10回目の転生。私を無視していた、氷の公爵様に何故か溺愛されています
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転生ループしているマリアンヌとノエルのお話です。
「ああ、マリアンヌ!
君がいない世の中は全てが色あせてしまって、生きているのが辛くなる。
どうかいつまでも共にいてくれ!」
「氷の公爵」である美しき婚約者から、熱烈に口説かれている。
これまでは無視されてばかりだったのに、今回10回目の転生では溺愛されている。
(どうしてこうなったのかしら?)
マリアンヌ伯爵令嬢(16歳)の諸事情。
(転生回数が多ければ多いほど、人生経験は豊富というものだけど、記憶のあるというのは少々厄介でしかないわ)
蜂蜜色の髪で、ピンクの瞳をした、マリアンヌ伯爵令嬢はしみじみ思う。
9回亡くなった記憶が残っているということは、ある意味苦痛でしかない。
しかも19歳になると必ず死ぬというお決まりなので、
今回は何が原因で死ぬかしらと考えると、あの方法では何回目ねとか、この方法ではまだ死んでなくて新鮮ねとか。所謂死を達観するレベルになってしまった。
本当は一回亡くなれば?!普通の人は全てリセットされるはずなのに、何故か記憶持ちで生きている。
何回か悩んだ時期もあったけど、こうまで転生するのには何か訳があるはず。
「本当に10回というのは多いわ。」
いつも19歳で亡くなって、9歳の頃に戻る。
その頃ノエルとはもう婚約済みだ。
ある時点から、少し考えを変えて、折角またマリアンヌに生き返り若く転生したのだから、何かを極めてみようということになった。
10回の人生では多くのことを学び、経験し、それを生かして、何とか楽しくマリアンヌは転生ループしている。
現在マリアンヌは16歳だ。あと3年で19歳になる。
(何かしら乗り越えると、ループは終わるんじゃないかしら。)
その鍵となるものが今まで全く分からなかったけど、案外身近なものかもしれないわ。灯台下暗し。私の足元はどうだったかしら。
身近な人に鍵があるとしたら、う~ん、誰かいたかしら?
(婚約者がもしかして鍵?)
そういうことはないと思うわ。
だって、あの方、いつも私には目もくれなかったような気もする。
かなり冷たい氷のノエル・ヒートン公爵。
髪は薄いブルーで、瞳は濃いブルー。
見目は麗しく美丈夫で、最初の頃は愛されようと思っていたけど、途中の転生からは諦めたわ。
私が8歳の頃、婚約したのよね。
ノエル様は確か11歳だった。
私と会っても話をしないし、こちらを冷たい顔で見つめてくるのよ。
(何か私、気に入らないことでもしたかしら?)
他の令嬢とは普通にお話しているのを見たことあるわ。
そんなに私の事、嫌いなのかしら。
(あの分厚い氷は私では溶かせない!不可能よ!)
嘆いていたマリアンヌだったが、10回目には、ノエルの氷を溶かすことに何故か成功して、マリアンヌは溺愛されている。
いつも亡くなる年齢に達しても、マリアンヌは死ななかった。
「11回目の転生は多分無いだろうと信じたいわ!」
このままノエルと共に人生を過ごしていくのはマリアンヌにはとても良いことに思えた。
ノエル公爵(19歳)視点。
「君にはいつもいつもいつも何回も無視され続けてきたような気がする」
書斎でのノエルの独り言だ。
ノエルはマリアンヌと同じく10回も転生していた。
ノエルは愛しいマリアンヌに会うと、極度に緊張するため、話しかけられなかった。他の女性となら、話すことなど全く平気なのだが、マリアンヌを前にすると言葉が出てこないのだ。
(転生途中からマリアンヌはこちらを気にかけなくなってしまったな)
しかし、マリアンヌに会う度に、ノエルの頭の中ではマリアンヌへの愛しさが溢れ出していた。
(マリアンヌ、可愛い、可愛い、可愛い!)
ノエルのマリアンヌ愛も虚しく、マリアンヌは19歳のある時期になると必ず亡くなってしまう。そうしてお互い10年前に戻るのだ。
公爵はそれを阻止するためにいつも頑張っているのだが、何故か上手くいかない。
(何故マリアンヌを助けられないんだろう?)
公爵は考えた。
(もしかして、原因は身近にあるんだろうか?)
