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万年Eランク冒険者は裏ですべてを支配する~かつて英雄と呼ばれた男は最強であること隠す~  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


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案内人の白羽の矢

 ミネリス公女に関する情報は、先ほどラミリィから受け取った。徹夜で冒険者ギルドが保有している情報を集めてくれたらしい。

 ミネリス・ラーザルド。年齢は17歳。

 剣術の腕は師範級(マスタークラス)

 一目見たときから実力者であることは想像していたが、そこまでとは思わなかった。

 冒険者のランクで言えばBランク以上の実力はある。

 キリングボアに単身挑んだのも無謀ではなくその実力に裏付けられた行動だったようだ。

 今日の彼女は金色の髪も纏めて、服もドレスではなく冒険者のような恰好をしていた。

 化粧も完全に落としている。


「ミネリス様、どうしてここに?」

「私のことミーネって呼んで。お忍びなのよ」

「お忍びって、護衛の方はどうなさったんですか?」


 気配を探ってみるが、やはり護衛は見つからなかった。

 公女を一人で歩かせるとは思わないのだが――


「宿にいるわ。ターニャ――あなたに説教したメイドに影武者をしてもらってるの。観光ついでに庶民の生活を堪能したくてね」


 どうやら護衛を置いてきたらしい。

 随分とアグレッシブな公女様だ。


「あなたのこと心配してたのよ? 元気そうで安心したわ」

「それはありがとうございます。ワインでも召し上がりますか?」

「ええ、いただくわ……ってあれ? このワインって凄く高いわよ? あなた、もしかして凄腕の冒険者なの?」

「ただの貰い物だよ」


 ラークはそう言って、普通の陶器のコップにワインを注いで片方を先に飲む。

 一応毒見のつもりだ。

 ワイングラスではないことに文句を言われるかと思ったが、ミネリスは気にすることなくワインを飲み、


「それ、美味しそうね」


 と今度はラークの朝食を見る。


「食べかけですけれど食べます?」

「ええ、もらうわ」


 と言う前に手が伸びてパンを食べていた。

 そして、食べ終わったところで、


「代金はいくらかしら?」

「5万ミルです」

「わかったわ」


 と半分冗談で言った額だったが、ミネリスはあっさり金貨を出して俺に渡した。

 お忍びだっていうのなら、金貨をほいほい出さない方がいいと思った。


「それで、ミネリス様は――」

「ミーネ」

「ミーネは何で冒険者ギルドに?」


 朝ごはんを食べるだけに来たとは思えないのでラークは尋ねた。

 ミネリスは少し考える素振りを見せて頷いた。


「道案内できる冒険者を雇おうと思ったのよ」

「ああ、なるほど」


 どうやらここに来た目的を忘れていたらしい。

 このトレシアの町は英雄のいた街として様々な観光名所が存在する。

 そのため、以前は道案内をする案内人があちこちに立っていて観光客を見つけては声をかけてきたのだが、ろくに道案内もできないのにお金を貰ったり、道案内と称して裏路地に誘い込んで身ぐるみを剥いだりする犯罪行為が横行し、苦肉の策として案内人は免許制になった。

 現在は免許を持たない人間がお金を貰って案内行為をするのは違反になっていて、見つかれば罰金が科せられ、度が過ぎると労役刑も課せられる。

 自分が冒険者ギルドに来た理由を思い出したミネリスはギルドの受付に行った。

 そしてアイシャと話をする。

 暫く話したと思ったら、二人がこちらを見てきた。

 どうやら白羽の矢が立ったらしい。



 ラークとミネリスは二人でトレシアの街を歩いている。


「あなたって薬草採取だけじゃなくて道案内もできるのね」

「Eランク冒険者なんで、多芸じゃないと食べていけないんですよ」

「あなたEランクだったの?」

「ええ、Eランクですよ。戦うのは苦手なんです」

「そうだったわね」


 昨日、賊に斬られそうになったときに盛大に転んだのを思い出したのだろう。

 ミネリスは思い出したように笑った。

 

「それで、どこに行きましょうか?」

「そうね。まずはミリオン屋に行きたいわ」

「わかりました」


 言われるがまま、ミネリスをミリオン屋に案内する。

 今日も店の前には行列ができていた。

 いまから並んだら、店に入れるのは夕方になるだろう。


「あれに並ぶの?」


 ミネリスは少し嫌そうな顔をした。

 庶民の生活を堪能したくても、行列に並ぶのは嫌なようだ。


「貴族とVIP専用の入り口は別にあります。そっちに行けば並ばずに中に入れますが」

「そうなると私が公女だって知られちゃうわ」

「でしょうね。なのでこっちに来てください」


 といつも通り店の裏に回って、事前に貰っていた手紙を届けるついでに従業員口から店内に入る。

 そして、先日と同じように店内を見せてもらう。


「随分と卑怯ね」

「夕方まで並んだ方がよかったですか?」

「褒めているのよ。あなたに道案内を頼んで良かったわ」


 ミネリスがそう言って向かったのは五階だった。

 五階は商品を置いていない。

 展示室となっているが、それでも多くの人が展示されているものを見ている。

 ここに置いてあるのは、英雄ガウディルとその仲間たちの装備品や記念の品、またその記録だ。


「ガウディルに興味があるんですか?」

「ええ。ガウディルの英雄譚はラーザルド公国でも有名だもの。本当なら生きている彼に会いたかったわ」


 とミネリスは展示室のガラスケースの中に置かれている短剣を見て言った。

 英雄ガウディルの愛用の短剣とプレートに書いてあった。

 実際に愛用していたが、その使い道は戦闘用ではなく一緒にいた仲間の獣人の産毛を剃る時に使っていたものだ。

 と展示室を見て回っていると、近付いてくる気配が。

 キアナだった。

 彼女はこちらにアイコンタクトを送ってきた。


(なんで公女と知り合いになっているのですか?)

(なりゆきで)


 自分は悪くないと思っているラークだったが、何故かキアナの笑顔が少し怒っているように見えた。


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