毒
トスーー
ヨドの手から放たれたナイフが、四方八方から飛びかかるウォーウルフたちの眉間を静かに貫いた。
それと同時にヨドの腕から放たれた銀の鎖が二人を守るように円を描いてとぐろを巻き、ウォーウルフの体を弾き飛ばしていく。
キャウン!!
ウォーウルフが高い雄叫びをあげ、力なく地面を滑っていく。
森のなかに、一瞬の静寂が訪れた。
ルクソニアは恐る恐る目を開くと、自分を中心に取り囲むように輪になって倒れているウォーウルフの姿が視界に入った。無意識にヨドの足にしがみついてしまう。
「ワンちゃん……死んじゃったの?」
「もうすぐ、毒が効いて死ぬだろう」
「毒?」
ルクソニアは不安げな眼差しで、ヨドを見上げた。
「魔獣用の毒を、ナイフに塗ってある。
触れてはいけないよ」
「触れると、わたしも死んでしまうの?」
ヨドはふわりと微笑むと、言った。
「死にはしないがーー死よりも深い苦しみがあなたを襲うだろう」
ルクソニアは思わず、ヨドにしがみついていた手を離した。
「ヨド……もしかしてあなた、とても恐ろしい人なの……?」
青ざめながらじりじりと後ずさりしていくルクソニアの姿に、ヨドは少し困ったように微笑んだ。
「私が、恐ろしいだろうか。ルクソニア嬢」
ルクソニアは無言で、首を横に振った。
ヨドはしゅるしゅると鎖を回収しながら言う。
「恐れは抱いていてもいい。
ーー私も、聖人君子ではないのだから」
その時ルクソニアは、ヨドを少し遠くに感じた。
「ーーヨドは、悪い人なの?」
ローブの中に鎖を隠すと、ヨドは横目でふわりと笑った。
「これからそれを、あなたの目で見極めてはくれないだろうか。ルクソニア嬢」




