自衛本能
目を見張るような艶のある微笑みを浮かべ、ヨドはルクソニアをみつめた。
それを見たルクソニアの顔が、徐々に赤く染まっていく。視線を落とし、ドレスの裾をぎゅっと握るルクソニア。
「ずるいわ、ヨド。
そんな顔されたら、わたし、もうなにも言えないじゃない……」
ルクソニアは照れ隠しに拗ねてみせる。
ヨドはふわりと笑って言った。
「なるほど。
ルクソニア嬢の口を封じたい時には、この手を使うと有効か……」
膨れていくルクソニアの頬を見て、ヨドは声をあげて笑った。明るく笑うヨドにつられて、ルクソニアも我慢できずに笑ってしまう。
ふたりの間に、穏やかな空気が流れる。
魔獣を倒した安心感からだろうか。
ふたりは気づけないでいた。
ものすごい速さで、ふたりに近づく存在に。
ルクソニアの背後にある茂みが、荒々しく揺れた。
ザッーー
茂みから猛スピードで飛び出したのは、大きな黒い影。
「ルクソニア嬢……!」
青い顔をしたヨドがルクソニアの名を呼びながら、必死に彼女へ手を伸ばす。
ただ事ではないと悟ったルクソニアは、勢いよく振り向き、背後へと手を伸ばした。
数メートル先の空中へと、握りこぶし大のバリアをはる。
これは彼女がとっさにとった、無意識の自衛本能であった。
バチンッ
ルクソニアの目の前で、小さな火花が舞った。
バリアになにかがぶつかり、弾けた音。
バランスを崩し、宙を舞う影。
その正体を見て、ルクソニアの瞳が大きく見開かれた。




