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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
72/136

中華街



 12月7日、俺は智也と拓也とバスに乗って中華街に向かっている。8日に行こうと思っていたけど電車は料金が高いからと言うことになって金曜日の7日の授業が終わってから行くことにした。

 それを昨日の夜に母さんと親父に言ったら文句を言われて今日の朝もぐちぐち言われた。まったく、修学旅行でもなんでも泊まり……深夜バスは泊まりと言うのかわからないけど、とにかくそういうのなんていくらでもしてきたというのに遠いけど大丈夫かだの友達とはぐれないようにねだの煩い煩い。もう子供じゃないんだよ、と言ってどうにか撒いて家を出てきた。


「はあ……」

「なに?まだメッセージきてるのー?」

「しつこい」

「大変だな」


 家を出てから何度も親父と母さんからなにかあったら連絡してとか忘れ物ないかとかメッセージがずっと送られてくる。


「日曜の早朝には帰るのにね」

「本当だよ。日曜までバイト休むのは申し訳ないからすぐ帰るっていうのに、心配だなーって煩い」

「お前も親に伝えるの遅すぎだけどな」

「そうかな?けどそのあと昨日の深夜に昴にお土産なにが良いって聞いたら昴は普通だったよ」

「隼人の家族って不思議だから僕たちの価値観じゃわからないなー」

「ほら、親父の同僚からも苦情が来るんだ」


 昼間に昇さんから『琉依が煩いからどうにかしてくれ』と、木村さんからは『仕事しない上に他のやつらの邪魔するんだけどどうにかして』と、メッセージが来てどうにもできないとしか言いようがなかった。小林さんは直接被害を受けないで避けてるみたいで『楽しんできてね』とメッセージが来た。


「で、昴くんからなにを買ってきてほしいって言われてるの?隼人が忘れないように僕たちが覚えておいてあげるよ」

「大丈夫。忘れないように携帯にメモが書いてあるから。親父と母さんが騒いでるだけで他は無遠慮にあれ買ってこいこれを買ってこいって煩いんだ」

「おつかいみたいだね」

「え、そう?」


 携帯のメモを見せると智也に言われる。


「これを手に入れるために結構な時間がかかりそうだな。これこの店じゃないといけないのか?」

「いや、そんなにちゃんと買わなくて良いよ。それ優菜さんの嫌がらせだから」


 どこそこの肉まんとか店の名前じゃなくて店の前になんの置物がある所の肉まんだとか偶然テレビか雑誌かで見た情報を思い付くままに言ってるんだ。


「その辺りは適当で良いんだよ。それより昼ご飯のお店は決まってるからね」

「わかってるって」


 あのあと改めて村岡さんがこのお店ですとお店のサイトを送ってくれた。そのお店には必ず行くんだ。


「椿いるかなー……」

「お前会話に必ず坂下さんが入るな」

「だって椿を探しに行くんでしょ」

「それは……まあ、良いや」


 そのあと少し話して周りの人が寝はじめているからと俺たちも寝ることにした。俺は音楽を聞きながら椿に会えるかな、会えた時になにを言おうと考える。そうしているといつの間にか眠っていた。





 目が覚めると9時過ぎ。智也と拓也を起こしてバスが停まると降りた。


「おー!!着いたー!!」


 さっきまで寝ていたとは思えないほどテンションの高い智也に呆れていると拓也がガイドブックを広げる。


「昨日調べたんだけど言ってた店ってここじゃないかと思うんだ」

「え、調べてくれたの?」

「眠れなかったからな。智也のいびきが酷くて」

「嘘だー!!」


 智也が騒ぐのを横目に拓也の手にあるガイドブックを覗きこむ。


「ここ。で、昼に行く店がここ。今いるのはこっちだからこう歩いていけば両方行ける」

「へえー。あ、ここが彩華さんが母さんも好きだから買ってきてって言ってたマンゴープリンが売ってる店だよ。離れてるね」

「これくらい良いだろ。よし、じゃ行くか」

「しゅっぱーつ!!」

「智也今の聞いてた?そっちじゃないよ」


 歩き始めると智也がまったく逆の方向に歩き出すから肩を掴んで引き止める。


「馬鹿智也、こっちだ」

「はーい。あ、見てみて美味しそう!!」

「あっ智也!!……行っちゃった」


 少し先の店に走っていってしまった智也に拓也と2人でまたため息をつく。


「ま、はしゃぐ気持ちはわかるけどな」

「子供みたいだね」

「仕方ねえよ。精神年齢小6だから」

「小学6年でもあんなじゃなかったけど」

「そりゃ隼人はな」

「いや、昴もしっかりしてたよ。本当に良くできたやつなんだよ」

「わかったわかった。お前坂下さんの次に昴の話になるよな」

「えーそう?」


 そう話をしながら智也の所に行くと肉まんを受けとる。


「美味しい!!」

「うん、美味しい」

「だな」


 そのあとも智也の直感でお店を巡って途中で2人も頼まれてるお土産の店があると言うから寄っていたり、歩きながら椿を探したり、そうしていると優菜さんが見たであろう店があったからサクッと買った。


「椿いないなー」

「もっと探したらいるかもよー」

「また適当なことを……。とりあえずその店入るか。時間平気か?」

「うん、ちょうど良いくらいだよ」


 俺たちは村岡さんが紹介してくれたお店に入った。入ってみると高そうなシャンデリアが目に入って一瞬動揺したけどそうでもないとすぐに気が付いた。家族連れも友達同士でも気軽に入れそうなお店だ。俺が名前を言うとすぐに席に案内された。


