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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
大陸横断編
2/71

魔邪の女王


 エトが旅から帰って来た。相変わらず可愛い顔をしている。これを本人に言えば機嫌を損ねてしまうのだが······それに立派に成長している。本当に嬉しい限りだ。そんなエトを見ながら、私は昔の事を思い出していた。

 

 私がこの樹海に迷い込んだのは今から十年も前になる。当時の私は、ただただ強さを求めるだけの獣だった。だからあらゆる種族の強者と戦い、勝利を収めてきた。今思えば、相当イカれていたと思う。そして、とうとう敵が居なくなった頃、とある王国の第一王子である少年に私は······〝敗北〟した。

 今でも鮮明に覚えている。金髪で赤い瞳をした二十歳にも満たない少年。彼が地面に剣を突き立てたと同時に私は敗北した。······圧倒的だった。何が何やら分からないまま、私の体には無数の剣が突き刺さっていた。ユニークスキルの『超回復』が間に合わず、同じくユニークスキルの『未来視』でもその攻撃を先読む事は出来なかった。

 攻撃をしようにも、次元を切り裂く『次元断絶』というユニークスキルも、視界に捉えた人間の心臓を遠距離から握り潰す『生贄の手』というユニークスキルも、何もかもが通じなかった。

 

 相手に戦意がなかった事が幸をそうし、私は逃げ延びることが出来た。最強だと思っていた自分が恥ずかしかった。上には上がいるという現実-それをたった十数年生きただけの子供に叩き付けられたのだ。こんな屈辱は無い。

 

 そうして私は強さを求める事を辞めて、放浪生活を送っているうちに、人間が住むことが出来ないという魔邪の樹海へと辿り着いたわけである。

 

 

 樹海に入って数時間。

 

 私は濃密な魔素の影響で体中が体内から汚染され、血を吐き、肉が削がれ、皮膚が爛れていった。そして一時間程が経った頃、私の体は地面に横たわっていた。意識が遠のく中、当たり一面に魔獣達の気配を感じ取った。

 

 数えきれない。夥しい程の数だった。

 

 『ここで死ぬ······』

 

 そう思った。流石に、ダメだこりゃ-なんて腹の中で笑いが込み上げてくる。荒々しい息遣いが徐々に近付いてくるのを感じながら途方に暮れる。まずは足だろうか、それとも腕? いいや、胴体を持っていかれるかもしれない。······痛いのは嫌だ。常用スキル『痛覚緩和』のお掛けで体の痛みはヒリヒリする程度で済んでいたが、喰われるとなると流石に堪えきれるか心配になる。だからいっその事、頭を持って行って欲しい。せめて苦痛無く死にたいものだ。

 

 「あああああああああぁぁぁッ」

 

 ·········は?

 

 なんて考えていた時、突如として樹海に響き渡った悲鳴のような······いや、違う。これは泣き声だ。遠のく意識を絶えないように堪えながら、ゆっくりと声のする方向へと頭を動かした。と、同時に完全に体が動かなくなってしまった。······なんてこった。私は最後の力を振り絞ってしまったようだ。

 

 なんて後悔している場合では無かった。私の目の前で、私の視界にありえない光景が映し出されていたからだ。

 

 「うっ···ぅぐあああああぁぁぁッ!」

 

 驚く事に、先程まで密集していた上位の魔獣達が、泣き叫ぶ小さな子供を通そうと〝道を開けている〟のだ。意味が分からなかった。ただの泣き叫ぶ子供だと言うのに、どうして魔獣達はぞろぞろと道を開けているのだろう。

 

 まるで、王の行進だ。

 

 そして泣き叫ぶ小さな子供は、私の前に立つとピタリと立ち止まり、グスッグスッ-と鼻水をすすりながら視線を私に向けた。ほんの一秒程だが、見つめ終えるとその子供は再び泣きながら行進をし始めた。

 

 いや、ここで行進し始められると-

 

