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三十六計逃げるに如かず

 こほん、とゼイグがわざとらしく咳をする。このままでは(らち)が明かない。

「ヴィサには私とテノンで紹介状を、ヘリュには私が紹介状を書きましょう」

 無論、領都に出る二人にはテノンが紹介状を書く。

 天恵スキル(ギフト)鑑定後、その人物がどのような天恵スキル(ギフト)を所持しているのかを記載した紹介状を書くのは、神殿の人間と決まっている。そして、それを持って、各ギルドか学校に向かうのだ。ギルドでは必要に応じてもう一つの紹介状を書き、師匠の元へ紹介するなり、「一度勉強しておいで」と学校にやったりする。

「ヘリュに関しては、私も現在までどのようなことが起きていたか、軽く書きましょう」

 ……何故だろう。通常そこまで必要ないのだが、「それもあったほうがいい」とテノンの勘が告げている。


「ん~。じゃあ一回戻るか。準備もしなきゃ……おお~すげぇ。さすがヘリュ」

 扉を開けたライネがのん気そうに言う。それを見たヘリュは涙目である。

 神殿の周囲を家畜や家で飼いならされた魔獣が取り囲んでいたのだ。

「こっから出れないっていう可能性は考えていなかったなぁ」

 ヴィサもあっけらかんとしている。これが「日常」と言わんばかりである。

 飼いならされたとはいえ、魔獣は魔獣である。神殿内には入れない。家畜は……おそらく魔獣に指示されているのだろう。入ってくる気配がない。

「ア……アルマぁぁ」

 逆に魔獣や家畜に散々な目にあって来たヘリュはアルマの後ろに隠れていた。……賢明である。

「あれ、何とかしないとあたしらも出れないわね」

 家畜を狩るわけにもいかない。さて、どうしたものか。そう子どもたちが悩んでいる中、聖職者二人はのほほんとしていた。


「これは……アレ(、、)案件でいいかな?」

 テノンの言葉に、ゼイグは頷く。前代未聞の使い方ではあるが。

「四人ともこのまま王都に向かってもらいましょう。必要なものは神殿側で必要経費として落とします。紹介状もそのあとですね」

「ってか、この状況でどうやって出るんですか?」

「その一、魔獣と家畜を蹴散らす。手っ取り早いですが、村人に恨まれるので却下ですね。一度やってみたいとは思っているのですが、この村の方々がいい人すぎるのでさすがに良心が痛みます」

「痛まなきゃやんの!?」

 ライネの突っ込みは無視して、ゼイグは続けた。

「その二、強行突破。まぁ、間違いなくヘリュさんは家畜や魔獣に色々仕出かされますね。聖職者二人に見習い一人、狩人一人ではとても無理でしょうねぇ」

 やって出来なくはないが。

「その三、ヘリュさんを生贄に差し出す。まぁ、結構穏便に事は運びますが、私が神々の怒りに触れるので却下です。

 というわけで、その四。神殿にある移転陣を起動して王都に向かう。起動させるには聖職者二人が必須です。これを今回利用します」

 色々と疲れるのでやりたくはないのだが、今回ばかりは仕方ない。通常、この移転陣を洗礼で使う場合、何らかの理由で洗礼した子供を保護する場合だ。保護という名目はあるが、「テイマー」であるが故、神殿から出られずに使うというのは前代未聞である。

「テノン助祭のかわりはすぐに来ます。ですので、我々は気にせずに向かいましょう」

 ゼイグは微笑み、子供たちを神殿奥へと案内するのだった。


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