プロローグ
なんてことない夜道。静けさに満たされた交差点に、青年が一人通りかかる。
信号は赤。しかし深夜。車も通りはしないだろうという算段で、彼は横断歩道に足を踏み入れた。
だが、奇しくも同じ考え持った車が猛スピードで突っ込んできた。
そして、運悪く彼はその車と衝突。映像はそこで途切れた。
「はい!っというわけでこれが君のキルカメラだね!」
真っ白な空間、まるで雲の中のような場所。
先ほど映像の中ではねられた青年こと、
俺の前でいかにも神っぽい風貌の女が騒いでいる。
この女は自らを『女神』と自称し、俺の死を愉快そうに眺めているのだ。
「おい。人が死んだんだぞ。そんなに笑うなよ」
「何でそんなに深刻そうな顔すんのさ!せいぜい70憶分の1個体だろう?」
「俺は俺だ。他にゃいない」
「へぇ。面白うこと言うね。君」
自称女神が、ずいと顔を近づけてくる。
妙に顔だけはいいため、そっぽを向いてしまった。
「私は偶然が好きなんだ。事実君と出会えたしね」
「そうか。お前の趣味は聞いてねぇよ」
「つれないなぁ。ねぇねぇ、私の暇つぶし、手伝ってよ」
「断る。俺にメリットがない」
神とやらはそんなにも暇なのか。
潰すほどの暇があるならさっさと生き返らせてほしいもんだが。
「あ~おっけい!それじゃいったらっしゃい!」
コイツ直接脳内の声に返事してきやがった。
それにいま、行ってらっしゃいと言いやがったか?
「ちょ、待てって―――」
こうして俺の意識は車にはねられたがごとくのスピードで闇に落ちていった。