助祭の真実
「ところで、ヴィサ」
「何でしょう、助祭様」
「君、ヘリュの天恵スキル、薄々気づいていたんじゃないかな?」
「気のせいですよ~~」
神殿に戻るなり、追及を始めたテノンに、朗らかな笑みで返すヴィサ。それをゼイグは黙ってみていた。
「一応、腐っても助祭の地位をいただいている神官ですよ、私は」
「俺もですけど、ヘリュも希少スキルですよね。それにアタリをつけるなんて……」
「私が『もしかして』と思った理由はヴィサ、君の行動です」
何をした、少年。
そういえば、とゼイグは思い出した。村に着いた時、テノンは「自分たちがやらかしたことが可愛らしく見える少年がいる」と言っていたのを。
「……君か」
「はい。この子です」
「意味わかんないんだけど」
若干少年の素が出て来ていた。
「彼はね、私に『我々がやらかしたことが可愛らしく見える』子供がいる、と教えてくれのですよ」
「……はぃ?」
ヴィサが信じられない、という顔になっていた。
「昔は破天荒三人組とよく言われたものです。誰、とは言いませんがね」
うんうん、とテノンも頷いている。
「だからこそ、私が君の先回りをして色々防いでいたでしょう?」
「一人は助祭様かよ!!」
「はい。ですから、アタリもつけやすい。
ヴィサ、君は魔獣を狩る時、大抵ヘリュを囮にしていました。テイマーなら、魔獣を惹きつけます。そのあとテイマーが殺されるか、魔獣を服従させられるかは、テイマーの腕次第でしょうが」
「ばれてたの?」
ヘリュが死なないよう、テノンは色々手を回していたという。それこそ、身を守る護符とか優先的に回したりして。
ヴィサとて、大事な幼馴染だ。色々と策は講じていただろう。だが、如何せん経験というものが足りない。それゆえに、テノンにばれた。ただそれだけ。
「それから、畑。こちらもモグラ関係がそうですね。モグラの害が酷くなるとヘリュを連れまわす。
周囲から見れば、動物に絡まれて気落ちしている幼馴染を労う、優しい少年です。ただ……行った先を見れば……」
「そっちもばれてたのかぁ」
「畑の実りがよくなるので、私も知らぬふりはしていましたが。
あとは、ミーアキャット。ラット系魔獣が徘徊する畑に、わざとヘリュごとミーアキャットを連れて来ていたでしょう」
少女ごと連れてくるとはこれ如何に。
「でぇも、おかげで……」
「ですから、私も黙っていたのですよ。大人が真似をしてはいけないですからね」
希少スキルというものは、扱いが分かり難いものもある。一応、ネノネン王国では神殿学校で教えることになってはいるが、はたしてどれくらい覚えているというのだろうか。
「……やっぱり上には上がいるのかぁ」
かなり、ヴィサが不服そうである。ゼイグから見れば、何故テノンに見破られないと思ったと問い詰めたくなる。
「一つ、いいことを教えてあげようか。君の目の前にいる助祭はね、一応天恵スキルで『神官』を持っているんだ」
大司教たるゼイグも保持しているが。
「本来なら、枢機卿まであっさりなれると言わしめた人材だった。それを嫌がって逃げた。その上数十年策を講じて助祭の地位に留まり続けている逸材だよ。私はおろか、我が国にいる大司教と枢機卿が手を組んだところでも敵わないよ」
「嫌ですよ。そのような面倒な地位は。のんびり田舎で暮らすのが一番です」
しれっとした顔で、テノンは言い放った。