②コッポラ、不老不死を手に入れる
前回の続きです。感想を聞かせていただけると嬉しいです。
コッポラは成功を収めた実業家だったが、その成功は多くの犠牲と裏切りの上に築かれていた。
ビジネスでのライバルを蹴落とすために、彼は時に法律に反する手段も使ってきた。
彼は自身の成功に執念を燃やし、他人の苦しみを顧みることはなかった。
会社は巨額の利益を上げ、彼自身も莫大な富を築いた。
それに伴い社会的な非難も浴びたが、彼はそれを意に介さず、むしろ誇りにすら感じていた。
だが、彼は成功の裏に隠された犠牲の重さを漠然と感じ、何かを埋め合わせなければならないという思いも抱いていた。
その思いがビジネスの一線から退いた後にコッポラを社会貢献活動へと駆り立てた。
だが、それは正義感からではなく、単にお金儲けに飽き、こうした活動を新たな娯楽として見出しただけだったのかも知れない。
一方で、ブルーマン博士が世界に蔓延する伝染病の根絶に執着するのにも理由があった。
医学博士としての使命感だけではない。
彼の最愛の妻は、この伝染病によって命を奪われたのだ。
彼女が伝染病の初期症状である咳をし始めてから命が果てるまで、それほど長い時間はかからなかった。
ブルーマン博士は、妻の体が蝕まれていくのをただ見守ることしかできなかった自分の無力さを責め続けていた。
そして、妻が息を引き取る直前に彼に最期に遺した
「伝染病を根絶して…この世界を救って…」
という言葉が、彼の心の奥深くに刻み込まれていた。
妻への愛とその遺志を継ぐことが、ブルーマン博士の生きる目的となり、彼を突き動かし続けてきたのだった。
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「博士、君はわかっていない。」
コッポラは静かに語り始めた。
「伝染病を一時的に根絶したとしても、また新たな伝染病が流行し、人々は再び苦しむだろう。
それでは根本的な解決にはならない。
財力と行動力を持つ私が不老不死を手に入れ、永遠に人々のために行動し続ける方が、真の意味で人類を救うと信じているんだ。」
ブルーマンは気色ばんで反論した。
「おためごかしを言うな、コッポラ!
人間は短い人生の中で、目の前の問題に向き合い、一つずつ解決するしかできないんだ。
不老不死という権力を手にし、未来永劫、人類のためにその身を捧げる、そんな神のようなことができるはずもない!
目を覚ませ、コッポラ!」
コッポラはブルーマンの一喝に少し怯んだように見えた。
彼は目を閉じ、自分を落ち着かせるように咳ばらいをした後に、冷ややかな声で言い返した。
「君がどう思おうと構わない。しかし、私は自分を信じている。
私のような者が永遠の命を持ち、知識と経験を積み重ねていけば、必ずや人々の役に立つことができる。」
コッポラはブルーマン博士に背を向け、ドラゴンに叫んだ。
「さあ、ドラゴンよ!7つの石を集めし私の願いを叶えよ!」
「やめろっ!!」
ブルーマン博士はコッポラの声を掻き消すように言葉を振り絞ったが、ドラゴンはブルーマンに見向きもせず、コッポラに視線を向けて言った。
「その願い…、叶えてやろう。」
ドラゴンの目が鋭く光り、その光はまるで天空からの一筋の雷のようにコッポラを包み込んだ。
コッポラの身体が光に包まれると、彼の顔には満足げな表情が浮かんだ。
「なんてことだ…」
ブルーマン博士は、絶望の声を思わず漏らした。
目の前で夢が遠のき、すべてが消えていく。それは、まさにこの手に掴みかけた夢が、指の間からすり抜けていくような、耐えがたい絶望感だった。
しかし次の瞬間、コッポラの膝が崩れ、まるで糸が切れた人形のように、前のめりにばったりと倒れ込んだ。
次回は最終回です。