 「うグッ······あぅッ···おフッ······グはッ!」

 

 思った通りだ。躊躇無くその子供は、さも当たり前のように私の体を避けること無く〝踏みつけて〟行った。こんの······ふざけやがって!-と子供相手に殺意が湧き始める。おかげで飛びそうだった意識が帰って来てしまった。というか、びっくりするほど頭の中が冴えている。······まぁ相変わらず体は動かないのだが。

 

 意識がハッキリした事で、私はスキルの『威圧』を発動した。圧倒的な圧力を辺り一面に解き放つと、魔獣達が萎縮したようにそそくさとその場から立ち去っていく。よかった······。ちゃんと効果があったらしい。上位魔獣な為、結構な賭けではあったのだが、無事に辺りから魔獣の気配は無くなった······。

 

 

 

 -それから更に二日。

 

 濃密な魔素のせいで、乱されまくっていた魔力が落ち着きを取り戻し、『超回復』でようやく自由に動けるようになった。

 

 「···というか」

 

 ある事に気付いた私は、自分の両手や体を舐め回すように眺めた。特に変化は無い。しかし、不思議な事にこの濃密な魔素が漂う樹海にいるというのに、二日前のような症状が体に現れない。体も軽いし、意識もハッキリしている。不審に思った私は、自分のステータスプレートを取り出した。

 

 そこには-

 

 名前:イルミンスール

 年齢:二十五歳

 種族:魔人

 加護:魔邪の加護(魔邪の樹海内でのみ、魔力値が三倍になる)

 称号:魔邪の女王

 魔法:炎属性魔法・氷属性魔法・地属性魔法

 魔力値:【480,000】

 技能:『US超回復』・『US空間支配』・『US未来視』・『ES魔装』・『ES魔眼』・『覇気』・『魔力操作』・『魔力感知』・『痛覚消失』・『状態異常無効化』・『炎属性耐性』・『氷属性耐性』・『地属性耐性』・『精神支配系魔法耐性』

 

 -と記されていた。

 

 「······な、なによこれ。『次元断絶』と『生贄の手』が消えてユニークスキルの『空間支配』になってる···。というか魔人っ!? 嘘でしょ······。というか、このデタラメな魔力値って······。それにこの加護······この樹海内でなら〝 無敵〟じゃないの!? というか、ステータス更新が自動でされてるってどういうこと!?」

 

 根本的に魔力値=戦闘力であり、どんなスキルを持っていようが、耐性があろうが、大幅な差のある格上の相手には効果が薄くなるのだ。この樹海内でのみだが、私は魔力値=戦闘力が【1,440,000】という事になるらしい。つまり、この樹海内では私はほぼほぼ無敵といえる。

 

 なによそれ······。全然実感が湧かないんだけど···。

 

 というのも癖づいた『魔力操作』で抑えているせいなのだが。こんな数字を見てしまうと逆に怖くなってくる。いや、その前に人間という種族のステータス更新は、教会で行わないと出来ない筈なのだ。ステータスの自動更新なんて聞いた事がない。

 

 「あ······そっか。魔人になったからか。ステータス更新が必要なのは人間だけなんだったわね。っと! 忘れる所だったわ。驚くのは後! あの子を探さないと!」

 

 自分に起きた異常事態に困惑している場合では無い。ここには二日前に小さな子供が居たのだ。あの時、何故魔獣達があの子供を避けたのかは分からないが、こんな訳の分からない樹海にたった一人で居るのは非常に危険である。心配になった私はすぐに子供の捜索を始めた。

 

 勘違いが無いように言っておくけど、体を踏みつけられた仕返しをする為に探すんじゃないからね!?

