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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
大学生編
69/136

勢揃い



 大人数になるから母さんだけじゃ料理を作れないんじゃないかということで優菜さんも手伝いに来た。さらに焼酎とか日本酒があるのに和食がないというのもどうなのかと彩華さんも料理を作って持ってきてくれるということになった。俺もさすがに手伝いでもしようとバイトが終わってからすぐに家に帰ってきた。

 ここ最近忙しくて半年どころか1年以上直接会ってはなかったという竜二さんが久しぶりに帰ってくるということで親父と昇さんと小林さんと木村さんは午前中から会ってる。関さんと村岡さんも早く仕事を終わらせて19時にみんな来る予定だ。


「はやとーこれも置いてー」

「ねえ、手伝うって言ったけど優菜さん人使い荒すぎ……」


 バイトから帰ってきたらすぐに母さんから花を買ってこいだの買ってきたら花瓶に入れてだのと言われて玄関やリビングに花を置いた。これで終わりかと思えば彩華さんが調子に乗って作りすぎたから運ぶの手伝ってと連絡をしてきて手伝ったりそれが終わったら優菜さんが雑用を細々と押し付けてきてさすがにイライラしてきた。


「お花できたのー?」

「母さんどこ行ってたの?」


 いつの間にかいなくなってサボりやがってと思っていた母さんがリビングに戻ってきた。


「アルバム!!みんな見るかなーって仕舞ってたのも全部出したの!!持ってくるの手伝ってー!!」

「またか……」


 そして何十冊もあるアルバムを全部リビングに運ぶ頃に19時近くになった。優菜さんは一旦彩華さんの片付けを手伝いに行ったけどみんなに会うからとあとでまた来ることになった。


「あら?これ傾いてるんじゃないかしら……」

「あ!!母さんそんなのどうでも良いから!!」


 そろそろ来る頃かなと思っているとソファーの上に飾ってある花のリースが傾いてると言って母さんがソファーに乗り始めたから俺は慌てて母さんを止める。


「リースに傾いてるとかないんだから!!危ないから降りてよ」

「えーでもほら。こっちに傾いてる気がする」

「それは母さんが首を傾げてるからじゃないの」

「えーそんなことな……あら!!来たみたいだわ!!」

「わ!!ちょっと!!」


 親父たちが帰ってきたみたいで騒がしい声が聞こえてソファーの上で母さんが壁からリビングに勢い良く体をむけるからふらついて俺は慌てて手を取った。


「隼人くーん!!久し……なにしてんの?」


 一番にリビングに入ってきた木村さんが右手を上げたまま首を傾げる。そのあとから親父、昇さん、小林さん、竜二さんが入ってきた。

 俺は急いで母さんから手を離そうとしたけど母さんが手を繋いだままブンブンと手を振りだした。


「いらっしゃーい!!わー久しぶりー」


 ソファーから飛び降りた母さんにまたヒヤッとしたけどなにもなくみんなのところに駆け寄る母さんにため息をつきながら俺も続く。


「聞いてーあのリースが傾いてるから直そうとしたら隼人がねー危ないから止めなっておてて繋いでくれたー良い子ー」

「違うでしょ!!ふらついたから手を取っただけでしょ!!」


 もう!!これだから母さんの話は無茶苦茶なんだ。ムカつく!!


