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用事
ヨドは静かに立ち上がると、白く美しい手をルクソニアに向けて差し出した。
満面の笑顔でその手をとる、ルクソニア。
土で汚れたドレスの裾を払うと、自分の倍以上もあるヨドを見上げた。
「わたしはこれからお城にもどるけど、ヨドはどうするの?」
「ぜひお供をさせてもらうよ、ルクソニア嬢。
この土地を治める貴族・リーゼンベルク殿に用事があるからね」
「まあ、本当に?
パパにお客さまなんてめずらしいわ!
大抵みんな、入場料を払ったあげく、この森を抜けてお城に来るのを嫌がるもの!」
「それはなんて勿体無いことだろう。
こんなに聡明で愛らしいご令嬢と会うことが出来るし、画期的なシステムを一代で築き上げた奇才・リーゼンベルク殿のお話も聞けるのに」
ヨドの言葉に、ルクソニアは嬉しそうに笑った。
「そんなことを言うのはあなただけよ、ヨド!」
そう言ってルクソニアは、軽くスキップしながらヨドの脇をすり抜け、城へと続く道を数歩進んだ。そしてふわりとドレスの裾をはためかせながら、後ろにたたずんでいるヨドを振り返る。
「どうしたの、ヨド! 置いて行っちゃうわよ?」
イタズラっぽくウインクをするルクソニアに、ヨドは穏やかな笑みを浮かべながらそれに続いた。




