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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
77/136

間宮さんと



 俺は大学3年になった。サークルは4年生があまり来なくなるから3年生が主導する。これまで部長は向かないからと避けていてやらなかったけど智也も拓也も留学に行ってしまって押し付ける人がいないから俺が部長を任されてしまった。といっても特に仕切ってやらないといけないということはないから気楽なものだ。そのサークルは月曜日と木曜日、塾講師のバイトは土日だけ。家庭教師のバイトは水曜日の1度に変わったけどここが一番これまでと違うところだ。彰くんのお姉さんが今年高校3年生で有名私立大学を志望校にしているから一緒に教えることになった。イレギュラーなことで川口さんに1回相談したら上手くやっていけると思うなら引き受けちゃえば良いよと言われたから引き受けることにした。回数は2回のままの方が良いんじゃないかと思ったけどお姉さんの真衣さんは有名私立大学を受けるだけあって優秀で弟の彰くんを見ている途中で指導してほしいと言われた。昔から彰くんの面倒を見ていたから彰くんが騒いでいる方が落ち着くそうだ。そう、真衣さんは少し変わった女の子なんだ。妙に大人びているというか、俺と彰くんがお菓子を食べていて真衣さんも食べようよと言うとお菓子を食べる時間と健康についての関係を考察したり少し冗談を言うとふざけてないで教えてくださいと返される。彰くんと分けて教えようかと聞くと自分も弟も親も気にしませんが先生の彼女さんにあらぬ誤解を与えたくないのでこのままで良いですと言われてしまう。椿とはまだ付き合っていないから彼女はいないよと返したけど真衣さんのこのピシャリと返される感じが面白い。

 そして火曜日と金曜日になにもないわけで3年になって受けないといけない授業も減ったから火曜日は午前中で終わり、金曜日はなしという素晴らしいスケジュールになった。金曜日は朝から夜まで椿を探し放題だ。意気揚々と金曜日に出掛けようとしたら母さんにお昼にと言ってお弁当を渡されるようになった。初めて渡された時公園で食べたら椿とピクニックみたいで良いかもしれないと思ってありがとうと言ったら抱きしめられた。酷い。



 今日はサークルのある木曜日だ。あまり来ないというのが当てはまらずにしょっちゅう来る間宮さんとサークル終わりに居酒屋に来ている。間宮さんとは図書室で会ったりラウンジで会ったりこうやってサークル終わりに飲みに来たりと結構会ってる。