「傾いてるかな?」


 小林さんが眼鏡を上げながら問いかける。


「気のせいだって美香ちゃん」

「でもね、昇さん。こう見てたら曲がって見えたのよ」

「馬鹿だな……」


 昇さんが苦笑いで言うと母さんが体ごと横に傾けて木村さんがボソッと言う。


「大丈夫だよ、美香。完璧だから。すごいね」

「おもてなしだから頑張ったの」


 テーブルに乗っている料理を見て親父が母さんの頭を撫でる。

 こんな馬鹿夫婦は放って俺はみんなに挨拶することにした。


「いらっしゃい。お久しぶりです」

「久しぶり。美香ちゃん相変わらずだな」

「大変です、昇さんどうにかしてください」

「それは難しいんだよ」

「陰ながら見守り隊解散したから喋って良いんだよね!!」


 木村さんは明るくて一輝さんを天然じゃなくした感じだ。


「はい、みなさんのお話もたくさん聞きたいですから」

「見てよこれ!!隼人くんが3才の時に僕にくれた絵なんだ!!」


 そう言って木村さんが画用紙を広げようとしたところで昇さんがストップをかけた。


「木村のことより竜二さんが先だろ」


 竜二さんは思ってたより大きくて2メートル近いんじゃないかというくらい長身の強面の人だった。


「あの……お久しぶりです竜二さん」

「久しぶり。……あんなに小さかったのにこんなに大きくなって」

「そりゃ竜二さんにとったらちっちゃい子供なんてみんなミニミニサイズだって」


 話を遮られたからか拗ねている木村さんが言うと竜二さんは笑って木村さんの頭を手のひらで握る。


「痛い痛い!!いじめだ!!」

「竜二さんは隼人くんが生まれて隼人くんにだけ優男になったんだよ。酷いでしょ」


 そう言うのは小林さんだ。なるほど、椿の前だけで良い人だったらこんな感じになっていたのかな。


「隼人くんは甘いものが駄目だからおかきを買ってきたよ」

「え、ありがとうございます」

「都内で有名な老舗の店のだよ。なんて嫌みな人なんだ」

「村岡さんみたいな言い方ですね」

「村岡くんと木村くんは相棒だからね」


 親父が言うと木村さんは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「だから相棒じゃないって言ってるじゃないですか」

「もう良いだろ、相棒で」


 このやり取りは村岡さんにしても木村さんにしても同じ反応が返ってくるんだな。

 そう思ってるとインターホンが鳴った。


「あら!!関さんと村岡さんだわ!!」


 母さんがリビングを飛び出していった。


「とりあえず座ろっか。みんな適当に座って」

「隼人くんは?」


 親父の言葉にみんなテーブルに座ろうと歩きだしたところで竜二さんに聞かれた。


「俺がなんですか?」

「隼人くんの隣に座ろうかなって」

「あ!!ずるいですよ竜二さん!!」

「みんなと違って俺は久しぶりなんだから良いの」

「なんですかその久しぶりだからなにやっても良いって感じの言い方は……」


 昇さんが呆れていると関さんと村岡さんがリビングに入ってきた。


「なにやってるの?」

「馬鹿なことやって隼人くんを困らせないでください木村」

「なんで俺なんだよ!!竜二さんだから!!」

「竜二がなんだって?」

「久しぶりだから隼人くんの隣に座るって言ったら木村の馬鹿が反抗してきた」

「それなら俺も隼人くんの隣に座ります」

「いやいや、村岡もだし関さんも隼人くんから一番遠い席ですよ。これ以上抜け駆けさせてたまるか」

「はいはい、なんでも良いから座りなよ」


 関さんの掛け声でしぶしぶ動き出したみんなは結局キッチン側の奥から昇さん、村岡さん、木村さん、親父、母さんが座り、向かい側の奥から関さん、小林さん、俺、竜二さんが座った。


「じゃん!!焼酎!!今昇さんと選んできたんだ!!」

「ワインは関さんと俺で選んできました」

「日本酒もって話になったから俺と小林で選んできたよ」

「みなさんわざわざありがとうございます」


 木村さん、村岡さん、竜二さんがそれぞれ買ってきたお酒をテーブルの上に置いてさあ何から飲もうと言うことになった。予想通りそれぞれがそれぞれに持ってきたのを俺に飲んでほしいとまた討論になった。


