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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
87/136

間宮さんに感謝を



「間宮さんどうぞ」

「なんで花束?それになんでそんなに嬉しそうなんだ?」


 俺は居酒屋で間宮さんに小さな花束を差し出している。1月のある日、大学の空き時間に偶然間宮さんに会った。授業もなく地元に帰ったはずなのにと思っていたら用事があったついでに学校に寄ってみたそうだからついでのついでで最後に飲みましょうよと言うことになった。

 間宮さんはいつも行っていた居酒屋で先に飲んでるというから学校の近くにある花屋で花束を買ってから居酒屋に来た。


「俺こういう風に家族以外に花束渡すの初めてで」

「そうかい。そりゃ良かったな」

「それゼラニウムです。黄色のゼラニウムの花言葉わかりますか?」

「んー……聞いたことあったよな。確か"あなたの愛を信じない"だ。……別に愛しちゃいないが」

「なんでよりにもよってそれなんですか。それは赤いゼラニウムです」


 顔をひきつらせる間宮さんに俺は苦笑いする。


「黄色のゼラニウムは"予期せぬ出会い"です。間宮さんに出会わなかったら俺の時間は止まったままでした。今俺がこうしているのも間宮さんのおかげです。ありがとうございました」

「お、おう……気持ち悪いな」

「なんでですか、人がせっかく感謝してるのに」

「いや、感謝してないだろ。俺はお前に面倒しかかけられてない」

「え、そんなことないですよ」

「主に酔っ払った時にな。あと酔っ払ってなくてもカミーリアちゃんの話の時」

「カミーリアは「ああ良いって話し出さなくて!!」えー……いつでもいつまででも話せるんですけど」

「わかったよ、あとでな。それよりスキーに行かなかったんだってな」

「そうなんです。智也がオーストラリアにいる彼女と別れの危機だって言うので冬休みずっとオーストラリアに行ってて。それならもう4年で行けば良いかなってなって」

「で、別れたのか?」

「嬉しそうに聞かないでくださいよ、別れてないです。でも落ち込んで大変だったんですからね」

「へぇー」


 俺は少し前の智也を思い出す。携帯を見てはため息をつき窓の外から遠くを見つめてはため息をつき、いつもの明るさがなくて困った。だけど冬休みに思い切って会いに行ったらなんやかんやして元通りになって帰ってきた。


「お前そのなんやかんやの部分ちゃんと覚えてないだろ」

「……一応覚えてますよ。遠距離あるあるだって拓也が言ってました」

「遠距離によくあることかー……そうかそうか。で、覚えてないんだな?」

「落ち込んでる時はどうしようって思いましたけどもう解決したことですから」

「まったく……お前らしいな。ああ、そうそう、この前生まれたっていう知り合いの赤ちゃんはどうした?」

「俺があげたブランケットにくるまれてる美織すごく可愛いんですよ。見てくださいよ」


 あのあと結局竜二さんに話を聞いてもらい、怖いからついてきてほしいと言ったんだけど年内は時間が取れないと言われてしまった。代わりに贈り物のアドバイスをもらったから妥協して親父についてきてと言ったら大喜びでついてきて母さんもなぜかついてきてしまった。でもなんだかんだで母さんは母さんだし沙織さんの好みも知ってるからわりと役に立った。

 無事に何事もなく買ってこれたピンク色のブランケットにくるまれた美織の写真を間宮さんに見せる。


「おー可愛いな」

「ですよねー。みおりーって呼んだりみおーって呼ぶとあーとかうーとか返事するんですよ」

「すっかりベタ惚れしてるな」

「もちろんカミーリアにもベタ惚れ「待て待て!!」なんですかー?」

「お前それ何杯めだ?」

「え?んーそういえば何杯目ですかね?5杯めくらいですかね」


 話してる途中に次から次へと注文していたからぼんやりしている。


「4、5……しまった、またストップかけそびれた。それ8杯めだわ」

「えー?そんなにでしたっけ?それより聞いてくださいよー!!俺気付いたんです!!ずっと前に昴からカミーリアが女子寮とか女性専用マンションに住んでるかもって聞いてたんですけど重要なことに気付いたんですよ!!昴は若菜とカミーリアの家に遊びに行ってるんです!!女子寮とか女性専用マンションに男は入れないってネットに書いてあったんです!!だからカミーリアは普通のアパートかマンションに住んでるんです!!隣が男だったらどうしよう!!」

