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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
92/136

卒業旅行と結婚祝いとクリスマス



「雪だー!!」

「雪だな」

「雪だね」

「2人ともテンション低い!!」


 12月、予定通り俺は卒業旅行に来た。バスを降りてスキー場にたどり着く。一面真っ白だ。


「寒いんだよ」

「それは当たり前だよ!!スキーしたら寒さなんて忘れちゃうよ」

「そういうものなの?よけいに寒そうだよ」

「騙されたと思ってやってよ!!行くよー!!」

「おい智也、そっちじゃない」

「こっちだよ。寒いんだからボケてないで早く屋内に行こう」


 寒い寒いと思いながら建物の中に入ってスキーのボードや靴とかをレンタルした。

 そして智也と拓也に聞きながら滑ってみる。上級者向けだという所から滑り降りると思った通りの微妙な表情をされた。


「おー……やっぱりねー」

「っていうか怪我したからどうなるかと思ったけど治癒力も含めて尋常じゃないよな」

「もう治ってから5ヶ月経ってるんだよ?そういうものじゃない?」

「バスケも普通にやっちゃってたしね」

「それは小学生のに付き合ってるだけで全然。基本的にハンドリングとかシュート打つだけだから」

「まあ、これで隼人に出来ないことはないって証明されたね」

「泊まるホテルの近くにボルダリングがあったぞ。あれをやってみろ」

「拓也よく知ってるねー。ボルダリングかぁ。ちなみに隼人、やったことないよね」

「ないね」

「よし、これもう少しやったら行くか」

「お、拓也寒さ気にならなくなったねー。さっきまで寒いって煩かったのにー」

「今でも寒い」

「そうだよ。やっぱり騙された。寒いのは寒い」

「まーまー。よーし、行くよー!!」


 そして長いことスキーをしてからボルダリングができる施設に移動した。


「えっと……ここをこうして」

「隼人ー右右ー!!」

「いや、左だ」

「智也、引っかけしないで」

「ちぇー!!」


 上までたどり着いてから下に降りて智也の頭を小突く。


「でたらめな指示で出来ないものを作っても意味ないから」

「指示なくてもスムーズにやってたけどな」

「ちぇー……これもだめだったかー。あ!!」

「なに?」

「ガラス細工とかそういう系は!?」

「確かにそういう方面はやってないな」

「やったことはないけど……」

「調べてみよう。多分このあたりにガラス工房があったはずだよ!!」

「んじゃ、明日そこに行くか」

「そうだね、良いよ」


 ということで明日はガラス工房に行くことになった。今日泊まるホテルに着く。


「椿旅行に来てないかなー」

「来てるかもよ!!温泉早く入りに行こう!!」

「一応言うが温泉は男女別だからな」

「拓也は変態だね、そんなのわかってるよ」

「いや、隼人に言われたくない」


 普段お風呂に入る時浸からないけど温泉は結構好きだ。


「はあ……日々の疲れが癒されていく」

「また両親か?」


 温泉に浸かりながら俺は最近の親父と母さんのそわそわ加減に対する愚痴を言う。


「子離れになってるのかなー……。母さんが寂しがっても会いに行ってあげないんだからねって言いながらまた下着買ってきた」

「この年で親が下着買ってくるなんて……」

「あり得ないでしょ。寂しがるはずないでしょって言いながら親父の部屋に放り投げてくんだけどいつの間にか俺の部屋に置いてあるんだよ」

「困ったお母さんだねぇ」

「困ったどころじゃないよ。それに食べるのに困ることがないようにって忘れちゃわないようにってレシピを書いたノートがあるんだけどさ」

「それはありがたいんじゃないか?隼人忘れるだろ」

「必要なことは忘れないよ。勉強とかと同じ。でもそのノートが問題なんだよ。余白にこれは俺がおかわりする大好きな料理だとかマラソン大会の前の日はいつもこれを食べていた勝負料理なのとかコメントが多いんだよ。そのくせ肝心のレシピが抽象的すぎて読んでもヒントくらいにしかならないなって感じ」

