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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
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初めての相談


 翌日、クラスがわかったんだからと思い会いに行こうとした。若菜がそばにいるだろうがなんとかなるだろう。

 うちの学校は1階が3年、2階が2年、3階が1年。俺は昼休みに3階まで階段を上った。


「え!?隼人先輩!!」

「なんでこんなところに!?」

「どこに行くんですか!?」

「あ、お昼一緒に食べませんか!?」


 またこのパターンか……。そういえば1人で積極的に人がいそうな所に行くのは初めてかもしれない。母さんが毎日弁当を作ってくれるから昼は基本的に教室で食べるし若菜と違ってぼっちではない俺はそこそこに仲の良い友達が多い。トラブルに巻き込まれたくないから必要以上に関わることはないけど。

 別にそれだから人間不信だとかシリアスな話ではないけど、昔から勉強でもスポーツでもやることはなんでも好成績を修めてきた俺はなにかとやっかみが多かった。それにイライラした俺はある時思い付いたんだ。面倒ごとを避けるには人に深入りしないのが一番だと。小学生の高学年の頃にはもう、好きな女が俺のことが好きらしいんだがどうしてくれるんだ、というわけのわからない苦情も減った。佐々木なら仕方ないな、というわけのわからない文句に変わっただけだが。そんな中木下は少し別だ。おどおどしてる姿が出会った頃の昴に似ていてどうにかしなければと思ってしまった。

 そう、つまりようやく1人友達ができた若菜と違って友達はそこそこいる俺は女のようにずっとつるんでるわけではないが誰かしらといることが多い。……わかった。それで今まで囲まれて困ることがなかったんだな。納得納得。だが、これは困る。俺はたった今上ってきた階段を黙って降りて自分の教室に戻ることにした。対策を考えなければ。

 教室に戻った俺の元に今年は隣のクラスになった木下が駆け寄ってきた。


「待ってたんだよ。最近なんかうろうろしてるらしいけどどうしたの?」

「別にどうもしないよ」

「そう?ああ、それで練習メニューのことで相談があって」


 こいつは真面目か。なぜ部活中でもないのに練習メニューのことを考えなければならないんだ。


「貴重な休み時間に面倒だけど副部長の仕事だと思ってなにも言わずに相談に乗ってやるよ」

「う……ごめん。でもなにも言わずって……」


 そして俺は木下が書いてきたノートを見ながら練習メニューの見直しを始めた。始めは俺も真面目に考えていたがしばらくすると椿のことを考えていた。

 俺が椿の所に行こうとすると邪魔が入る。若菜だけじゃなくてこんな予想外の邪魔に阻まれるなんて。どうしたら良いんだ。


「佐々木?どうしたの?」

「んー……」

「珍しいな?悩みがあるなら聞くよ」

「……」


 その時俺はなぜか相談してみようという気になった。頼みの昴があんな調子じゃあな……。


「お前彼女いる?」

「え!?そういう話!?珍しいね!!」

「で?いるの?いないの?」

「い、いるけど……」

「いるのか」


 なぜ恥ずかしそうにするのか。目をそわそわ動かしながら答える木下にお前は女か、と言いたかったが品行方正な俺はそんなこと言わない。


「そ、それがどうしたの?」

「いや、彼女のいないチ……ヘタレ野郎に相談しても意味がないから確認してみただけ」

「……うん。良いよ、どうしたの?」

「それが運命の女の子を見つけたんだけど「なんだって!?」だから運命の」

「あの告白してきた女の子をバッサリ切り捨ててくので有名な佐々木に運命の人!?っていうかそんなこと言うキャラだったの!?」

「そんなに酷い断り方はしてない。父親に聞いた通りに言ってるんだから」

「佐々木のお父さんって見たことないけど美形なんだろうね。"あなたのような素敵な女性に告白されるなんてとても嬉しいけど今は誰とも付き合うつもりはないんだ、ごめんね"って誰にでも同じこと言ってるんだってね。それも噂になってるよ。男子たちは上手いけどバッサリ切るなーって思ってるけど女子たちはその今がもう終わったんじゃないかとかもう一回チャレンジしようとか……いろいろと話聞くよ」

