prologueという名の説明回
ネノネン王国トゥイマラ辺境伯領、その中でも他の二国との国境地あくにある「ソイニ村」。本日は村人全員がお祭り騒ぎである。
村と言ってもとても狭く、あえて言うならば「○○地区」という言葉が当てはまるくらいの集落だ。普通に神殿もあるし、代々村を治める村長さんもいることから村という単位がついているだけである。辺境中の辺境ということもあり、過疎が進んだこの村で、今年は四人の子供が「スキル洗礼」を受けるのである。
スキル洗礼とは、産まれながらに持つ「天恵スキル」を村の神官と王都から来た大司教と呼ばれるお偉様が、鑑定することを指す。
因みに鑑定は天恵スキルとしてはこの世に存在せず、天恵スキルで「神官」か、通常スキルの「祈り」を持つ者が修行の末に手に入れる、ありがたい通常スキルである。
因みに「通常スキル」というものは後天的に使えるようになるすべてのスキルのことで、希少度は一切加味されていない。
なので希少度中の希少天恵スキルは「空白(いわゆる、無し)」であり、今の国王がそうだったりする。手に入れたい通常スキルが、ある程度の苦労でほとんど手に入れられるというスキルである。他にも希少なスキルとしては、「神官」「テイマー」「統治」「調合師」などがあげられる。
そして、スキル洗礼だが、洗礼を受ける年齢は国ごとに決められており、中には産まれてすぐ、という国もあるが、ネノネン王国では十五歳と決められている。
何故十五歳なのか。それは十五までは様々なことを学ぶ時間と法に決められているからである。その間に神官がすべての子供たちに読み書き計算を教える義務があり、親はそこに通わせる。神殿では読み書きなどの他に様々な技能を住民にお願いして、子供たちに身につけさせる。そうすることで、天恵スキルが身にそぐわないものだとしても、何とかなるようにしているのだ。
大司教を呼んでの天恵スキル鑑定ということもあり、本日村はお祭り騒ぎなのである。
ソイニ村の助祭は、ここ数十年変わっていない。テノンという老齢の男で、助祭になってこの村に赴任してから、移動したことがない。本人も出世に興味がなく、村の子供たちに読み書き等を教えている時の方が幸せという男だ。
「今回の大司教は、あなたでしたか。ゼイグ大司教『様』」
「アンタに様付けで呼ばれたくないなぁ。テノン『大先輩』」
「大先輩て……。同い年でしょうが」
「ヒトに色々押し付けて辺境行きをした姑息なおヒトに言われたくないなぁ」
因みに、この二人は同期である。出世頭は現在枢機卿となっており、居場所は総本山である。三人そろって修道士としてはかなりの破天荒者であったのだが、時の法皇に気に入られ、出世街道まっしぐらだった。それを察したテノンはゼイグともう一人に押し付けて逃げ切ったのである。
……それはさておき。
「さて、この度の鑑定を受ける人数は?」
「四人ですよ。ゼイグ大司教が気に入りそうな子が一人おりますが」
「ほう?」
「色々とやらかす、男の子でしてねぇ。私たちが修道士時代にやったことが可愛らしく思えるくらいですよ」
「は?」
「儀式が間もなく始まりますので、話はこのあたりで。皆広場に集まっておりますし」
「話を聞くのが楽しみだよ」