「お前の知り合いだからすげえ店かと思ったけどそうでもなかったな」

「本当だね。見て、値段も手頃」

「本当だね。俺が一番安心してるよ」

「高かったら隼人に奢らせようと思ってたけど良かった」

「じゃあねー麻婆豆腐とー小籠包とー」


 注文した料理が回るテーブルるの上に乗る。


「これ家で手巻き寿司やるみたいだよね」

「家でなんてやるの?」


 高級寿司店で規格外のどんちゃん騒ぎをしたことはあるけど家では彩華さんのとこでもやらない。


「ただ具材乗せて手巻き寿司するだけだよ。みんなやるよ」

「そうだな」

「そうなんだ」


 やっぱりうちはおかしい。俺は十分庶民的だと思うのに周りがおかしい。これは知らないといけない普通だ。

 料理を小皿に取って食べながらご飯は酢飯なんだよね、とか魚は捌くのか刺身を買ってくるのかとか、いろいろ聞く。


「なるほどー。これでいつでも椿と家で手巻き寿司ができるよ」

「そうだねー」

「まず見つけてから考えろよ……」

「あ、そういえばあれはどうなったの?カリフォルニア」

「おばあさんの弟の息子だっけ?その人と連絡とれたのか?」

「あーうん。とれたはとれたけど」


 この前話したあと親父がそのニックさんという人に連絡してくれるのかと思ったら連絡先を知らないと言い、じゃあどうするのかと聞いたらおばあちゃんに聞くけどと平然と返された。俺はこれで無理な気がしたんだ。案の定おばあちゃんに連絡をしたら自分も行くと言いだし、そしたらやっぱり親父も母さんも行くと言いこれでは堂々巡りだと思って一旦落ち着いてからまた説得を試みた……けど……。


「駄目だった。自分の生まれた故郷に帰るのに文句あるのかって」

「そうなんだー。まあ、良いじゃん、ただの旅行なんだし」

「けどどんどん予定が立ってくんだよ。コンサートとかミュージカルとか。しかも関さんもお店に来てって言ってただけなのにファッションショーも見たら楽しいと思うからチケット取ったって」

「へー大変そうだな」

「拓也も巻き込んでやる」

「嫌だよ」


 食べ終わったしそんなに長居するのも駄目だろうと席を立ってレジに行くと明らかにホールにいた人じゃないそもそも格好が違う中国人がいた。


「あ、もしかして村岡さんの?」

「はい。お口に合いましたか?」


 その人が村岡さんいわく村岡さんの舎弟。流暢な日本語で話す物腰しの柔らかそうな人だ。


「とても美味しかったです。ごちそうさまでした」

「良かったです。またこちらに来ることがあればぜひ来てください」

「え、えっとあんまり機会がないと思いますけど来たら……そうだ、知り合いみんなに紹介しておきますよ」

「ありがとうございます」


 最近会った人の中で一番まともそうなその人に好感を持てた。けど本当にこっちまで来ることなんてあまりないだろうし、みんなに紹介しよう。竜二さんなんてわりと近くに住んでるんだから俺より断然来やすいだろう。

 連絡先を教えてもらってお店を出た俺たちは店の前で次はどうしようかと話し合う。


「つばきー遅い!!」


 瞬間的に心臓の鼓動が早くなりその声が聞こえた方向を向く。


「あの子?」


 智也に聞かれ首を横に振る。


「違う」


 女の子たち4人グループがいたけどその中に椿はいなかった。


「ま、同じ名前の人なんてたくさんいるだろ」

「残念だね」

「……うん」


 バクバクと早まっていた鼓動が落ち着くと同時に虚しさが残る。


「ほら、あの店にいるかもよ。入ってみようよ」


 智也が指差すそばの店に3人で入ると入り口の近くにあったアクセサリーショップに入る。


「天然石だって。女子が好きそうだな」

「奥まで行ってみようよ」

「ん……あ、ちょっと待って」


 元気付けようとしてくれてるのがわかって2人のあとに続こうと思ったけどふと目についたネックレスの前で立ち止まる。


「坂下さんそういうの好き?」

「ううん。アクセサリーはあんまりつけなかった。けど若菜も高校卒業してから余計に洒落てるし椿もこういうのつけてるかも」

「そうかもね」

「この小ぶりのやつをつけるんじゃないか?イメージだけど」

「そうだね、華奢なのが好きだと思う」

「いつもの妄想して元気出しなよ。これをつけてる坂下さんとデートだよ」


 緑色の天然石が1つついたシンプルなネックレスをつけた椿と中華街デート。別の味のを買ってお互いに食べ合うんだ。


「大丈夫そうだな」

「だねー」

「パンダを探すよ」

「え?」

「なにしてるの?早く早く!!」


 中国といえばパンダ。お店を出ていたるところにいるパンダを探した。


「パンダ探してどうするのかと思ったら……」

「なにもしないんだね」

「してるよ。パンダ可愛い」


 パンダのぬいぐるみの頭をポンポンとしながら俺は答える。


「パンダをただ愛でてるだけだな」

「まあ楽しそうだからいっか」


 そのあともパンダを求めながら椿を探しお土産も買い、時間になって帰りのバスに乗り込んだ。




 家につくとまだ明け方なのに親父と母さんが起きていて驚く。


「た、ただいま」

「おかえりー!!」

「おかえり」


 抱きついてこようとする母さんをかわしてとりあえず合間に買ってみた花の髪飾りを母さんに、中国らしい絵が書かれてるマウスパッドを親父に与えてみると結局感激した2人に飛び付かれるという暴力を振るわれた。





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