審議
筋肉もりもりな庭師とお団子頭のメイドが、
それをみて言葉をつまらせる。
「じゃあこの話は、これで終わりってことで。
あ、念のため確認しとくっすけど、シトリンの巣にはお嬢様はいなかった、ってことでいいんすよね?」
筋肉もりもりな庭師が、やつれた顔で頷いた。
「右も左も前も後ろも巨大ナメクジにふさがれた揚げ句、空からも巨大ナメクジが降ってきやがったが、そこに巨大ナメクジ以外の生物の姿はなかったぜ……?
巨大ナメクジの粘液責めにはあったがな……」
筋肉もりもりな庭師は、両手で顔をおおい、うなだれた。
お団子頭のメイドが無言で筋肉もりもりな庭師の肩にポンと手をおき、なぐさめる。
「あっ」
エドガーがそれをみて、つい声をあげてしまう。
「もー、今度はなんですか?
エドガー先生!」
そう言ってお団子頭のメイドが筋肉もりもりな庭師の肩から手を離した瞬間、ふたりの間を繋ぐように、ねばつく粘液がデローンと糸をひいた。
お団子頭のメイドが、無言でねばつく糸を切ろうとぶんぶん上下に手を振るが、いっこうに切れる気配がない。
「エドガー先生ぇ~……」
自力ではどうしようもないと悟ったお団子頭のメイドは、涙目でエドガーに助けを求めた。右手からネバネバした糸をたなびかせながら、エドガーに駆け寄る、お団子頭のメイド。
「ちょっ、こっち来ないでほしいっす!」
慌てるエドガー。
何もない地面につまづく、お団子頭のメイド。お団子頭のメイドに押し倒されるエドガー。ヌメヌメの右手が、エドガーの顔面に不時着した。
ヌメェ……
「oh ……」
エドガーは白目を剥き、悟りを開いた。
「あいたたたた~」
お団子頭のメイドがエドガーの上からのっそりと起き上がり、ヌメヌメの右手をエドガーの顔面から離した。手と眼鏡の間に、キラキラと光るネバネバの橋ができる。
「おぅ……」
お団子頭のメイドがネバネバを見て言った。
「絶望したいのはこっちっすよ。
はやく俺の上から降りてほしいっす」
お団子頭のメイドは、無言でエドガーの顔面にヌメヌメの右手をお見舞いした。
「おい、二人とも大丈夫か!?」
筋肉もりもりな庭師が二人に駆け寄り、声をかける。
「見てわからないっすか?
大惨事っすよ……」
エドガーは再び、悟りを開いた。
そんな中お団子頭のメイドはふと、縮小ゲートから華奢な白い手がピースサインをして振られている事に気づく。
「あ、ゲートから手が生えてますよ、エドガー先生。多分アンさんだと思います!」
顔面にヌメヌメのアイアンクローをお見舞いされたまま、エドガーはなんとなくゲートがあるであろう方向にぷるぷる震える手を伸ばした。縮小されたゲートの幅が広がり、人一人出られる大きさになると、そこから泣きぼくろが印象的なメイドが飛び出してくる。
「エドガー先生、大変です!
お嬢様が……あ?」
泣きぼくろが印象的なメイドはゲートから出た瞬間、動きが止まった。
泣きぼくろが印象的なメイドが見たもの、それはーー
全身ずぶ濡れでエドガーを地面に押し倒しアイアンクローをかましているお団子頭のメイドと、彼女に押し倒され眼鏡をヌメヌメにされているエドガー、そしてそんな二人に寄り添うように側にいる全身粘液濡れの筋肉もりもりな庭師の姿であった。
「あの……、ちょっと私、審議のために一旦森に戻ってもいいかしら……?」
ゲートの中に再び入ろうとする泣きぼくろが印象的なメイドだったが、入る前にゲードがパァンと弾けて消えた。
泣きぼくろが印象的なメイドが、物言いたげにエドガーを見て言った。
「ゲートが消えました。
戻してください、エドガー先生。」
エドガーはお団子頭のメイドのアイアンクローを顔面に受けたまま言った。
「一人だけここから逃げるの、ズルいっすよアンさん。」




