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無能姫はショボいバリアで無双する。  作者: だんち。
エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。
32/88

ゴリラ

その頃、丘の上にある古城の庭では、ルクソニアの家庭教師であるエドガーが地図を片手に(うな)っていた。

(大方の場所は潰したけど、お嬢らしきものは出ず、か。……これはいよいよ、不味くなってきたな)

地図を持つ手に力が入り、くしゃりと嫌な音を立てる。

(いま当たってる場所がダメなら、残りは1ヶ所。城壁から大きく西へそれたルート。よほどの方向音痴じゃないと通らない場所だし、ここには行ってないと踏んで最後にまわしたんだけど……予測が甘かったか?

最悪みつからない場合に備えて、いくつか対策を考えといた方がいいかもしれない)

エドガーは空いている手で頭をガシガシかきながら、×印が踊る地図を(にら)む。

ブウンと音を立てて、泣きぼくろが印象的なメイドがゲートから戻ってきた。

それに気づいたエドガーが地図から顔を上げ、彼女へと視線を移す。

「お帰りっす。首尾はどうっすか?」

泣きぼくろが印象的なメイドは、ため息をついて言った。

「8ヶ所よ」

「どこっすか?」

エドガーは泣きぼくろが印象的なメイドの側に駆け寄り、地図が見えるように身を寄せた。

「こことここ、それからここと……」

泣きぼくろが印象的なメイドは地図を指で指しながら、該当箇所をエドガーに伝えた。それに合わせてエドガーは地図にペンを走らせながら印をつけていく。

「8ヶ所なら、ギリ一斉に探せる数っすね。……何ヵ所かは魔獣の徘徊エリアになってるっすけど」

「さらっと不吉な事を言わないで下さいっ、エドガー先生!

……私、魔獣とか相手に出来ませんよ?」

上目使いでエドガーをにらむ、泣きぼくろが印象的なメイド。エドガーはそれをさらりと無視して、冷めた目で地図を見ながらこう言った。

「魔獣の脳を震動させて、脳震盪(のうしんとう)でも起こせば大丈夫じゃないっすか?」

続けてエドガーは鋭い目付きをし、確信を持った声で言い放つ。

「ーーむしろアンさんは、一番安全に魔獣倒せるゴリラ(・・・)な能力を持ってるっすよ……!

ゴリラとしての自覚を、もっと持ってもいいと思うっす!」

エドガーのみぞおちに、泣きぼくろが印象的なメイドの肘鉄(ひじてつ)がクリーンヒットした。

「げふ!」

みぞおちを押さえ、地面に崩れ落ちるエドガーと、氷の微笑みでそれを見下ろす泣きぼくろが印象的なメイド(ゴリラ属性)。

悶えるエドガーの視界の端に、上下に揺れるピースサインが映る。

エドガーは震える手で縮小したゲートに手を伸ばし、魔力を流して、その幅を人一人通れる大きさに拡げた。

ゲートからおだんご頭のメイドが出てくると、地面にうずくまるエドガーを見て呆れた。

「また何か余計なこと言ったんですね、エドガー先生……」

泣きぼくろが印象的なメイドが地面にうずくまるエドガーを無視して、おだんご頭のメイドに声をかける。

「そちらもダメだったのね……」

「そうなんですよー!

ただの魔獣だったんで、こっそり木の影に隠れてやり過ごしたんですー!」

ブンブン握りこぶしを上下に振りながら、おだんご頭のメイドが熱弁する。

それをなだめながら、泣きぼくろが印象的なメイドが説明した。

「次の場所で最後になるけど、該当箇所が8ヶ所あるから、私も一緒に探すことになったわ」

脇腹を押さえ地面から立ち上がりつつ、エドガーはおだんご頭のメイドにキリリとした顔で言った。

「アンさん一番ゴリラなんで、一番キツイ所に行ってもらうことになったっす……!」

「エドガー先生……?」

氷の微笑みを浮かべ、エドガーに無言の圧力をかける泣きぼくろが印象的なメイド。

おだんご頭のメイドは、それを必死でなだめた。


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