(マリアンヌの心を得るために何かしら心を砕いただろうか?いや、なかったな。これは盲点だった)
昔からマリアンヌの可愛い姿を見ると、恥ずかしすぎて、つい顔が強ばってしまう。
(何回みても慣れない可愛さだ!特にあのピンク色の瞳を見ると動けなくなってしまう!)
初めてマリアンヌを見た時の衝撃といったらなかったな。
あれは一目惚れだった。
強引に婚約を結んだことは英断だと思う。可愛いマリアンヌが他の男の目に触れられたら、すぐに取られてしまうはず。
10回目の転生で初めての試みとなる。マリアンヌの心を得るにはどうしたらいいのだろう。
ノエルは幼なじみで執事でもあるアルフに相談してみた。
10回目で初めての相談である。
「アルフ、俺とマリアンヌのこと、どう思う?
もう少しマリアンヌと、ぐふっ、近づきたいんだが・・・」
「ノエル様は緊張しすぎて、マリアンヌ様に挨拶もしてないじゃないですか?」
「うっ!確かにそうだな」
「私から見ると、ノエル様はマリアンヌ様を睨んでいるように見えます」
「にっ、睨んでなどいない!マリアンヌが可愛すぎて、見つめてしまって、動けなくなっているだけだ!」
「はあ。私から言うのも何ですが、その容姿からは想像出来ないほど、マリアンヌ様に関しては奥手でいらっしゃいますよね?マリアンヌ様と進展するようにはとても思えません」
「どうしたら良いのだ。このままだと距離は縮まらない。俺はマリアンヌに好かれたい!」
「まずは挨拶からですかね」
「あっ、挨拶?」
「マリアンヌ様にお会いになられたら、挨拶です」
「マリアンヌに声をかけられるだろうか?」
「他の令嬢と接するのと同じように、自然と挨拶すればよろしいのですよ」
アルフは頼りないノエルのことを見捨てずに、的確なアドバイスを提案した。
アルフのアドバイスを受けて、ノエルは努力した。
「マ、マリアンヌ。お、おはよう」
「お、おはようございます。ノエル様。」
(今回はマリアンヌが俺を無視しない?)
それがまた新鮮で嬉しくて、ノエルはさらに努力した。
(普通にマリアンヌと話せるようになりたい!)
アルフのアドバイスを忘れない。
一方マリアンヌの方はノエルから挨拶されて、驚いた。
(これまで挨拶なんてされたことなかったのに。
今回はまさかノエル様から声を掛けて貰えるなんて。何だか嬉しいわ)
それから、ノエルはマリアンヌとの会話をするようになった。
ノエルと会話が成立するとは、マリアンヌは思ってもみなかった。
(私、これまで随分と嫌われて無視されていたと思っていたのに、そうじゃなかったのかしら?)
アルフの視点。
ノエル様にも困ったものだ。
マリアンヌ様を前にすると、冷静さを失ってしまう。
他のご令嬢にはピクリとも関心を示さないのに。
緊張して、マリアンヌ様のことで頭がいっぱいになるんだろうな。
まあ、当然と言えば当然か。マリアンヌ様はノエル様の初恋のお相手だ。
婚約もノエル様のゴリ押しだった。
マリアンヌ様はたぶんそれはご存知ないだろう。
緊張したお顔でマリアンヌ様とお会いになる時のノエル様。
まさに氷の公爵にふさわしいお顔ですよ。
マリアンヌ様、きっと誤解しているだろうな。
嫌われて無視されていると思うだろうな。
ノエル様のお顔、無表情で冷たい感じで、
私でさえも(おお、寒っ!)となります。
しかし、ノエル様の心の中はマリアンヌ様への愛でいっぱいですよ!
ポカポカですよ~。
マリアンヌ様、どうかノエル様を嫌いにならないで下さいね。
ノエル様もマリアンヌ様と、上手くいきますように!
出来る限り、サポートしますからね!
アルフのサポートの甲斐もあり、徐々にノエルはマリアンヌとの会話を増やし、アプローチして、お互いの気持ちが通じあった。
「マリアンヌ、君のことを愛してるよ」
「私もノエルのことを愛してます」
長らく10回も転生して、ようやく二人は結ばれた。
マリアンヌは今もノエルと幸せに暮らしている。