「良いじゃん。勝負の前にそれ作れば。それなんなの?」

「カツ丼とか?」

「トンカツとか母さんできないから。普通の煮込みハンバーグ。別に勝負する日だけ食べてたわけじゃないんだよ」

「へー美味しそう。それも作れるようになったのか?」

「うん、まあね」


 そしていつものように母さんの愚痴を話し頃合いで温泉から出た。

 翌日ガラス工房に行ってオレンジ色のやけに凝ったペンダントを作った。もちろん自分用ではない。母さんの暴走を止めるためだ。


「じゃ、また卒業式で会うだろうけど元気でねー」

「連絡するからな」

「うん、毎日椿のことを話すよ」

「やめてくれ」

「せめて週1にしてよー」

「わかったよ。じゃあね」


 こうして一泊二日の卒業旅行が終わり慌ただしくその翌日に相澤の結婚祝いをする。


「美結の結婚を祝してー!!」

「佐々木先輩の旅立ちを祝して!!」

「「「かんぱーい!!」」」

「……なんで俺まで?」


 結婚祝いに来たのに乾杯の音頭を後輩にさせたらおかしなことになった。


「まあ良いじゃん。そんなに離れた場所に行くの隼人だけなんだから。あと相澤」

「相澤のドイツとは比べ物にならないけどね」


 どうなるかわからなかったけど参加することができた誠司とグラスを合わせる。


「なんか久しぶりなのに久しぶりな感じしないね」

「隼人がちょくちょく坂下さんがなんだって電話してくるからでしょ」

「そっか、それもそうだね」

「けど相澤が一番に結婚するなんて」

「すごいね。彼氏が仕事でドイツに行かないといけなくなったから別れるって言い出したから結婚してついてくことにしたって」

「さすが男前な相澤だ」

「なによー!!こんなに尽くしてるのに男前とはー!!」

「酔うの早くない?」


 誠司と話していたら相澤が絡んできた。


「佐々木も坂下さんのことを追いかけるんだってね。もう、そんなことになってるなんて知らなかった!!気を利かせて坂下さんのこと話さないでいたのに!!」

「ごめんね。ねえ、誠司、こういうのを絡み酒って言うんだよね」

「そう「佐々木せんぱーい!!大怪我したって聞きましたけど大丈夫ですか!?ここですか!?こっちですか!?」」

「もー今度はこっちから絡まれるー……」


 後輩の子たちに頭とか腕とかをペタペタと触られてやんわり払う。


「すごい激震でしたよ。噂で先輩が心肺停止だとか」

「近所の奥さんたちが先輩のお母さんが沈みこんでるって。普段が明るくて評判のお母さんですからね」

「なんてこった。人騒がせでごめんね」

「坂下さん探してる時だったんだってね!!人騒がせは佐々木でしょー!!」

「もー相澤離れて!!」


 厄介な酔い方だな、と思いながら相澤を女子たちに引き渡す。


「でも私たちも心配しましたー!!本当に平気なんですか?」

「平気だよ。バスケもできるし一昨日もスキーしたりボルダリングも」

「へー!!やっぱり先輩ってなんでもできるんですね!!」


 これはまずい。みんなペースが早い。……俺もさっさと酔ってしまおう。




「だから若菜が酷いんだよ!!開き直って椿と海に行った話とか椿と旅行に行ったとか、今まで話してこなかったくせに!!運命なのに見つからないなんて運命でもなんでもない、なにが運命の女の子を見つけただってー!!椿の水着姿見たいー!!」

「……結局水着姿か」

「わかります先輩!!好きな子の水着は最高です!!」

「お前今彼女いないだろ!!」

「なんだかんだ隼人が一番厄介な気がする」

「ねー聞いてるせいじー!!」

「聞いてるよー」

「椿ーつーばーきーあと少しでそばに行けるー」

「変な歌歌いだしたぞ」

「先輩面白いです!!」

「先輩ヤバいっす!!」





 気付いたら家にいて不思議に思いながら携帯を見ると誠司からもうお前と飲みたくないとメッセージが来ていた。変なの、と思いながらまたそのうち飲もうねと返した。



 そして今年のクリスマスはおそらく家族全員で集まるのは最後だろうと思って昼間は親父と母さんと3人で出かけた。夜に9人でパーティーをすることになってご飯を食べているとインターホンが鳴った。

 玄関に行った母さんが戻ってきた。


「ガラス工房だってー。なにかしら?」

「ブッ!!」

「もー隼人汚い!!最低!!」

「隼人大丈夫?」

「これ使いなー」


 思わず飲んでいたビールを吹き出した俺は優菜さんに怒られ浩一さんに背中を擦られ一輝さんにティッシュを渡される。


「まずいまずい、なんてタイミングの悪い……」

「どうしたのよ、隼人」

「彩華さん今すぐ母さんを止めて」

「まー可愛いペンダント!!」

「ひー……なにもクリスマスに届かなくても良いのに」


 その包みを開けた母さんが手にしているのは俺が卒業旅行に行った時に母さんの暴走を止めるために作ったペンダント。俺の名前でも誰の名前でも受け取るのは母さんだろうと思って母さんの名前で受取人を書いていたから開けるのは良い。だけどなにもクリスマスに届かなくても良いじゃないか。もっと他の人とかこの日に届いてほしいプレゼントがあったはずなのに。これでは素敵なサプライズクリスマスプレゼントになってしまうじゃないか。俺は頭をかかえる。


「ん、これって隼人がこの前行った場所だね」

「あら、本当ね琉依さん」

「ってことは隼人ってことね」

「えー!!隼人がクリスマスプレゼントー!?嬉しいー!!」

「もう良いや、母さんにあげようと思ったけどこんなつもり「う、嬉じい……ごんな……かわいい……」だ、だからそんなに大げさにしないで」


 母さんは号泣してしまってお手上げだ。


「むー!!隼人のくせに!!」

「だからそんなんじゃないんだって」


 若菜がテーブルをドンドン叩く。ため息をつきながら肩を落としていると肩に手を置かれる。


「だいたいわかるけどなにも言わなくて良いんじゃない?美香さんもみんなも嬉しそうだし」

「昴……やっぱりお前は俺の一番の理解者だ」


 昴の言葉に俺はもうみんなからの言葉を受け止めるだけにした。


「隼人のくせに粋なことするわねー」

「優菜、酷いわよ」

「ねー可愛いよねー!!良いでしょー!!」

「素敵ね、美香にぴったり」


 母さんは優菜さんと彩華さんにペンダントを見せびらかす。


「手作りだよね、さすが隼人」

「美香ちゃん僕にも見せてーわー本当職人さんが作ったみたいだねー」


 浩一さんと一輝さんが興味深く眺める。そんな中親父は……写真を撮りまくっていた、しかも泣きながら。


「隼人良い子可愛い美香可愛いペンダント可愛い……」

「親父……意味不明」


 そうやって良く言えば賑やかな騒がしいクリスマスを過ごし年末を過ごしそして年が明けた。





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