 

 

 

 -泣き叫んでいた子供を探して三日が経った。

 

 探せど探せど見つからない。既にあれから五日が経っている。もう手遅れなのだろうか······。まぁ関係ないと言えばないのだが、あの時にあの子供が現れなければ、私は死んでいたかもしれない。いや、確実に死んでいた。つまりは、恩人と言っていい存在である。

 

 「もぉ···。どこにいるのよ。···ダメ元でやってみようかしら」

 

 私は可能性が限りなく低いとは思ったものの、『魔力感知』を使う事にした。『魔力操作』で抑え込んでいた魔力を解き放つ。すると、驚く程に体から力が溢れ出し始めた。というか、漏れ出している。

 今の私の『魔力感知』は、この広大な樹海全てを感知出来るようで、まるで空から見ているように魔力の反応が鮮明に感じられる。おぉー···-なんて感心している最中、異常な程の魔力を持った存在が近くにいる事が分かった。

 

 「な、なによこれ!」

 

 上位魔獣と比べると天と地程の差がある。確実にこの樹海の主だ。とは言え、今では私が主なのだが···。

 

 とにかく-と、私は急いでその場所に向かう事にした。一応魔力を最大にした状態で、エクストラスキルの『魔装』で外部の魔素を纏わせられるだけ纏わせておく。すると、皮膚から数センチの範囲が蜃気楼のように歪み始める。素人目でもわかる程の魔力量だ。これは······-

 

 「よっと···」

 

 私は実験がてら、軽く左側面の樹海に向けて手を振り下ろした。その瞬間、猛烈な爆風と共に轟音が樹海に響き渡る。そして、目の前にあった木々が消し飛び、地面を真っ二つにしていた······。

 

 「······よし。これはダメだ! 慣れるまでは封印決定ね!」

 

 予想を遥かに上回る威力と規模だった為、私は即効で魔力を抑え込んだ。そして『魔装』もそそくさと解除し、ふぅ!-と額の汗を右手で拭い取った。

 

 いやぁ〜びっくりした。下手をすれば魔邪の樹海自体を消しかねない。怖い怖い。

 

 「ん? ······あぁ! こんな所に居たーっ!」

 

 ついに私は小さな子供に出会う事が出来た。異常な程の魔力を持った存在が近くにいると言うのに、木の根元でぐっすりと寝息を立てている。それに、尋常じゃない程に瞼を腫らしている。あれからもずっと泣いていたのだろうか······。一体この子に何があったのだろう。両親は? もしかすると既に魔獣に襲われたのか···。

 

 「······一人でよく頑張ったわね」

 

 そう言いながら、泥と涙でぐちゃぐちゃになっている頬を優しく撫でてみる。すると、心做しか嬉しそうに微笑んだように見えた。······ふふ。可愛い。

 

 女の子のような顔立ち。悪いとは思ったが、一応今後の為に性別を確認させてもらった。すると、驚いた事に女の子じゃなくて男の子だった。······にしては美形過ぎる。女の子でも違和感がない。というか、女の子としても相当の美少女と言える。将来は中性的な可愛い子になるだろう。これが俗に言う『男の娘』というやつなのか······。

 

 「って違う違う。やばそうな奴が居るんだった。ここから移動させてあげな······きゃ···って·········え?」

 

 持ち上げようと抱えた時、ふと男の子の頭部より少し上に視線を移すと、そこにはこの子のステータスが表示されていた。もしかすると、エクストラスキル『魔眼』の効果なのかもしれない。

 

 ······が、そんな事はどうでもよかった。何故なら-

 

 名前:エト・リエル

 年齢:八歳

 種族:人間

 加護:-

 称号:◆◆◆◆◆◆

 魔法:-

 魔力値:【50,000】

 技能:『威圧』・『気配感知』

 

 -と、記されていたからだ。

 

 「なんなのこの子······。称号が···文字化け? かしら。···いや、それより魔力値が······異常じゃない。八歳で【50,000】って意味がわかんない。······私のスキルが狂っているのかしら」

 

 驚きで頭が真っ白になってしまった。『魔力感知』で感じ取った異常な気配は〝この子〟だったのだ。ここに来た事で、自分のようにおかしな事になったのだろうか······。いや、違う···と思う。何せ、この子にはこの濃密な魔素に対応出来るスキルがないのだ。