「お、おお……大丈夫じゃねえか?俺の友達が住んでるマンションの隣女の子だけど特になにも接点ないしめったに会わないってよ」

「危ない男だったらそうはなりませんよ!!どうしたら良いんですか!?」

「だからいつも言ってるけどどうにもできないだろって。どこにいるかもどういう状態なのかもわからないんだから」

「それはそうなんですけどー!!わからないからどうしようってなるんですよー!!」

「あーはいはい。困ったな。とりあえず落ち着けって」

「教えてくださいよー!!」


 それからしばらく話していた。気が付くと俺は間宮さんとどうでも良いような話をしていた。それに間宮さんが得意な大学の先生たちの物真似も。そうやっていつもと変わらない時間を過ごした。

 そして21時近くになり、そろそろ帰ろうということになって帰り、駅につく。


「途中やっぱり厄介だったけど俺も佐々木と話してると面白いし結構楽しかった」

「厄介ってなんでですか?」

「いつか自覚しろ。……俺の地元に来ることあったら連絡しろよ」

「はい」

「じゃあな」

「はい、本当にありがとうございました」

「おう」


 また明日にでも空き時間とかに会うんじゃないかというくらい普段と全然変わらないし素っ気ないけど俺たちは自分の乗るホームへと別れた。

 そして電車に乗ってふと思い付く。……間宮さんの連絡先知らない。いつも偶然図書室で会ったりラウンジで会ったりサークルのあとに流れで飲みに行ったり、連絡を取るということがなかったから聞いていなかった。……まあ良いか。間宮さんならいつかまた偶然会いそうな気がする。渡した花束も予期せぬ出会いだし。

 そう思った俺は頭を間宮さんから椿のことに切り替える。あと3ヶ月で俺は大学4年、そして22才になる。椿と付き合い別れた高校3年の時から何度も季節が巡った。あの俺のイメージを改めて頭に思い浮かべてみる。椿のことを想うことで俺の周りは照らされて辺りを見渡せるようになった。椿の存在が俺を暗闇から抜け出させてくれる。

 椿と出会った頃昴が言った。自分を抑えないで優しくしたいと思ったり大切にしたいと思ったりするのは椿だけだって。今の俺には椿だけじゃなくてメアリーや美織といった可愛いと思う子たちがいるし大切な人たちがたくさんいる。だけどやっぱりみんなと椿は違う。メアリーや美織はただただ可愛がりたいと思うし2人に好きな人ができてもおかしな男じゃなければ応援したいと思うけど椿に彼氏ができてましてや結婚して子供も生まれるなんて想像しただけで頭が混乱してどうにも自分で抑えられない。とっくの昔に別れたのに椿に誰とも付き合わないでほしいし好きな人もできてほしくないし子供なんて……いや、椿の子供は可愛いだろうから俺との子供なら何人でもほしい……ってそういうことじゃない。とにかく子供ができるってことはそういうことをしているわけで。駄目だ駄目だ。別れてるのに、こんなことを考える資格もないのに椿には俺以外の男を誰も見てほしくないし知ってほしくない。俺に椿しかいないように椿にも俺だけをみてほしい。俺は椿だけのものだから椿も俺だけのものになってほしい。

 と、思うけど昴に俺は椿のことになると本気のヤバい思考になると言われた。そう、椿中毒だとも言われた。なんだか幸せになれそうな良い響きだと言ったら引かれたけど。とにかく俺は危ない人らしい。でもそれだけ愛してるんだ。椿の今がわからない以上不安で仕方ないけどだからこそ早く、1日でも早く椿に会いたい。





 ただひたすらに、照らされた道を椿の姿を探しながら歩き、そしてまた季節が変わった。




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