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5年後
森に囲まれた小高い丘の上に、ポツンと見える小さな古城。
城の中ではメイドたちがせわしなく走り回っていた。5歳になる城主の娘の姿が見当たらないのだ。メイドたちが総出で城の中を探し回っているが、その姿を確認できた者はまだいない。メイドたちは焦っていた。子煩悩な城主にバレたら、減給どころの話じゃない。何としてでも内々に、ばれないようにことを処理しなければならないのだ。
広い廊下を駆けていたメイドの一人が同僚の姿を見つけ、小走りで駆け寄った。
「そっちはどうだった?」
「それが……厨房にはいらっしゃらなかったわ。そちらはどう?」
「こちらもダメよ。どのお部屋もくまなく探したけれど、見つからなかったわ」
「だとしたらもう、城の外へ出てしまわれたのかしら……」
メイドたちの視線が、城の窓へと移る。
雲ひとつない晴天である。
「ありえるわね……。あのお嬢様のことだもの。護衛もつけずに、森の中を一人でずんずん進んでいる可能性があるわ……」
メイドたちは遠い目をして、窓の外に広がる景色をみた。城を取り囲む広大な森がどこまでも広がっている。
「最悪、人海戦術で森狩りね……」
地平線の彼方まで続く緑を眺めながら、メイドたちは深いため息をついた。




