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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
93/136

大学生活の終わり



「本当に行っちゃうのー?」

「行くよ」

「僕もやっぱりついていこうかな」

「邪魔だからやめて」

「本当に良いの?寂しくなっても会いに行ってあげないのよ?」

「寂しくなることなんてない」

「無理しないでね。仕事なんてほどほどでちょうど良いんだから」

「そんなわけにいかないよ。親父はもっと仕事して」

「ねー本当に本当に寂しくないのー?」

「もう!!いい加減にして!!子離れは!?」


 1月中旬、今日は俺の引っ越しの日。


「隼人ー……」

「もうおばあちゃんも鬱陶しい!!」


 家から持っていくものはほとんどないから車に服やビジネス本、メアリーからの手紙、母さんのレシピノートとかそういうのを積んでさあ行こうと思ってからが長い。みんなが買ってくれた荷物は一旦竜二さんが預かってくれていて業者も呼んでるけど運ぶのも手伝ってくれる。日の出てる間に終わらせるために早く出発したいのに母さんとおばあちゃんと親父に邪魔をされている。


「懐かしいな」

「そうね、琉依兄が家を出る時も同じだったよね」

「それはおばあちゃんだけでしょ。俺が対峙してるのは3人なんだよ」


 おじいちゃんと優菜さんが懐かしがってるけどそんなことしてないで敵3人を倒してほしい。


「ほら、みんな隼人が出発出来ないわよ」

「良いぞ彩華さん、敵を倒すんだ」

「運び終わらないと隼人が困るからもう行かせてあげよう」

「良いぞもっと言って浩一さん!!」

「でもみんなでやれば早く終わるんじゃないのー?」

「そうだよね!!やっぱり僕も「だー!!一輝さん余計なこと言わないで!!」」

「もう隼人なんて早く行って運命なんてないってわからせた方が良いよー!!このストーカー!!」

「うっさいな、なんで若菜まで出てくるんだよ」

「だって朝から煩いんだもん、行くなら早く行ってよ」

「この3人に言ってよ」

「もう琉依さんも美香さんもアンナさんも、いつでも連絡できるんだから良いでしょ。すぐに会えるんだし」

「そうだそうだ昴の言う通り、3月の卒業式にも帰ってくるんだから大袈裟なんだよ」

「むー!!ゴールデンウィークもお盆も年末年始も帰ってくるのよ!!」

「はいはい、わかったよ。気が向いたらね」

「絶対帰ってきて!!」

「わかった多分ね」

「隼人ーお別れの挨拶ー」

「嫌だよ。ってかおばあちゃんもアメリカ行くんだから結局離れるの変わらないじゃん」

「まだまだよ!!あと3、4年……いえ6年後くらいには行くわよ」


 おばあちゃんは結局アメリカに行くことにはしぶしぶ納得したけど行く時期に関してはまだ交渉を続けている。


「なんでも良いけどね。あ、もうほらこんな時間だよ。もう良いでしょ、行くよ、じゃあね!!」


 もう強行突破だ。すばやく車に乗り込んで窓を開ける。


「じゃ、着いたらとりあえず連絡するから。バイバイ」


 そう言ってさっさと出発した。

 できる限り急いで15時くらいに着くとマンションの前には竜二さんがいた。


「来たね。琉依たちが引き止めると思って大きい荷物は運んじゃったよ」

「え、すみませんありがとうございます」

「あとはこの家電たちを運ぶだけだよ」

「あ、やりますやります」


 俺は慌てて荷物を運ぶ。


「なんで掃除機が2つあるんでしょう?」

「それはフローリング用でこっちがハンディタイプ、細かいところとか車とか」

「ああ、なるほど……なんですか?このたこ焼き器」

「やるかなって」

「やりませんよ」

「椿ちゃんとやりなよ」

「椿たこ焼き好きですかね?とりあえず置いておきます」


 椿と家で……もしかしたら将来椿との子供とかとやるかもしれないと思ってキッチンの収納に入れておく。


「誰ですかコーヒーメーカーなんて。缶コーヒーで良いんですけど」

「それ関だよ。これも」


 そう言って竜二さんはコーヒー豆を取り出す。


「朝はコーヒーかなって。あ、もちろん酒もあるよ」

「ワインセラーは村岡さんですね。小さいサイズなのは良かったですけど」

「あ、ちなみにさっきのたこ焼き器は木村だよ。小林と昇が掃除機。俺はこれ」

「なんですか、銘柄炊き……おどり……?」

「ご飯は美味しく食べたいでしょ、自炊するんだから。あとこの電子レンジ。レンジ、オーブン、グリル、スチーム「もー!!やっぱり高性能なのを揃えてきましたね!!しかもなんで炊飯器と電子レンジ!?みんな1つずつなのに!!」」