「そういやお前図書室に来るくせに本あんまり読まないよな」

「最近は月に1冊くらいは親父の友達に借りて読んでます。俺は図書室で下調べをしているんです。けど間宮さんがそんなに本が好きだなんて意外でした」

「ついに俺に本は似合わないと思ってるって白状したな」

「えーいやいや、似合わないとは思ってないですって」

「俺は本が似合う文系少年なんだ」

「少年って年じゃないですよ」

「なんでも良いんだよ。静かに本を読んでる姿は絵になるから高校の時なんて放課後俺を見に女子たちが殺到してたんだぞ」

「えー本当ですかー?またでたらめじゃないんですか?」

「そんなことないって。声もかけられるんだぞ。ちゃんと戸締まり忘れないでねって」

「それ施錠確認しに来た先生じゃないですか。間宮さん図書委員だったんじゃないですか?」

「お、正解。すごいな。褒美に唐揚げとビールを追加だ。すみませーん!!」

「……なんだかなぁ」


 店員さんに追加注文をしている間宮さんを頬杖をつきながら見る。


「ん?なんだ?」

「いえ、間宮さんは不思議な人だなと思って。第一印象は最悪だったのに今では週に2回は会って喋ってて」

「最悪って俺は普通のことしか言ってないけどな」

「いえ、最低でした。なんでか忘れちゃいましたけどムカムカするんで」

「お前なんかわからないけどムカつくで人に暴力振るわないようにな」

「俺はそんな野蛮な人間じゃないです。いつでもどこでも飛びかかってくる母親とは違います」

「そうかいそうかい」

「母さんもカミーリアを見習ってもっとおしとやかになってくれれば良いのに。カミーリアは花言葉の通りすごく魅力的な女の子なんですよ」

「控えめな素晴らしさとか謙虚な美徳なんだろ」

「そうです。よく覚えてますね」

「そりゃ酔ってる時に何度も花言葉を教えられてれば覚えるさ。他の花の花言葉も」

「これで間宮さんも花言葉をマスターしましたね。いつまでもフラフラしてないでちゃんとした彼女を作って花をプレゼントしたらどうですか?」

「いやー大学時代はまだ遊んでたいね、俺は」

「まったく、そういうところが最低なんです」

「お前もそんな純情なことやってないで遊べば良いのに。いつでも連れていってやるぞ?」

「遠慮します。俺はカミーリア以外興味ないです」

「変なやつだなー」

「なんとでも言ってください。この話で間宮さんと俺は相容れないですから」

「そうだな」

「それにしても、間宮さんは就活しなくて良いんですか?してるように見えないですけど」

「してるさ。あてがちゃんとあるんだから」

「あて?」

「卒業したら地元に戻るからな」

「ああ、そういうことですか?親のコネですね。別に否定はしないです。昴も……というか会社の方が昴をどうにかしてでも入れようとしてますけど。悪いことでもないですからね」

「ちげえよ。親の会社の子会社とか孫会社とかになにも言わずに紛れ込むんだよ。んで実力でのしあがるんだ」

「ふーん……それバレるんじゃないですか?」

「そん時はそん時だ」

「まったく関係ない会社にすれば良いんじゃ……」

「それじゃ親父の鼻を明かせないだろ」

「変なの」

「なんとでも言え。とにかく俺は親父に負けたくないんだ」

「ふーん……反発精神ですか。竜二さんみたいなものですかね」

「誰だよ竜二さんって」

「親父の友達です。貿易会社の社長「おい待て!!」……なんです?」

「それって神崎社長のことか?」

「……確かそんな感じの名字だった気がしますけど」

「この人だろこの人!!」


 間宮さんは携帯を操作してつき出してきた。画面に竜二さんが写っている。


「そうです、竜二さん。そうそう、思い出しました。竜二さん名字で呼ばれるの嫌いだって言ってたので覚えなくて良いやって思って」

「お前こんな大物と知り合いなのか?すげえな!!」

「竜二さんは普通の優しい人ですよ」

「いやいやすげえ!!俺の地元じゃ昔から有名な経営者だぞ!!」

「あれ?間宮さんの地元ってそっちの方なんですか?」

「神崎社長は都内の一等地に住んでいそうだからちげえけどまあ近いといえば近い」

「へえ、そうだったんですね」


 竜二さんが住んでる場所は知ってるけど有名な人の自宅をペラペラと喋るのは良くないだろうと黙っておくことにした。

 間宮さんはまだすげえすげえと言っている。


「もう、そんなに竜二さんが好きだったんですか?」

「いや、憧れるだろ。なんでそんなに普通なんだよ逆に」

「いやいや、本当に普通の人なんですよ。覚えてなかったんですけど親父の大学時代からの友達で小さい時から遊びに来てくれてたんです」

「なんて羨ましい……。ふん、いつか神崎社長みたいなビッグな男になるんだ」

「間宮さんは170センチくらいですよね。竜二さんは190センチなので無理ですよ」

「身長の話じゃねえよ!!馬鹿!!」

「……そうなんですか?」

「もう良いや。お前も飲む?」

「じゃあ日本酒にします」


 日本酒を飲んで一息つくと聞こうと思っていたことを思い出す。


「そうだ、これを聞こうと思っていたんでした」

「なんだ?またカミーリアちゃんの話か?」

「それもあとでしますけど、それじゃないんです。サークルの飲み会が再来週あるんですけど、お店の予約をしないといけなくて、いつもどうやって決めて予約してたのかなって」

