第五話《謎》
遅くなってしもた。すまねぇ
「なに言ってんだよ・・・」
「こちらからすれば貴方の方こそ何を言っているの?どうして名乗ってもいない私の名前を知っているの?」
おいおいおいおい嘘だろ・・・。何の冗談だよ。どうして記憶がないんだ?かくいう俺もマリアと話した後の記憶がないんが・・・。俺の記憶とマリアの記憶は全くかみ合っていない。まるで何者かに記憶を改変させられたようなーーー
「・・・少し貴方の記憶を覗かせてもらうわ。」
そういうとマリアは白魚のような指を俺の頭に近づけてきた。
「な。何をするつもりだ!」
「大丈夫よ。上級汎用魔法《追憶》を使うだけだから。この魔法はここ最近の記憶を垣間見るだけのものよ」
「お、おぅ?。それでなんか分かるならやってくれ」
そういうとマリアはその指を俺の額につけて
「《追憶》(ファーム)」
そう唱えた。そして目を瞑って動かなくなった。時々「あれ・・・?」とか「うそ・・・」とか聞こえてきて物凄く不安になってきた。そうすること約五分。
「確かに私は貴方に会っていたわ。」
「あぁやっぱり?」
マリアが開口一番そう口にした。俺の記憶は間違っていなかったみたいだ。しかし何故この短時間の記憶が二人とも違うのだろうか?そう俺が口にすると
「そう・・・それなのよ」
マリアが食いついてきた。
「記憶が食い違うということは脳に何かしらのダメージが入るか。誰かに造作させられた時ぐらいしかないのよ。それにーーーー」
「それに、なんだ?」
「《追憶》(ファーム)では本当に欠損した記憶は見ることが出来ない。私は今日の早朝五時からの記憶を覗こうとした。しかし貴方の記憶は私と会う九時ごろから始まっていた。」
「それがなんなんだ?」
「わからない?ーーー貴方自分の故郷の記憶がまるっきり無いのよ?」
そんな馬鹿な・・・。故郷の記憶が無いだと・・・?故郷なんて簡単に思い出せ・・・ない。頭の中に靄がかかったみたいに自分の出自だけがわからない。
「なぁ頼む。俺の出自を一緒に調べてくれないか?」
「何故私に?」
「何故ってお前なんか俺に用があるんだろ?その用事を絶対俺は断らない。代わりに俺の記憶探しを手伝ってくれよ」
俺がそう言うとマリアは大きなため息をついて
「仕方ないわね。少しだけ手伝ってあげる」
そう言ってくれた。
「よし。じゃあ出発しようぜ」
そうして俺たちは歩き出した。
ここからフロム・バーンスタインの奇妙な冒険が始まったのであった。