プロローグ
この世界では俗に言う、”魔法”が存在しており定義としては主に四種類。
一つ目は五属性の火、水、風、光、闇を簡素ではあるものの扱える初級魔法。これは万人が使える。
二つ目は、その五属性を合わせる事で生まれる中級魔法。これも万人が使える。
三つ目は、中級魔法を全体的に強力な魔法に昇華した上級魔法。これは一つ以上なら基本的に誰でも使える。
そして四つ目に、これら全てを置き去りにする程に超強力な魔法、超上級魔法が存在し一部の天才のみが扱える魔法。
基本的にはこの四つが存在し、人々は来学園に通いながら切磋琢磨し、腕を磨き知を蓄える。
魔法を扱う者は魔導士と呼ばれ、魔法で人々を導く者と言う意味がある。
俺、レイジ・ノルマルも数多いる魔導士の一人で今日も今日とて腕と知を蓄える為、学園に通う。
とは言え、俺は初級魔法は全て使えるが中級魔法は火属性と光属性しか扱えない。
所謂、出来損ないだ。運だけは良く、両親は俺を大切に育ててくれて貧乏ながらも学園に通わせてくれている。
出来れば恩返しをしたいが、今の所、仇でしか返せない。
そんな俺には厄介な友達が二人いる。
「セルフィ・ウォーガマ、貴様は隣国であるウォーガマ王国の姫だろ?何故レイジと一緒にいる、早く去れ」
「それは貴方も同じでしょ?レン・エイリーン、いいえエイリーン王国第一王子様。私はただ、未来の花婿であるレイジといるだけですわ」
一人はレン・エイリーン。この国の王子であり、数少ない魔法を全て会得している数百年に一度の天才と呼ばれている男だ。
そしてもう一人はセルフィ・ウォーガマ。隣国の姫でありながら何故か、この国の学園に通っているレン同様に数百年に一度の天才と呼ばれいてる女だ。
何故、学費を払うのもやっとの貧乏人で才能の欠片もない俺に二人が執着しているか気になると思う。
だが安心して欲しい、俺にもさっぱり分からない。世界を救った記憶も無ければ貧困の国を飢餓から救った覚えも無いし、前世で世界を二つ救った記憶もない。
天才二人に取り合われる覚えなど全く以て、ない。
こんな俺を好いてくれるのは嬉しい、だが理由が分からなさ過ぎる。
レンに聞いても「僕は別にお前を好いていない、偶々都合が良いのが君なだけで別に君の事なんか好きじゃない」と、教科書にでも乗せたいツンデレのセリフが返って来る。
セルフィに聞いても「私が認めた唯一の男性である事以外に理由がいりまして?」と、人生で言ってみたいセリフランキング上位間違いなしの言葉が返って来る。
この二人のおかげで色々助かっている部分はあるが、毎日こうも取り合いをされては敵わない。
そもそも、ただ飯を食うだけで喧嘩しているのは何なんだ?
