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無能姫はショボいバリアで無双する。  作者: だんち。
エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。
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シトリン

「文句のひとつくらい言わせろ!

道具なしで崖を登らされた挙げ句、やっと目的地にたどり着いたと思ったら、でけぇナメクジの巣で大変だったんだからな!

あいつら執拗に俺を追いかけ回してきて、めんたま狙って粘液飛ばしてくんだぞ!

こっちの身にもなれ!」

エドガーに向かって涙目で叫ぶ、筋肉もりもりな庭師。

「うひゃー!

私、そっちの担当じゃなくて良かった~!」

庭師の心のシャウトを聞き、お団子頭のメイドは空気を読まずに無邪気な感想を言った。

エドガーは盛大にため息をつくと、心底面倒臭そうに言った。

「俺、言ったっすよ?

適材適所に配置したって。」

「なんで俺の適所が、ナメクジの巣なんだよ……!」

エドガーは少し考えた後、言った。

「……もしかして、虫系、ダメだったんすか?」

「虫は平気だよ!

だけどな、全長一メートル大のナメクジの群れは普通にキモいんだよ!」

「あれはナメクジじゃなくて、魔獣っすよ。

シトリンって言う種類の。

動きが鈍くて攻撃手段を持たない魔獣なんで、基本的に外敵が少ない高い所に巣を作る習性があるっす。

粘液で敵の目潰しをし、その隙に粘液を使って地表を滑って逃げる、臆病で無害なヤツっすよ。

ちなみにその身体中にまとわりついてる粘液はただネバネバしているだけで、人体には無害なんで、安心してほしいっす」

「そんなことが聞きたかった訳じゃねェよ……!」

筋肉もりもりな庭師が、全力でエドガーにツッコミを入れた。

「じゃあハイドさんは、何が聞きたかったんすか?」

「崖の上で、ナメクジの粘液ぶっかけられながら思ったんだけどよォ。

冷静になって考えてみりゃあ、5歳児がわざわざ崖を登ってナメクジと戯れるかって話だよ。普通に考えてあり得ねぇだろ。

普段体動かしてる俺ですらキツイ崖を!

子供が!

登りきれる訳ねェんだよ!」

おおーっと関心した声をあげながら、その場で拍手をするお団子頭のメイド。

「いや、拍手をする意味がわからないっす。そこは登る前に気づくっしょ。

俺だって別に、お嬢様が自力で崖登りしたとは思ってないっすよ」

「えっ! じゃあ嫌がらせで崖登りさせたんですか!?」

お団子頭のメイドが、口元に手を当てて言った。

「こらそこ。

イタズラに俺の印象を悪くすんの、卑怯っすよ」

「じゃあ、故意ならいいんですか?」

曇りなき眼差しで、お団子頭のメイドがエドガーをみつめて言った。

エドガーは眼鏡を光らせ、中指で位置を調整しながらそれに返答した。

「故意なら減給するまでっす」

「鬼~! エドガー先生の、鬼~!」

握りこぶしをぶんぶん振りながら、お団子頭のメイドが抗議するのを、鼻で笑いつつあしらうエドガー。そんなエドガーに、筋肉もりもりな庭師が真剣な面持ちで聞いた。

「じゃあどういうつもりで俺をあそこへ行かせたんだよ、エドガー先生ェ?」

エドガーとお団子頭のメイドの視線が、筋肉もりもりな庭師に集中した。

「少なくとも嫌がらせではないことを、先に伝えておくっすね。

ハイドさんにあの場所の確認を頼んだのは、生身で崖を登れそうなのがあなたくらいだったからっす。

流石にアンさん達には崖登りさせられないっすからね、男の仕事っすよ。


で、なんでここを確認してもらったかってのは、シトリンの習性のひとつに、同じ大きさの物体を仲間だと思って巣に持ち帰る習性があるからっす。

滅多に崖下へは降りてこないんすけど、万が一お嬢様が森でシトリンと遭遇したら、お嬢様を仲間だと思って巣にお持ち帰りする可能性があったんで、まあ、念のための確認として動いてもらったっす。

何度も言うっすけど今回指定した場所に関しては、あくまでも無駄足前提の確認作業になるんで、クレームは受け付けないっすよ?」

言い終わるとエドガーは、にっこりと笑った。

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