「んなもん他のやつにやっとけっつってやらせろよ。部長だろ」

「そんな命令みたいなのできません。上下関係とか元々あってないようなものじゃないですか。それに俺は良い店知ってそうって言われたらどうにかしなきゃって思っちゃって」

「なんで見栄を張るかね」

「そういうわけじゃないですけど……。それにその飲み会の当日2年の松本くんの誕生日なんだそうで、ちょっとお祝いしたいじゃないですか。どこか良いとこないですか?」

「調べろよ、そんなもの」

「どうやって調べれば良いんですか?」

「飲み会、サークル仲間、誕生日とかいろいろあんだろ。お前普段どうしてるんだよ」

「普段……智也とかとは行き当たりばったりだし親父の友達と飲む時は予約していてくれるので俺はなにも」

「……そうかい。そりゃカミーリアちゃんと再会しても店選びに苦労しそうだな」

「ええ……そうですか?どうしたら良いんですか?」


 それは由々しき事態だ。間宮さんに携帯で検索サイトを見せてもらって口コミとかをチェックしたりするとか詳しく話を聞く。


「良かった。これでカミーリアとのデートは完璧です」

「松本のことどうしたよ」

「は……忘れてました。えっと、あ、ここで良いですね」

「雑だな……ま、いっか」

「あ、次は他の日本酒にしようかな……間宮さんも飲みます?」


 そのあとも飲みながら話続ける。


「で、金曜日に探し放題で遠くまで行けるようになったのでいろんな大学に潜入してみたんです。そしたら捕まる捕まる。もう顔を隠そうってサングラスにマスクで行ってみたら変質者だと思われました」

「そうかそうか。それは大変だったな」

「もう!!本当に酷いんですからね!!落ち着いてでまかせして成功した時は良いんですけどバレる時もあるんです。そしたらラウンジに引っ張っていかれて。こんなことしてる場合じゃないのにと思いながら話をしていないといけないんです」

「なあ、そろそろソフトドリンクにしてみないか?」

「あ、駄目です!!」


 飲んでいたハイボールの入ったグラスを間宮さんに取られそうになって慌てて奪い返す。


「取らないでくださいー。カミーリアは俺のなんです」

「いや、ハイボールの話だろ」

「俺のー……」

「まったくもう、なんでそこですり変わるんだよ。……酔っぱらいに言っても無駄か」

「こうしてる間にもカミーリアが誰かとイチャイチャしてたらどうしよう……どうしたら良いんですか!!」

「知らねえよ」

「酷い酷い。冷たい。みんな俺に冷たい。昨日も優菜さんに意地悪されました」

「へーへー。もうそろそろ帰るか」

「あー!!おいてかないでくださいよー!!まだ付き合ってください!!」

「わかったから服を引っ張るな」

「もう俺の周りは敵だらけです。こうなったら間宮さんが憧れてる竜二さんに電話します」

「仕事してるか休んでるんじゃないか?」

「平気です」


 俺は竜二さんに電話をかける。すると2コール目で出てくれた。


「もしもしー」

『隼人くんどうしたの?』

「今間宮さんと飲んでるんですけどいじめられてるんです」

『大学の先輩だよね』

「そうですー。全然話をちゃんと聞いてくれないんです」

『そっかそっか』

「俺を置き去りにして帰ろうとしてます酷いです」

『困っちゃうね』

「そうなんですー。間宮さん竜二さんに憧れてるそうです。だから竜二さん間宮さんを懲らしめてください」

『うん、良いよ』


 俺は携帯を困惑してる間宮さんに手渡す。


「あ、えっと、もしもし……あ、そうです初めまして。……ええ、はい……はい……」


 すぐに戻ってきた携帯を耳に当てる。


「ちゃんと怒りましたかー?」

『うん、ばっちり隼人くんのことをよろしくねって言ったよ。琉依が隼人くんが帰ってこないから迎えにいこうかなってさっき言ってたからほどほどにして帰りなね』

「え……親父が?それは困ります。すぐ帰ります、今すぐ帰ります」

『うん、じゃあね』


 電話を切って俺は間宮さんを急かす。


「なにやってるんですか、間宮さん。早く帰りますよ」

「お前毎回毎回……ムカつくな」

「ほら、早くしてください」

「わかったよ」






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