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森の中
一方その頃、森の中では。山歩きに不相応なドレス姿の幼い少女が、革靴で砂利道を歩いていた。
彼女の名はルクソニア。
丘の上にある古城に住む貴族の娘であり、騒動を巻き起こしている張本人である。
「ふうー! ぜんっぜん、越えられないわ……!」
少女は額に浮かんだ汗を手で拭いつつ、延々と続く山道に嫌けがさしていた。
城を出て、かれこれ2時間は歩いている。
しかし景色が全然変わらない。
見渡す限りどこまでも続く、森。
延々と、森。
歩けど歩けど、森。
もう森しかない。
(なんとなく勢いでここまで来ちゃったけど、なんかもうしんどい……)
歩き疲れたルクソニアは、その場でへなへなと座り込んだ。
木漏れ日のなか、一陣の風が吹き抜け、ルクソニアの頬をかすめる。
木々が揺れる音、鳥のさえずり、なにかの動物の足音。
目を閉じれば、様々な音がルクソニアの耳に入ってくる。それは城の中では聞けない音だった。
(そうだわ。わたし、森の先へ行きたかったんだわ)
決意を新たに、ルクソニアは静かに目を開いた。