「…なぁ、三人で食べるって言う選択肢は―――」
「無しだな」
「無しですわね」
「そこは同意見なんだな」
「大体、君がはっきりしないのが悪いんだぞ」
「え?俺?」
「そうですわ、親友と恋人のどちらを取ると言うのですか」
「その二択って両方が異性の時だけしか適応されないだろ」
「同性愛者もいますので」
「確かに……いや俺もレンも違うけどな?」
「とにかく、どっちと昼食を共にするのだレイジ」
「どっちって言われても、どっちでも良いとしか…」
「…ほう、この僕がこの女と同列だと言うのか」
「いや、そう言う意味じゃないんだけど」
「全く、男の癖に随分女々しいですね」
「何だと…?」
「男なら堂々としていれば良いのに、そんなに私が怖いんですの?」
「はっ!ネズミの餌にもならない冗談を言うな、僕がお前を恐れているなど万に一つも有り得ない!」
「ならば、ここは正々堂々と勝負しましょう」
「えっ嘘、ここで?」
「ほう、この僕に挑むか…!良いだろう、相手をしてやろうセルフィ・ウォーガマ!」
「マジ?やる気なの?」
「では、遠慮なく行かせて頂きますわよ!レン・エイリーン!」
俺を取り合う勝負の火蓋は切って落とされた。両者共に互角、一歩も譲れない戦いに二人の闘志は燃え上がる。
「くっ…!流石はエイリーン王国第一王子、一筋縄では行きませんね…!」
「そちらこそ、やはりウォーガマ王国次期王妃は伊達ではないな…!」
「……なぁ」
「ならば次はこれですわ!」
「来い!僕の全力を以て君の全力に応えようじゃないか!」
「……おいってば」
「何ですのレイジ、今良い所なのですが」
「いや、良い所なのかもしれないけどさ」
「王族の決闘を邪魔するとは、いくらレイジでも許されぬぞ」
「だから、これで決めるの…?」
「当たり前ですわ」
「無論だが」
「……マジか」
今二人が行っている決闘、その内容とは……。
「それにレイジについて詳しいのは将来の花嫁である私に決まっています。レンさんも中々に健闘していますが流石に私に勝つ事は不可能ですから勝負は付いている、と言っても過言ではありませんから」
「何を言う、レイジについて詳しいのは他ならない僕だ。セルフィも随分と詳しいようだが、同性で同じ国に住む者と異性で他国に住む者では勝負を決している、と言っても過言ではない」
「何で勝負の内容が『レイジ・ノルマルの私生活について』なんだよ、お前らいつ俺の私生活覗いてるの?」
「べ、別にお前のことが気になっている訳ではない。ただ同じ学園に通う我が国の民の生活を知るのも王子として当然のことであり、決してお前のことが気になっている訳じゃない」
「それで、セルフィは何でなんだ?」
「愛しい人のことを知りたい、と思うのは当然のことですわ」
「OK、分かった。お前ら今度覗いたら口利かんぞ」
「「なっ!?」」
「き、きき貴様!王子と姫である僕達と口を利かないと言うことは、僕達と口を利けないと言うことなんだぞ!?」
「そ、そそうですわよ!私達と口を利かないと言うことは、私達と口を利けないと言うことですわよ!?」
「うん、そうだな」
(何で2人して同じことを言ってんだ…?)
「い、いいい良いのか!?」
「うん」
「ほ、ほほほほ本気ですの!?」
「うん」
「「………………」」
二人はショックのあまり、口から魂が抜けている。
(抜けてる魂も口が開いてる…)
まるでマトリョーシカみたいだが、4つ目は出てこないようだ。
まぁ人の私生活を勝手に覗いているのだから文句はあるまい。と言うか王族2人が覗き見してるって何だよ、どうなってんだこいつらの倫理観。
(にしても、ちょっと言い過ぎたか…?)
口を利かないなんて言葉は、絶交してやると言ったようなものだ。色々して貰っている上に、貧乏人の俺と友達で居てくれている奴に対して冗談でも言ってはいけない。
(流石に言い過ぎだったな…)
「ごめん、嘘」
「……へ?」
「……う、嘘?」
「うん、嘘」
「は、ははっ!そ、そうだよな、君が僕のことを嫌いになるはずがないものな!はははっ!」
「ま、まぁ私は嘘だと分かっていましたけどね!おほほっ!」
(嘘吐け、2人して魂抜けてただろ)
「つーか、そろそろチャイム鳴るだろ」
「「あっ」」
「仕方がない、今日だけは一緒に食べてやるか…」
「今日は二人で食べれると思いましたのに、残念ですわ…」
とは言いつつ、何だかんだで3人で昼を囲むのが日課になっている。
仲が良いのか悪いのかは分からないが、互いへのリスペクトは忘れないので見下していると言うのは無いのだろう。
(そもそも俺みたいな貧乏人を取り合ってる奴らが、そんなことを思わないか)
この世界は魔族の侵略から人間が魔法を編み出し、抵抗し続ける世界。
俺はこんな世界で、魔族に対抗する為の腕と知を蓄える。
とは言え、それはまだ少し先の話。
今は誇らしくも、どこか情けない気もする友人との何気ない日常を謳歌する。