「いや、俺は炊飯器で妻が電子レンジ」

「なんですかその反則技」

「そうそう、今晩うちで食事でもどう?子供たちもいるし」

「拒否権ないですよね、本当に良いんですか?」

「もちろんだよ」


 そして運び終わってた親父が選んできた大きいテレビとか自分で選んだベッドだったりソファーだったりをさらっと見てから竜二さんの家にお邪魔する。


「いらっしゃい隼人くん」


 車で5分のところに豪邸があった。これこそ大金持ちの印だと思いながら家に入ると着物を着た女性が出迎えてくれた。


「お、お邪魔します」


 この人が竜二さんの奥さんなんだ……なんだか強そうな女の人を想像してたのに少し拍子抜けだ。


「佳代子です、初めまして」

「あ、えっと……初めまして」


 前に竜二さんの奥さんは2つ下だって聞いていたけどもっと若く見える。


「いつもはこんなにめかしこまないんだよ。化粧もしないしずぼらなんだ」

「あなたは早く行って」

「隼人くんおいで」

「隼人くん、さあコート脱いで」

「え、いや、大丈夫です」


 遠慮する俺にさあ、と手を差し出してくるから思わずコートを脱いで佳代子さんにすばやく手渡す。


「狭いところだけどゆっくりしていってね」

「十分広いですけど」

「ふふ、琉依さんにそっくりなのに美香ちゃんに似て可愛いわ」


 げ、可愛くないし母さんに似てないと言おうとしたけどなぜか圧を感じて言えなかった。佳代子さんなんか怖い。

 リビングに入ろうとしたらちょうど階段から男の子が降りてきた。


「あれ?隼人くんって本物でもめちゃくちゃかっこいいじゃん」


 その男の子は階段を掛け降りてきて俺の前に来た。あれ?竜二さんの子供って小さいんじゃなかったっけ?同い年くらいに見えるその子を見て首を傾げていると佳代子さんが怒る。


「翔太!!お行儀が悪いわよ!!ちゃんと隼人くんに挨拶しなさい!!」

「はーい、神崎翔太です。4月から高校1年生です。よろしくね隼人くん。ねえねえこの服どこのブランド?かっこいいね!!」


 なんと、この体格で中学生だった。考えてみれば竜二さんの子供だからな。

 俺は翔太くんに挨拶してこの服は関さんのお店の近くにあるお店だと教えてあげる。


「ああ、通りでかっこいいわけだね」

「ねえ隼人くん来たのー?わーイケメン!!」

「洋子!!あなたも本当に……ごめんなさいね、隼人くん。煩くて」

「いえ、うちと比べたら全然ですから」


 またしても2階の部屋から飛び出してきたのは中学生くらいの女の子。いや、もしかして小学生?


「初めまして洋子です。JCでーす。よろしくね隼人くん!!」

「ジェーシー?」

「女子中学生ってこと!!」

「ああ、中学生なんだね」

「うん、中1!!4月から中2!!」

「なんだか竜二さんのお子さんってきっちりしてると思ってましたけどだいぶ現代っ子なんですね、若い」

「隼人くんだって若いよ」


 イメージしていたのとは違ったけど良い子そうな子たちだ。俺はリビングで夜ご飯をご馳走になる。そして竜二さんが所有しているマンションのうちそこのマンション以外はほぼ管理会社に任せていて俺が住むことになったマンションは佳代子さんが管理人をしているそうだ。夫婦でオーナーをしているみたい。


「なにかあったらすぐに連絡してね。なにもなくても連絡して。話を聞いた時はうちでご飯を食べたら良いわって思っていたんだけど料理できるんですってね、偉いわーうちの子達も見習ってほしいわ。あ、電子レンジ見た?お勧めのを買ってきたのよ」

「見ましたありがとうございます」

「母さん落ち着きなよ」

「そうだよー隼人くん引いてるじゃん」

「母さんは良いのよ。美香ちゃんから隼人くんのことよろしくって頼まれてるんだもの、交流よ」

「どうだかねーイケメンと話したいだけじゃないのー?」

「良いじゃないイケメン。ねぇ?」


 俺に問いかけられても困ると思いながら苦笑いする。イメージとは違ったけど変わった家族だ。


 俺は当初の予定通り椿を探しながらバイトや内定研修をしながら時々この竜二さんの家族と食事をするというふうに過ごした。それに川口さんから親戚が小学校でミニバスのクラブチームのコーチをしているから暇な時に見てくれないかと頼まれたから車で30分のところにある小学校に時々だけど行っている。そして3月。




 反対したのに結局押しきられて大学の卒業式の前日親父と母さんが来た。


「まあ素敵ねー!!」

「あ、母さん荒らさないでよね!!」


 部屋に入ったとたん走り出した母さんを追いかける。


「ちょっとーみんなが買ってあげたもの以外なにもないじゃなーい」

「必要なものがあれば十分でしょ。あ、もう勝手に部屋開けないでよ」

「ここは空っぽ!!ここに泊まれたじゃない!!寝る場所ないって言ったのにー!!嘘つきー!!」

「もう煩いなー……」

「見事に黒しかないね」

「他に選ぶのも面倒だったから」

「じゃーん!!花瓶を持ってきたのよ!!お花を飾りましょ!!こんなこともあると思って!!」

「じゃーん、お花も買ってきたんだよ」

「持ってるの知ってるしあえて言わなかったけどやっぱり飾ってくんだ……」


 母さんは勝手に花を花瓶に生けてテーブルの上に置く。


「はい、これでパーと華やかになったわ!!」

「殺風景だからもっとなにかインテリアとか置いたら?」

「もう俺の勝手でしょ!!放っておいてよー!!」


 途中で佳代子さんが遊びに来て母さんと久しぶりの話に花を咲かせてそれから親父の運転する新車で家に帰り卒業式に出て母さんを振り切って電車で戻ってきた。




 これで俺の大学生活は終わり来月からは社会人になる。椿と別れてから俺はいろんな人に出会って様々な経験をして大人になった。もうあの頃の俺じゃない。椿のことを愛していたのに椿のことを考えてあげられなかった昔の馬鹿な俺じゃない。今なら椿を幸せにできるはずなんだ。だから椿、必ず見つけるからそしたらもう一度椿の隣にいさせて。


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