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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
71/136

酔い




「それで、大学の教授が酷いやつなんですよーそうだ、親父と同い年だったはずだよ。最低だー」

「ええ……?だったら昇も小林くんだって同い年だよ」

「親父がゲスいー」

「そうだそうだ!!琉依さんはゲスい男だ!!仕事しろ!!」

「ちょっと木村くん仕事は関係ないじゃん」


 あのあとも次々とお酒を飲んでなにかのタイミングで先月観た映画の話をした。


「椿が大学の変な教授に騙されたらどうしよー変なくしゃみするおじさんとかーどうしよー竜二さーん」

「よしよし、心配だね」

「あー竜二さんずるい!!」


 隣にいる竜二さんに頭を撫でられていると正面にいる木村さんが身を乗り出してきた。


「木村危ないよ。あ、村岡どこ行くの」

「小林さんと席交換です」

「駄目だよ……わ、暴力反対!!」

「あー……こういう時止めるのいつも竜二なのに」

「竜二さんがああじゃ駄目ですね」

「昇が飲むと冷静になるタイプで良かったよ」

「関さんはなんでそんな変わらないんですかね」


 小林さんが座っていた席に村岡さんが座って言う。


「大丈夫です。そんなの物語の中だけですよ」

「20以上離れてる人なら付き合ったけどなー私はー」

「うう、つばきー……」


 リビングのソファーに移動していた優菜さんの言葉におじさんと付き合ってて研究室で変なことをされてる姿を想像してしまう。


「と、それは駄目ー!!」

「年が離れてるとすごい大人に見えるし余裕なところがまた魅力的なのよ。隼人みたいなお子さまと違って」

「煩いぞ女帝!!」

「隼人くんは落ち着いていて大人です。お子さまなのは女帝の方です」

「椿がー……」

「隼人くん、あんな女帝の言うことなんて気にしちゃ駄目だ」

「なによー私は自分の話をしてるだけじゃない」

「悪女だ!!」

「優菜さんもみんなも意地悪するんです。俺は椿が変なやつに騙されてないかとか困ってないかとかニュースで女の人が襲われる事件があったら椿は大丈夫かなって心配になって不安になってるのにみんな知らんぷりしてなんにも教えてくれないんです」

「女帝!!酷いぞ!!」

「うっさいキムチ!!そんなもん知るか!!」

「えーん、いじめだー」

「いじめです。可哀想に」

「あのね、えっとね、隼人……ちが「美香は黙ってて!!隼人なんて一生探し回ってれば良いのよー!!」優菜……」

「一生……みんなは知らないの?そうだ、竜二さんの持ってるマンションのどこかにいるとか……」


 10年どころか何十年も探し続けておじいちゃんくらいの年まで椿を探している自分の姿を想像して竜二さんを見て言う。


「それはさすがにないよ。俺たちは聞いてないんだ」

「隼人くんにすがり付かれたら教えちゃうでしょって琉依さんが教えてくれないんだ!!」

「隼人くんが自分の力で見つけるって言ったので応援しかできないです」

「うう……そうなんですね。仕方ないです。でも椿が変なおじさんと……いや、おじさんじゃなくても誰かと付き合ってるのも嫌だ……待ってようと思ったけど本当はすごく嫌なんです」

