『おいしい女と玉手箱のプレスマン』
あるところに漁師があった。魚が捕れ過ぎたときは、食べる分だけ残し、小さいほうから選んで、逃がしてしまうような、欲のない漁師であったから、嫁もなくひとり身であった。
ある日、若い女がこの漁師を訪ねてきて、この家に置いてくれと頼むので、とても二人で暮らせるほどのかせぎはないからと断ったが、どうしてもと頼むので、仕方なくこれを許した。
女は、味噌汁をつくるのがとてもうまく、出汁がきいているというか、とにかくうまいので、どうやってつくっているのかと思って尋ねてみたが、女は答えなかった。漁師は、何やら気になったので、出かけるふりをして、隠れて女の様子を見ていると、女が、着物をまくって、しりを鍋に浸してから、味噌汁をつくるのを見てしまった。漁師は、何やら汚いことをされた気がして、その日の味噌汁を飲まなかった。女は、これは素性が知られてしまったとさとって、この日を限りに出て行くことにした。
実は、私は、小さいころ、お前様に捕まって、食べられると思ったところを逃がしてもらったことがある魚です。しかも、一度や二度ではありません。覚えているだけでも八度は逃がしていただきました。私自身から出るおいしい成分を味噌汁に入れていたのですが、それを知られてしまったのなら、もうここへはいられません、と言って、玉手箱を置いて出ていった。
漁師が、玉手箱を開けると、中には数え切れないほどの六色プレスマンが入っていた。漁師は、試しに数えてみたが、数えるたびに本数が違うので、数えるのをやめてしまった。
教訓:漁師にプレスマンは不要である。浮きくらいにはなるが、普通の浮きのほうが便利である。




