二人きりにさせちゃったんすか? 迂闊すぎません?」
エドガーの言葉に、泣きぼくろが印象的なメイドのこめかみに青筋がたつ。
「あなたがさっさと転移ゲートを閉じられたからでしょう? エドガー先生。」
どす黒い怒りのオーラを背負いながら、顔に笑顔を張り付けて言う、泣きぼくろが印象的なメイド。
「いや、それにしたって先にお嬢様をゲートに通さないっすか、フツー」
「だからテンパっていたって言ったじゃないですか!
それに仮にも青の王子の使者と言うのが本当だったなら、失礼に当たる行動は取れませんし、私一人の判断で事態をややこしくするのもどうかと思いまして。王立選前ですし、エドガー先生の判断を仰ごうかと思い、先に話を通そうと転移してきたのですわ。
元・黄の陣営の軍師様なら、青の王子の陣営についても、多少なりともご存じかと思いまして。」
エドガーがこめかみを指でとんとんと叩きながら言った。
「いつの話をしてるんすか、それ。
もう三年も前の話っすよ。
しかも在籍年数は半年あまり。
そんな状況で俺が他の王宮の情報なんてつかめるわけないっすよ、フツー。
ーーアンさん、ぶっちゃけ責任とりたくなくて俺に丸投げしたかっただけでしょ?」
「あら、こういうとき個人で勝手に判断せず、上の判断をあおぐのがベターでしょう?」
黒い笑顔を顔に貼り付けて言う、泣きぼくろが印象的なメイド。
「王族お抱えの隠密が何をおっしゃる。
相手を魔法で昏倒させて、その隙に転移ゲートを通って逃げてくる事もできたでしょ?
アンさんなら」
「確かに出来なくはないですが……青の王子の使者と言うのが本当だったら、余計な恨みを買いましてよ?」
「だから丸投げっすか……」
エドガーは再び、深いため息をこぼした。




