眠り姫になりたい
さすがに中年期に入ると無理が効かなくなってきた。
「顔色悪いですよ」
スーパーのレジ打ちをやっていると、学生アルバイトの健一くんがそう言った。
ちょっと!他の人に言われるよりショックなんですけど!
ここのところ、家の用事で忙しかったのと、どうしても見逃したくなかったドラマや歌番組を無理して見てたから、目の下にクマができていて、化粧で誤魔化していたが、バレバレ?どーしましょ?
「そんなことないわよお」
ケラケラ笑って自分を落ち着かせる。
くらくらっ。
めまいが…。
「百合子さん?!」
健一くんの顔見ながらフェイドアウト。
夢を見た。
フワフワのベッド。天蓋付き。心地よい風が髪をなぶる。
「百合子さん」
「はい」
「若くてきれいだ…」
ひどいよ。もう、若くないって自分でもわかってる。時間が容赦なく過ぎていくのよ!誰にも止められない。
壁にかかっている鏡を見てはっとする。
若返ってる…?
「百合子さん」
彼の顔が急接近。
「健一くん」
思わず目をつむる。
「大丈夫ですか?」
パチ。
目が覚めた。
休憩室のソファの上に横になっていた。
「あんまり無理しすぎたんじゃないですか?睡眠をたっぷりとったらまだまだ元気できれいだと思いますよ」
「本当?」
「ええ。飲料課の竹田さんとか百合子さんのこと気にしてる人もいますよ」
そりゃ知らなんだ。
「俺の母親、睡眠だけはとってるから若々しいって周りから言われて有頂天ですよ」
スマホの写真見せてもらう。本当だ。
ついでに健一くんは自分の彼女の写真まで見せた。
私はすっかりすねてしまって、このまままた寝てしまいたかった。
あの夢の続き、みたいよう。(泣)