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万年Eランク冒険者は裏ですべてを支配する~かつて英雄と呼ばれた男は最強であること隠す~  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


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かつての再現

 竜姫がハイルドの腹を貫いた。


「竜姫、貴様……この私――めいれ――」


 ハイルドが何かを言う前に、竜姫がその喉を噛み切る。

 弱点の多い吸血鬼であるが、一番の弱点は同じ吸血鬼に血を吸われることだ。

 たとえ始祖の吸血鬼であろうとも、眷属に血を吸われたらその吸血鬼は死ぬ。

 眷属の吸血鬼が人間に戻るのと同時に。


「なに、どういうことっ!? 竜姫はあいつの支配下にあるんじゃなかったの」

「ああ、命令には忠実だったはずだ。だが、心まで支配できていなかった。だから、命令の外のことならできる。お前の剣を隠したこともそうだ」

「だったらなんで」

「痴れ者を始末しろって言っただろ? 奴にとって一番の痴れ者がハイルドだったわけだ。だいたいこういう命令はあとから言った言葉が優先されるからな」


 普段は命令をするときにはいろいろと注意をして行っているはずだ。

 だが、彼にはいま考える余裕がなかったのだろう。

 これまでうまく命令できていたから油断したようだ。

 ハイルドの姿が灰へと変わっていく。

 圧倒的な力を欲し、世界を滅ぼしかねない災厄を生み出し、そしてその肉体が滅んだ後も精神だけ生き延びた男の末路としてはなんとも虚しい終わり方である。


「これで終わりなの?」

「いいや、まだだ。ハイルドが死んだ今、制御されていた奴の力が解放される」


 ガウディルがそう言うと、徐々に竜姫の姿が巨大なドラゴンへと変わっていく。

 その姿は《闇紅竜(クリムゾンドラゴン)》そのものだ。


「奴に逃げられたら大変だぞ」

「なんで――あのドラゴンに戦う気がないのなら別に戦わなくても」

「この上はどうなっていると思う?」

「どうって、内側の城壁を越えて……えっと……外堀は越えてないわよね? だったら――」

「ああ。城下街のど真ん中に大きな穴が開くぞ。何人の人間が死ぬかわかったものじゃない」


 それに、ガウディルは人間に戻らないといけない。


「でも、勝てるの?」

「俺一人では無理だろうな。だが――間に合ったようだ」


 とガウディルが言うと、足音が近づいてくる。

 やってきたのはラミリィ、キアナ、マリン、そしてかつての仲間たちだ。


「マリン、思ったより早かったな」

「出前迅速がもっとー」


 マリンには護衛たちを解放したあと、王都の外で待機させているラミリィたちを呼びに行くように頼んでいた。

 万が一に備えて彼女たちを呼び寄せたが、それが功を奏したようだ。


「ガウディル、あれの血を吸い尽くせばあなたは元の人間に戻れるのね?」


 ラミリィが尋ねた。

 ガウディルが頷く。


「そのはずだ」


 その一言でラミリィは、彼女たちは気合いを入れる。


「だったら、私たちは協力を惜しまない。あなたに救われたこの命、あなたのために使うわ」

「分体とはいえ、竜の素材は高くうれますし」

「魔法の実験材料にも使える」

「我が主君への忠誠を果たすため」

「神の誓いに報いるため」

「世界最強に近付くため」

『最後まで戦う!』


 そして、《闇紅竜(クリムゾンドラゴン)》とガウディル、最後の戦いが始まった。


   ※ ※ ※


 ラーザルド公国の混乱はだいぶ収まってきた。

 国王陛下やその息子たちの崩御が発表されてから半年。

 即位したミネリス女王はうまいこと民衆を纏めているらしい。

 ミネリスからミリオン商会に届いたガウディル宛ての感謝の手紙を読み、ラークは微笑む。

 しかし、面白くないのはラミリィだ。

 

「あんなに苦労したのに、あなたは完全な人間には戻れなかったのよね」

「少し人間に近付いたが、《闇紅竜(クリムゾンドラゴン)》の分体は一体じゃなかったらしい。元に戻れるのはいつになることやら」

「残念ね。せっかく約束を守ってもらえると思ったのに」


 ラミリィはため息を吐く。

 ため息を吐きたいのはこっちだと、ラークもつられてため息を吐いた。

 結局、ラークが完全な人間に戻る日はまだ遠い。

 と思っていたら、一匹の黒い犬が近付いてきてラミリィの前に座る。


「私に撫でられたいの? 昔からいい子ね、あなたは。同じ名前のご主人様とは偉い違いね」

「皮肉か?」

「事実よ。ね、ガウディル」

「……今はクロって名乗ってる」

「あら、私は昔の名前の方が好きよ。なんといっても、ガウディルの名前の由来になった子なんだもの」


 最初にラミリィたちに出会ったとき、咄嗟に犬の名前を偽名に使ってしまったのはやはり失敗だったとラークは思う。

 と、家の外に人の気配が。


「ラークさん、いますかっ!? これからワイルドボアの退治に行くんで、一緒にいきましょ! ラークさんが採取する薬草も近くにありますから」

「どうやらテネアからのお誘いのようだ。少し行ってくるよ」

「ええ、気を付けて。最強のEランク冒険者さん」


 ラークはラミリィに見送られ、家を出る。

 こうして、ラークのほとんど人間、僅かに吸血鬼としての光と闇の冒険者生活はまだまだ続くようだ。

ご愛読ありがとうございました。

以上でこの物語は完結になります。

この物語は10年程前に別サイトで途中まで書いていたものを発掘、加筆したもので、ちゃんと終わらせることができてよかったです。


さて、昨日からダンジョン探索の物語、

「幸運の初期値が異常に高かった高校生が、缶詰ガチャで手に入れたスキルを使って最強になる物語」

の連載を始めました。

そちらでもお会い出来たらありがたいです。

下にリンクを貼っておきますので、よかったら読んで下さい。


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