ギャタピー
一方その頃、丘の上にある古城の庭では、お団子頭のメイドが転移ゲートを使い、全身ずぶ濡れの状態で戻って来た。
ゲートから出てきた彼女を見た瞬間、エドガーはキョトンとした顔で悪気なく彼女に疑問をぶつけてしまう。
「お帰りっす。
……なんかすごく濡れてません?」
それを聞いた瞬間、お団子頭のメイドが叫んだ。
「あーっもうーっ!
指示通り東の滝へ行ったら、なんかよくわからない大きな魚みたいなヤツに、いきなり水をバッシャーンってかけられたんですよ!
バッシャーンって!
なんなんですかあれ! なんなんですかあれ!?」
ぷくーっと頬を膨らませてエドガーにつめよる、お団子頭のメイド。不満げな顔でエドガーを睨み付けている。
状況を把握したエドガーはめんどくさそうにため息をつくと、ガシガシと頭をかいた。
「あー……。それ、ギャタピーっすわ」
「ギャタピー!?
ギャタピーってあの、たまーに食卓に登場する白っぽい魚のことですか!?」
お団子頭のメイドが興奮してエドガーの上着をつかみ、自分の方へと力任せに引き寄せた。エドガーはバランスを崩し前のめりの体制になってしまい、息がかかるくらいの至近距離に彼女の顔がくる格好になってしまう。童貞のエドガーは少し気まずそうに視線を外へとそらしながら、お団子頭のメイドに説明した。
「魚じゃなくて、魚っぽい見た目の、食べられるように品種改良した食用の中型魔獣っす。水をかけたのは多分、滝の主として育ててるヤツっすね。名前はアンドレア……」
「名前なんてどーでもいいです!!
って言うか、あの魚、魔獣だったんですか!?
普通に美味しくいただいちゃってたじゃないですか~!
あんな厳つい顔の魔獣だってわかってたら、食べなかったのに~!」
エドガーのうっすい胸板をポカポカと殴る、お団子頭のメイド。
「特に問題もなく美味しくいただいちゃってたんなら、俺、責められるいわれはないと思うんすけど……」
されるがままになりながらも、とりあえず反論だけはしてみるエドガー。
「私っ、可愛くなりたいから、可愛いものしか口にしないって決めてるんです~!
あの魚もどきは、全然可愛くないじゃないですか~! バカー!」
それを聞いた瞬間、エドガーは遠い目をして思った。
可愛くなりたいから、可愛いものしか口にしないって、なんだ……?と。
ポカポカと胸板を殴られながらも、エドガーは空へと視線を移した。
「……食事の基本は、バランスよく栄養を取ることと、口に入れても問題ない安全性が大事だと、俺は思うっすよ?」
どこまでも続く青い空を見上げながら、遠い目をして、穏やかにお団子頭のメイドを諭すエドガー。
どうせ叩くなら、肩を叩いてくれたらいいのに……と頭の隅で思いながら、エドガーはお団子頭のメイドが飽きるのを待った。