「うん、そうだよね。でも泣いて過ごしてるより幸せに過ごしてくれる方が良いでしょ」

「それはそうですけど……」


 竜二さんの言葉に笑ってる椿が頭に浮かぶ。


「誰かと付き合ってたら奪い返せば良いんだ!!」

「そうですよ、隼人くんならできますよ」

「そうしたいけど椿がその人と別れたくないって言ったらどうしたら……」

「隼人くんがその人よりずっと良いって椿ちゃんに見せつければ良いんだ!!」

「隼人くんに惚れ直させれば良いんです」

「けどその人の方が椿を幸せにできるかも……」

「そんなことない!!」

「そうですよ。隼人くんより良い男なんていません。椿ちゃんに相応しいのは隼人くんだけです」

「はい。……ちょっと待ってください。椿のことを知ってるんですか?」

「もちろん知ってるよ、高校2年の時に椿ちゃんと出会った時から琉依が教えてくれたから」

「あ、名前で呼ばないでってやつ?でも隼人くん、椿ちゃんと結婚したら坂下さんじゃ無くなっちゃうから。むしろ結婚してるのに旧姓で呼ぶ方が嫌でしょ」

「……確かに」


 木村さんの言葉にハッとした。そっか。佐々木椿になるのにずっと旧姓で呼ばれるのは確かに嫌だ。


「気が早いことね、見つけられるかもわからないってのに」

「……見つけられないとなにも始まらない……」

「落ち込まないで隼人くん」

「女帝もう黙ってろ!!」

「大丈夫ですよ。絶対見つかります」

「見つかっても振り向かせられなきゃ……」

「今でも十分だけど隼人くんが今よりもっとずっとかっこよくなれば良いだけだ!!」

「どうやってですか?」

「もう遠慮することないんだから才能をもっと伸ばしてみたら?」

「さっきの……?」

「そうですよ。むしろ思いきって突き抜ければ完全無欠です」

「40のおっさんより落ち着いた隼人くんのかっこよさでイチコロだ!!」

「木村……それ今使わないし自分も40のおっさんだし」

「関さん……みんなのペースが全然止まらないですね」

「ところでなんで隼人くんってこうなるの?琉依は酔ってもこんな風にならないのに」

「確かにそうだよな。親父さんたちもそうだし誰に似たんだ?」

「え?んー誰だろうね」

「へー……ねえ、隼人くんって酔ってる時の記憶あるの?」

「え、ありますよ、普通に」

「いつも通り忘れてることもあるしちぐはぐになってることもあるよね」

「え、そんなことないよ」


 親父の言葉に反論するけどみんな信用してないみたいだ。おかしい。


「親父と浩一さんと一輝さんと飲むけどなに話したか覚えてるし」

「6杯くらいでは変わらないんだけどそれ以上飲むとこうなるみたい。椿ちゃんの話題になる時だけ。別の話題だと普段より喋るくらいなだけであまり変わらないみたいだね」

「……そうかな?そういえばいつも通りだったはずなのに飲んだあとに浩一さんとか一輝さんに会うとまた厄介だったって言われるけどなんでだろ」

「また酔いが覚めたら覚えてないと思うよ」

「そうなの?」


 けどほら、今普通じゃないかな。と疑問に思ってると関さんが笑みを深める。


「不思議だね。で、琉依はなにを隠してるの?」

「ところで小林くんは立ち飲みなの?」


 村岡さんがこっちに移動してきた時にその席に座った親父が村岡さんの隣に立ちながら焼酎を飲んでる小林さんに問いかける。


「椅子奪われたから仕方ないよ」

「話逸らすなよ」

「えーなにも隠してないよ」

「さっきの甘えた感じ……美香ちゃんっぽいよね」

「いやいやそんなことないですよー」

「……琉依、俺らに隠してることあるな?」

「なにかあったら教える決まりなのに」

「それ絶対じゃないでしょ」

「けど面白そうな話だよな」

「教えないよー」

「へえ……。ま、あとでね」

「……教えないですー」

「そろそろ良い時間じゃないかな」

「そっすね。じゃあ隼人くんにサインお願いするよ」

「あ、えっと、はい。けど本当にそんなので嬉しいんですか?」

「嬉しいです」


 そう言われたら仕方ないと、平常心の俺はみんなが持ってきた色紙に1枚1枚メッセージを書いた。

 書いてる途中でまた大人になってよりかっこよくなった俺を見たら椿も惚れ直すと聞く。


「竜二さんみたいに仕事できる男になるためにも関さんみたいに落ち着いた大人になるのも経験ってことですよね」

「俺たちも仕事できるって!!」

「木村は普段本当に煩いけど仕事は真面目だよな」

「昇さん!!本当に煩いってなんですか!?」

「あー早く昴くん来てくれねえかな」

「やっぱり昴入れようとしてますよね」


 親父が熱心に昴にプログラミングのことを教えてるのは昴を会社に入れて自分の代わりに仕事をさせて昇さんの小言から逃れるためだ。つまり母さんとイチャイチャするために昴を犠牲にしようとしていることはかなり昔から知ってる。


「昴は考えもしてないと思いますけど。昴は俺の大事な弟なので無理に入れるのはちょっと……。昇さんの会社がとかじゃないですけど」

「わかってるって。本人が嫌って言ったら無理に入れない。とりあえずインターンとかで実際に経験してもらってだな」

「悪いようにはしないから」

「それはもちろんわかってます」

「けど昴くんも働くの楽しいと思う!!」

「そうですよね、パソコン好きですし」

「隼人くんの部屋っていうのがあってさ、この隼人くんがくれた絵も普段はそこに飾ってて、他にも小さい頃に一緒出掛けた時に隼人くんが拾ったどんぐりとか松ぼっくりとか飾ってあるんだ」

「なんですか、その部屋。っていうかいつの話ですか」

「3才くらいじゃなかった?私が隼人にどんぐりとか投げつけたらやり返してきて」

「なにその馬鹿っぽい話。そんなことしないよ」

「してたのよーあの頃から生意気だった」

「それを言うならその頃から優菜さんは酷いやつだ」

「まあまあ、だから昴は絶対うちで働きたいと思うはずだよ。来たらわかるはず」

「そうそう。1日の中に30分リフレッシュタイムって言うのがあるんだよ」

「なんですかそれ」


 小林さんの言葉に単なる休憩タイムじゃないと思いながら聞く。


「隼人くんの話をする時間だよ」

「そんなことだと思いました。昴はみんなと違うのでそんなことで釣られないですよ」

「そんなことないよー。この前うちの会社に昴がこっちに来る前の隼人の手形を飾ってるんだよって教えたら見たいって言ってたし昴が来る前の話すごく聞きたがるし」

「昴くんも隼人くんのことが好きすぎるから絶対楽しくやっていけると思う!!」

「……昴が良いって言ったらですからね」


 本人がそれで良いなら良いか。

 そして最後に嬉しそうにする木村さんたちと連絡先を交換して帰るみんなを見送った。




 






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