危うさ
ヨドの真意を図りかねたルクソニアは、ぷうっと頬を膨らませた。
「そんな言い方をするのはずるいわ、ヨド。
わたしがあなたのこと大好きだって、もう知っているでしょう?」
上目使いで物言いたげにヨドを見るルクソニアに、彼は一瞬驚いたように目を見開くと、ポツリと言った。
「ーーあなたは本当に、危ういな」
「危うい……?」
目をぱちぱちさせながら、ルクソニアはヨドをみた。
「敵が敵らしく、いつもあなたの前にわかりやすい形で現れてくれるとは限らない、ということだよ、ルクソニア嬢。
そもそも、敵味方というものもそう簡単に割り切れるものばかりではないだろう。
あなたが何を信じ、何を切り捨てて進むのかーー表面的な優しさだけで人を判断すると、不幸を招くぞ」
ルクソニアは潤んだ瞳でヨドをみつめると、唇をへの字にして言った。
「……それはヨドの予言なの?」
ヨドはふっと微笑みを浮かべながら、穏やかに言った。
「違うな。
あなたよりも少しばかり長く生きている者としての、ささやかな忠告だ」
ヨドは優しい微笑みを、ルクソニアに向けた。
「……予言じゃないなら、聞かないわよ。
そもそもわたし、ヨドに協力するとさっき約束をしたもの」
プイッと顔を横に背けるルクソニアに、ヨドは耐えきれずに声をたてて笑った。
「もう、何で笑うの?
わたし、とっても真剣なのよ!」
握りこぶしをつくって、ルクソニアはプリプリ怒る。
「これは失礼した、ルクソニア嬢。
ーーこんな私を、あなたは信じてくれるのだろうか」
「信じているから、協力すると言ったのよ。
私からみたヨドは、とても悪い人には思えないもの。
それにさっきだって、ワンちゃんからわたしを守ってくれたでしょう?」
「あれは不可抗力だ」
楽しそうに笑うヨドとは対照的に、ルクソニアの頬はみるみる膨れていく。
「でもわたしひとりだったら、今頃きっと恐ろしいことになっていたわ。
命の恩人を疑うような恥知らずな真似、わたしはしないのよ。
それともヨドは、疑ってほしいの?」
ルクソニアはヨドを窺うように、ジーっと見つめた。
「……そう聞こえるだろうか?」
ヨドは困ったように微笑んだ。
「違うの?」
ルクソニアのまっすぐ澄んだ目が、ヨドを映す。
「ーー私は。なるべくあなたには公平でありたいと、そう思っているだけだ」
「公平?」
キョトンとした目で聞き返すルクソニア。
「どうやら私も、あなたと時間を共にしていくなかで、情というものがわいたらしい」
「ヨドもわたしのこと、大好きだって思ってるってこと?」
ルクソニアの期待に満ち溢れたきらめく瞳が、ヨドを映した。
ヨドは少し考えた後、ポツリと言った。
「私はあなたのよき友人になりたいと、望んでいる。……それではダメだろうか」
「大好きって、言ってはくれないのね」
むくれるルクソニア。
「そうなんでもかんでも言葉にしてしまうのは、情緒に欠けると思わないか?
ルクソニア嬢」




