出発
ミシェルはうれしくなりました。
それで、また、お祈りをします。
何日もして、花が散ったあと、木には実がなりました。
真っ白な実でした。
始めは小さな、まん丸な実だったのですが、だんだんと形を変えていきました。
日に日に形を変える木の実。
平たく、そして、出っ張ったりくぼんだり。
ある時、ミシェルはその実が何かに似ていることに気づきました。
「パズル?」
そう。木の実は、真っ白なジグソーパズルに似ていたのです。
ミシェルは理解しました。きっと、その真っ白なパズルを完成させたら、願いが叶うのだと。
ミシェルは、木に登りました。
実を一つずつ取って行きます。
すべて形が違います。
丁寧に、丁寧に、一つずつ、一つずつ。
一つ、二つ……四十二、四十三、四十四……
後、四つ。ミシェルは、四十五個目の実に手を伸ばしました。
その瞬間。
ビュウン!
と、強い風が吹きました。
ミシェルは木から落ちないよう、幹にしがみつきます。
ぎゅっと目を閉じて、幹にしがみついていたミシェル。
風が止んだ後に見上げたそこには、残りの四つの実がありませんでした。
「パズルの実が!」
ミシェルは慌てて木から降ります。
周りを見回してもその実は見つかりません。
ミシェルは摘んだ実をすべて持って家に入ります。
真っ白なそのパズルの実を全部机の上に並べ、そして、パズルを作ります。
何も書かれていない、真っ白なパズル。
でも、作らなきゃ。
お母さんが、お母さんが……
どれくらい時間がたったでしょう。
六かける八の、たった四十八ピースのパズル。
作っては壊し、作っては壊し。
どうしても完成しません。
それはそうです。パズルの実が四つ足りないのですから。
四十四の実を使って作ったパズル。
その真ん中がぽっかりと、四つ分開いていました。
「あと四つ……」
ミシェルは家を飛び出しました。
もう一度木の周りを見回します。
ですが、やっぱりどこにもパズルの実は見つかりません。
ミシェルは、孤児院に走って戻りました。
そして、自分のベッドにかけてある、リュックを手に取り、孤児院を再び飛び出しました。
「ミシェル!」
誰かが呼んだその声も無視してミシェルは走ります。
自分の家から、風が吹いたであろう方向へ。
風が吹いた方向。それは、森の奥へです。
ミシェルは、森へと入って行くことにします。
まだ体の小さなミシェル。
お父さんやお母さんと森に入ったことはあっても一人で入ったことはありません。
でも、最後の四つの実。それを探さなきゃ。
森の中には魔物がいるってことくらい知っています。
ミシェルは怖くても怖くても、それでも、森に入って行きます。
だって、パズルの実。お母さんが残してくれたメッセージ。
願いをかなえるための、四つの実。
絶対に見つけるんだ。