 なら元からこれ程の魔力値だとでも言うのだろうか······。そんなの聞いたことがない。私でもここに来るまでは【70,000】だったのだ。この子は将来的に、人外といえる【神話級(ミソロジー)】に至る才能を持っているとでも言うのか······。

 

 「恐ろしい子···。それに最低でも同じ期間、この樹海に居たはずなのに人間のままだなんて······」

 

 私がこの樹海で平然と過ごせるようになったのは、魔素に対しての適応力が高い魔人になったからなのだと思っていた。しかし、この子······いや、この少年は人間でありながら、この環境に順応しているというのだ。さっぱり分からない。

 

 「とりあえず······-キャッ!?」

 

 ひとまず、出来る範囲で治療をしようとした瞬間、突然目を覚ましたエトという少年が、私の首を掴み、押し倒して来た。不意を突かれたとはいえ、びっくりするほどに力が強い。ハッキリ分かるのは八歳の子供の力では無い。

 

 それに-

 

 「···す······ろす·········殺す! ぶっ殺してやる!」

 「っ!?」

 

 人に〝恐怖〟を感じたのは初めてだった。この子は『威圧』というスキルを持っている。しかし、今感じたのはスキルなんてものじゃない。

 

 〝純粋な怒り〟だ。

 

 ジッと見つめられる。淡い綺麗な青色の瞳が、感情の昂りと共に黄金色にゆっくりと点滅しているように見える。私は、たった八歳の子供に〝怖い〟と思ってしまったのだ。どうしたものか-と考えていたのだが、何故か体が本能的に動いてしまった······。

 

 「っうぶ············」

 

 -と、急にエトという少年はぐったりと私の体に倒れ込んで来た。とりあえず、落ち着いたのだと一息つき、ゆっくりと起き上がろうとした。しかし、右手が思ったように動かせない事に気付いた。

 

 あれ? っしょ。······あれれ?

 

 全く右手が動かない。謎の現象に頭の中がハテナで一杯になった私は、右手がどうなっているのかを二の腕辺りから辿ってみることにした······すると-

 

 「ぎゃああああああ!?」

 

 私はパニックを起こした。珍しく大声で叫び声を上げてしまった。あろう事か、私の右手は『魔装』を発動させた状態で少年の腹部を〝穿いていた 〟のだ。

 

 ご、ごめんなさいーっ!

 

 なんて心の中で全力の謝罪を述べる。いや、述べる前に助けるのが先だ。

 

 「ごめんね! すぐに助けるから!」

 

 そう言いながら、私は少年に常備していた上級回復薬を飲ませた。ゆっくりとだが傷口が塞がっていく。······やばい。危うくなんの恨みも無い子供を殺してしまう所だった。いや、正当防衛とも言えるのか?-なんて思ったが、明らかに過剰防衛なのは目に見えている。

 

 「·········っくは!······はぁ······あれ、アイツどこに···」

 

 どうやら無事に目を覚ましたようだ。キョロキョロとしながら辺りを伺っている。アイツ? 誰か探しているのだろうか。そう思いながら、エト君に声をかけることにした。

 

 「······こんにちは。···誰か探しているの?」

 「あぁっ! お前ぇえええっ!」

 

 目が合った瞬間、エト君···いや、エトはまたも私に掴みかかってきた。·········ん?

 

 って、アイツって私かーーーーっ!?

