連帯責任
「ゆ……誘拐!?」
おだんご頭のメイドが、ひっくり返った声を出す。皆が一斉に、エドガーを見た。
「ゆ……誘拐ってそりゃあ、ちょっと飛躍が過ぎるんじゃあねェか?」
少し緊張した様子で、筋肉もりもりな庭師が言った。
「そ、そうですよ!
城には私たちも居たんですし……そんな……」
泣きぼくろが印象的なメイドの声がしゅるしゅるとしぼんでいく。
「ありえない話じゃないっすよ。
現に皆さん、お嬢様が居なくなったの、気づかなかったじゃないっすか。
|人ひとり居なくなってるのに気づかなかった《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》ってことは、|人ひとり入っても気づけない《・・・・・・・・・・・・・》って事と同義っすよ」
「ううー、そこ、いま突いちゃいますぅ?」
苦々しい顔をして、おだんご頭のメイドが言った。
エドガーが片手で頭をガシガシかきながら、
眉間にシワを寄せる。
「まー、そこに関しちゃ、俺も人のこと言えないっすよ。敷地の外に出した時点で、連帯責任っすわ」
おだんご頭のメイドが手を挙げた。
「あ、あの! しつもーん!」
「なんっすか」
「お嬢様を、誘拐する意味がわかりません!」
キリッとした顔で、おだんご頭のメイドが言った。エドガーは少し間をおいたあと、小さくため息をつく。
「ちょっ、なんですか、その反応ー!」
エドガーはぷりぷり怒るおだんご頭のメイドを適当に受け流しつつ、生暖かい眼差しで言った。
「……本音を言わないだけ、俺は優しいと思うっすよ?」
おだんご頭のメイドに、衝撃が走る。
「まーでも言われてみりゃあ、なんでうち?ってのはあるよなァ。
追っ手の目をかいくぐり、森のなかで子供を抱えながら魔物を倒しつつ誘拐を実行するってぇのは、かなり骨が折れる作業だぜ?
普通はもっと金があって、権力があって、楽に誘拐出来る貴族の子を誘拐するだろ」
筋肉もりもりな庭師の意見に、泣きぼくろが印象的なメイドも同意した。
「確かに……普通だとありえないチョイスよね、面倒くさいもの」
それを聞いたエドガーは、眼鏡を光らせ、中指で位置を調整しながら確信をもって言った。
「通常時ならそうっすね。
ーーでも今は、王立選の準備期間っすよ?」
エドガーを取り囲むメンバーに、緊張が走る。
「ど、どういう意味ですか……?」
おだんご頭のメイドが、おずおずとエドガーに聞いた。
「小規模だろうが、辺境の地だろうが、うちも貴族の端くれって事っすよ。
少しでも支持を得たい輩が、強行手段を取らないとも限らない」
おだんご頭のメイドが、ごくりと唾を飲み込んで聞いた。
「な、なんかその言い方だと、心当たりがあるっぽく聞こえるんですけど……」
「そう聞こえるっすか?」
エドガーはニコッと笑った。
「聞こえますね……」
泣きぼくろが印象的なメイドが、先を促すように同意する。
「エドガー先生、もったいぶらずに教えてくれたっていーじゃねェか」
筋肉もりもりな庭師が、しびれを切らして言った。
「あくまで可能性の話なんで、ここだけの話にしてほしいんすけど……」
「けど!?」
エドガーの言葉に、おだんご頭のメイドが勢いよく食いついた。固唾をのみ、エドガーの次の言葉を待つ。
エドガーはボソッと小さな声で呟いた。




