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風化した記憶が蘇る時

作者: 初夏

長い梅雨が明け、日差しが強くなりつつある今日のこの頃、1人の少女が神社の縁側に足を振らつかせて座っていた。



境内にはこの時期珍しく参拝客が来て居るが、やはり彼女に気がついた様子はない。



そんな彼らを一瞥しながら参拝理由を思案する彼女はふと、合点がいったとばかりに手を叩く。



「流行も下火と思っておったが…」



彼女の考え通りに彼らは辺りを見渡した後、御朱印を貰おうと社務所の方へ歩いていくが…



「残念じゃが、ここには誰もおらんよ」



そう、ここは彼女以外には誰も居ない。



神主も年末年始と例大祭の日以外は来ることが無い。



暫く人を呼ぶ声が響いた後、彼らは肩を落として階段を降りていった。



見る物が無くなった彼女は退屈そうに欠伸をしながら、そのまま横になった。



若干強めの日差しが肌を焼きながら、しかし、時折風が吹き肌の熱を持っていくこの感覚は、何度経験しても未だに飽きない。





そんな事を考えて、瞳を閉じた。






あれからどれだけ経ったのか、いつの間にか本当に眠ってしまっていたらしい。



日は傾くどころかもうすぐ完全に沈む所まで来てしまっている。



それでも彼女はそこから動こうとはせずに、その場で朝まで過ごすようだ。



起き抜けの働かない頭で考えるのは先程まで見ていた、とある人間の夢。



人外である彼女と唯の人間である゛彼゛とは、当然生きる時間が違う。



それでも、「自らの命が尽き果てるまで、共に生きてくれないか?」と。



人間と敵対関係にあった彼女は、実は人間というものをよく理解していない。


興味本位で共に過ごした゛彼゛の事を考えていたら、夜が明けて、昼になっていた。




「昔よりも時間の経ち方が速い気がするの」




そう独りごちて、大きく伸びをすると、いつの間にか寄っていた猫に気付く、「我に気が付くとは将来有望じゃな」と思いながら゛彼゛に…




「おい、猫だ、猫が居るぞ」




振り向いて声を掛ける。



…当然帰ってくる声は無い。



暫く呆然としていた彼女だが…



「共に生きれないのであれば、断るのが正解だったのじゃろうな…」



…そう呟く彼女の顔は切なげだった。

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