報われない三角関係
「……」
泣きぼくろが印象的なメイドは少し考えたあと、スカートの裾を軽く持ち上げ、ヨドに向かって深々と丁寧に頭を下げた。
「ーーヨド様。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。私はメイドのアンと申します。お嬢様の話を聞く限り、ヨド様には大変お世話になったご様子。
城主に代わり、心より御礼申し上げます」
ルクソニアはそれを見て、慌てて自分も真似をし、頭を下げた。
「わたしも改めてお礼をいうわ、ヨド。
助けてくれて、本当にありがとう。
あなたみたいな素敵な人とお友達になれたこと、とても幸運なことだと思っているわ」
頭を下げる二人に、ヨドは穏やかな声で言った。
「私は、大したことをしたつもりはない。
どうか二人とも、頭をあげてはくれないだろうか」
二人が頭をあげると、少し困ったように微笑むヨドと目があった。
ヨドの人となりを見極めるため、泣きぼくろが印象的なメイドは穏やかな微笑みを浮かべたまま、さりげなく探りをいれる。
「それにしても、ヨド様はとてもお強いんですね。魔獣の群れを一網打尽になさるなんて、なかなか出来る事ではありませんわ。
見たところ魔法を使った形跡もありませんし、なにか武術の心得でも……?」
質問の意図を察したヨドは、ふわりと微笑みながら、短くそれに答えた。
「護身術として、多少武術のたしなみがある程度だ。大したことはない」
それを聞いたルクソニアが、得意気な顔をして二人の会話に割り込んだ。
「ヨドはね、魔獣に効く毒を使ってワンちゃんを倒したのよ……!」
ふんすと鼻息を荒くして言う、ルクソニア。
泣きぼくろが印象的なメイドは毒と言う言葉に内心動揺したが、それを悟られないよう穏やかな笑顔を顔に張り付けたまま、ヨドに聞いた。
「魔獣に効く毒、ですか?」
ヨドも優しげな微笑みを浮かべながら、それに答えた。
「私は魔法が使えぬ身。
森を抜けるにあたり、魔獣対策として特別に薬を調合し、持ち歩いていただけだ」
「なるほど、ヨド様はお薬にも造形が深くていらっしゃるのね」
表面上はとても和やかな雰囲気で笑う、ヨドとメイド。そんな二人の様子を見て、なんとか会話に割って入ろうとする、ルクソニア。
森の中で、報われない三角関係が完成した。