「なんだその噂は」

「かっこいい人って大変だね。そろそろ佐々木も彼女がほしくなってくるんじゃないかって女子たちがそわそわしてるよ」

「なるほど……。それも原因の1つだな」

「それで?運命の人を見つけてどうしたの?佐々木ならすぐ付き合えるでしょ」

「従妹が邪魔なんだ。どうしたら良い?」

「従妹?あー、小西さんってめっちゃ可愛い子だよね。それも噂になってるよ。」

「ただの生意気なガキだ」

「……そう」

「いや、待て。それなら彼女のことも知ってるのか?従妹の唯一の友達なんだ」

「そうなんだ。でもそれは知らないなー。あの佐々木の従妹が入学してきたとかその子が可愛いけどちょっとヤンチャだって噂があるくらいだから」

「ちょっとヤンチャで済ますなよ」

「まあまあ。でもその小西さんの友達なんだ。どうして邪魔なの?」

「若菜は今まで友達が1人もいなかったんだ。家族とテディベアしか話し相手がいなくてね。寂しいやつだろ。そういえばそろそろアルをクリーニングに出してこないといけないな。昴にアルを救出してきてやれって言っておかないと。絶対腕がもげてるから修繕もしないと……。ああ、それで、若菜は見た目も目立つし生意気だし自分の発言のせいで反感かってるってのに直そうとしない上に警戒心が強い。お前もなんか文句あるのか、あ?みたいな」

「……そうなんだ。よく見てあげてるんだね」

「そういうんじゃない。なんでそうなる?」

「ううん、ごめん。なんでもないよ。じゃあ初めての友達に執着してるってこと?」

「そうなんだ。俺がその子が好きだっていうのはまだバレてないからどうなるかわからないけど幼馴染みが言うには大惨事になりそうだって」

「そっか。でもいずれはバレるよね。バレずに接触するって無理でしょ」

「そうなんだよなー。それに中々会えない。なぜか若菜以外にも障害があるんだ」

「ふーん……。障害って?」

「女に囲まれる。最近多い」

「それはさっきも言ったそろそろ時期なんじゃないかってやつだね。もういっそ好きな子ができたって宣言してみたら?落ち着くんじゃない?」

「なんでわざわざ言わないといけないんだよ」

「試してみたらってだけだよ。なんでもそうでしょ。やってみないとわからない。それに小西さんも言ってみないとわからないよ。もしかしたら好感触かも」

「いや、それはない」

「あはは。小西さんが離れないなら正面突破で堂々と小西さんがいても話しかけてみたら?」

「……それしかないか。どうしてもいるんだもんな……。それにいつかバレるものだし……」

「大丈夫そう?」

「ああ、とりあえず。ありがとな」

「ううん。でも佐々木が素直に相談してくれるなんて思わなかったから驚いたよ」

「なんだよ。お前が聞くって言ったんだろ」

「うん、だから聞いてはみたけど話してくれないんだろうなって。佐々木っていつも一歩引いてるっていうか大人びてるっていうか、だから人の相談は聞いてくれるけど深入りしないし……なんでか俺にはきついけど……それに自分のことは全然話さないし。だから悩みとかもなさそうだしなんかあったとしても自力で解決するんだろうなって思ってたから」


 俺は木下を凝視して思った。こいつなかなか鋭いやつだ。部長に推薦した俺の目に狂いはなかったな。


「これからはなにかあったら相談することにするよ」

「うん、ありがとう」

「なんでお前が感謝するんだよ」

「え?本当だ。んーと、部員の悩みを聞くのも部長の役目かなって」

「部長面か。偉そうだな」

「ごめんごめん。じゃあ戻るよ。練習メニューのこと、ありがとね」

「ん」


 右手をあげる俺に木下は手を振って自分の教室に帰っていった。





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