 

 「許さねぇ! 〝妹を返せ〟クソ野郎ォ!」

 「······え?」

 

 今、妹を返せ-と言ったのだろうか? 勿論、私には全く心当たりのない話だが、どうやらエトは誰かと間違えているようだ。その間違えた相手に、妹さんを連れ去られた? のだろうか。

 とはいえ-

 

 「いい加減にしろっ! さっきから誰かと間違えてるみたいだけど、いい迷惑なのよ!」

 「間違えるわけねえだろ! その鎧、〝聖騎士〟のだろうが!」

 「これは服がダメになったから、その辺で拾ったのよ!」

 「そんな嘘が通じるかっ! ガキだからって嘘ついてんだろ〝オバサン〟!」

 

 

 

 ···っと。この辺で、当時の私の記憶は途切れてるわけです。この後は全く覚えてません。次に記憶がハッキリしたは、その日の深夜でした。

 

 夜空の星に照らされながら仰向けに倒れているエト。そんなエトを呆れながら見つめている。根気強いというか、執念深いというか······。それ程までにこの子は追い込まれていたのだろう。エトと行動を共にして二日が経ち、圧倒的に格上の私に二日も挑んで来たのだ。大したものである。

 勢い余って一回、瀕死に追い込んでしまった。······えへへ。

 

 「······んなさい」

 「ん?」

 

 横たわっていたエトが、何かを呟いた。全く聞き取れなかった私は、エトに擦り寄って膝枕をしてあげた。すると、顔を逸らしながらもう一度、口を開いてみせた。

 

 「······ごめんなさい」

 「······うん。いいよ」

 

 素直になった途端に可愛さが津波のように押し乗せてくる。ついつい危険な扉を開いてしまいそうになる。だが、そんな事はしない。代わりにエトの頭をめい一杯撫でることにした。

 

 「何があったの? ······話せる?」

 「······うん」

 

 エトは仰向けの状態から、ぐるりと横に向き直すとゆっくりと話を始めた。それを黙って聞いていた。聞いていたのだが、気付けば私の目からは涙が流れ落ちていた。

 それはエトも同じのようで、話をしていくにつれて、鼻水を啜るような音を発している。多分、エトも泣いているのだろう。それを見せたくなくて、横に向き直したようだ。

 

 ······しっかり男の子だね。

 

 話をし終えると、エトはゆっくりと上体を起こして私に抱き着いてきた。やだ···可愛過ぎる。心臓の辺りがキュンッ-と小さく鳴いている。堪らず私はエトを抱き締めた。

 やっぱり小さい。当然だ。彼はまだ八歳の子供だ。暴れている時は感じなかったが、これ程までに弱々しく、華奢な体でたった一人ここに死ぬつもりで来たのだ。

 

 「エト。これからどうするの?」

 「戦い方······教えて。それで···冒険者と聖騎士を〝殺す〟」

 「······そう」

 

 またあの時の目だった。純粋な怒りの瞳。もしかしたら既に彼の人格は〝破綻〟しているのかもしれない。あかの他人である私がこの子に言える事なんて、たった一つしか無かった。

 復讐なんて意味が無い-違う。そんな事をしたってお父さんとお母さんは喜ばない-違う。私が代わりに妹さんを助けてあげる-違う。どの言葉も、今の彼は満足しないだろう。それなら-

 

 「いいわよ。その代わり、殺す気でするから覚悟しなさい。そして、精一杯生きなさい」

 「···なにそれ。でも······うん。分かった」

 

 こうして私は、エトを育てる覚悟を決めた。彼は怪物になるだろう。そう確信していた。それでも自分が一番···だなんて思って欲しくない。私のように挫折して心に決めた意志を曲げて欲しくない。生きる目的を失って欲しくない。だから私は、エトの為に最強で居続けるんだと心に誓った。

 もしかしたら既に妹さんは手遅れかもしれない。だからせめて復讐くらいさせてあげたい。『どんな理由があったとしても人を恨んではいけない』-そんな聖女のような心を持っている人間は、私からすれば狂っている。そんな簡単に割り切れるわけが無い。罪を犯した者は、相応に裁かれるべきなのだ。

 でもきっとこれは正しくないのかもしれない。復讐は復讐を連れてくる。誰でも知っている事だ。しかし、それなら私がエトを守ってみせる。私だけはエトの味方であり続ける。

 これは何があっても、どんな事が起こってもだ-。

 

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