ふたりの溝
泣きぼくろが印象的なメイドは軽く愛想笑いを返したあと、まっすぐエドガーを見据えて真剣な表情で言った。
「で、質問する順番はどうやって決めるのかしら」
「コイントスでーーっていいたいとこなんっすけど、アンさんズルしそうなんで、そっちが先でいいっすよ。レディーファーストっす」
飄々とした態度を崩さずに言うエドガーに泣きぼくろが印象的なメイドは警戒心を強め、表情を少しこわばらせたが、すぐにいつもの張り付いた笑顔になった。
「あら、随分と余裕がおありのようね。
じゃあ、お言葉に甘えようかしら」
「どうぞ」
エドガーは泣きぼくろが印象的なメイドに手で続きを促した。
「ーーそうね。
まずは旦那様とはどういう契約でここにいるのか聞きたいわ。ただのビジネスパートナーという訳ではないでしょう?
破格の待遇で雇われてるんですもの。
何か裏があると、前々から気になっていたの。
表向きの理由ではなく、実際のところをお話しいただけないかしら?」
それを聞き、にっこりと笑顔を浮かべていたエドガーのこめかみがひきつった。
「いきなりそれっすか。」
こめかみを押さえながら言うエドガーに、したり顔で言う泣きぼくろが印象的なメイド。
「あら、言えないのかしら。
やましいことがないなら言えるはずだけれど……|エドガー先生は言えない《・・・・・・・・・・・》のかしら」
苦虫を潰したような顔でエドガーは言った。
「はいはい、言うっすよ!
言えばいいんでしょ?」
「言えるんですか?」
「この事を内密にしてくれるなら。ノーなら別の質問にしてほしいっす」
それを聞き、泣きぼくろが印象的なメイドが笑顔を顔に張り付けたまま、返した。
「それはもちろん、内密に。」
「……その笑顔が胡散臭いんすよ」
はあと大きなため息をはいて、エドガーは続けた。
「俺が旦那様に雇われている理由ーーそれは魔法の源、魔力研究のためっす。
森の運営はあくまでも木を隠すための副産物っす。帳簿管理も研究費を捻出するため。俺自身は何もやましいことはしてないっすよ」
肩をすくめるエドガーに、泣きぼくろが印象的なメイドが突っ込んだ。
「その言い方だと、他にやましいことをしている人がいるみたいですわね」
「アンさんっすよ?」
にっこり笑顔で言う、エドガー。
「あらいやだ、ご冗談を」
それを笑顔で返す、泣きぼくろが印象的なメイド。
二人の溝はさらに深まった。