「なにやってんのー?まずはビールで乾杯で良いじゃない」


 決まらないと思っていると優菜さんが入ってきてビール瓶を数本開けると親父と竜二さんに手渡した。あれ?優菜さんと竜二さん?竜二さんと浩一さんは強面……。まずい。


「ちなみに隼人、竜二さんも優菜と付き合ったことないからね」

「え!?なんで考えてることわかったの!?」

「考えなくてもわかるよ」


 親父は苦笑いで言う。


「でもこっそり……」

「こっそりもなにも付き合ってないって言ってんのー馬鹿隼人」

「暴力はいけないんだよ!!」


 優菜さんがグーで頭を挟んでくるから頭を振って反発していると竜二さんが言う。


「女帝はさすがの俺でも無理だよ」

「村岡さんも言ってたそれなんですか?」

「優菜ちゃんのアダ名だよ」

「そう。誰も優菜ちゃんの前に立てないんだ。権力者だから」

「そうです。女帝は高校でも俺たちが通ってた大学でも絶対です。恐ろしい暴君でした」


 関さんの言葉に木村さんと村岡さんが続ける。


「優菜さん恐れられてたんだ。優菜さんは昔から優菜さんなんだね」

「んなわけないでしょ。普通にしてただけよ。みんなが避けてくれるだけ」

「優菜ちゃんが通ると自然に道が開いてさ、壮観だった」

「女帝来たってわかるんですよ。そうするとそばにいた昇さんと小林さんが素早くいなくなってるんです」

「へー……逃げたんですね」


 俺がそう言うと昇さんと小林さんが無言で宙を見ていた。

 と、そこでとりあえず乾杯してから話をしようと関さんが言うからビールを注いで乾杯した。


「昇さんは面倒ごとに巻き込まれたくなくて小林さんを引き連れて逃げるんです」

「会社のことでって言って立ち去るんだ。それなら僕も連れてけっていつも後追いしてさ」

「それで残るのは俺と関さんと竜二さんと琉依さんなんですよ。で、琉依さんは優菜さんと一緒に来た美香さんと喋るじゃないですか。関さんは女の人には誰にでも優しいので挨拶して竜二さんも一応面倒見は良いので妹みたいに接して、でもさっさと立ち去ってしまうんですよ」

「結果残った村岡が優菜ちゃんの暇潰しに付き合うんだよ」

「そうなんですねー。……ちょっと待ってください。大学ってそんなに出入り自由なんですか?」


 ご飯を食べながら聞いていた俺はふと思ったことを口にした。


「自由ってわけじゃないけど理由があるならオッケーだったから」


 筑前煮が旨いと呟いてから木村さんが言う。それは彩華さんの手作りですよと心の中でだけ応える。


「隼人くんの通ってる大学も一般の人が学食食べに来たりしてない?」

「あーそういえばいますね」

「守衛所で手続きすれば自由に入れるんだよ」

「そうなんですか?」

「ちゃーんと高校生なので大学見学ですって言ってたのよー」

「それってオープンキャンパスてきな?」

「そうよ」

「何回も?それってありなの?」

「別に怪しいことしてるわけじゃなかったからね。守衛の人も彼氏に会いに来てるのとその付き添いだってわかってたから良かったんじゃないかな」


 関さんの言葉に頷いた俺は考える。


「それって門の前で待機しなくても良いってことですよね」

「んー理由が必要だけどね」

「……そっか。じゃあ駄目ですね」

「良いじゃないですか。理由なんてなんでも良いんですから適当に言えば良いんですよ」

「そうそう!!学食食べに来たとか」

「けど厳しい大学は禁止にしてるところもあるから調べてみないと」

「そうなんですね、調べてみます」

「高校でも優菜は生徒会長でね、みんな優菜に憧れてたのよー」

「カリスマはあったからなー。文化祭来てって僕ら全員で行ったらみんな優菜様って呼んでてさすが女帝だと思ったよ」

「女子校ってこういうところなんだって驚いたのを覚えてます」

「いやいや、優菜ちゃんが特別だっただけだよ」

「つまり女帝の権力は恐ろしいと思ったんだよ」

「そんな恐ろしい女帝と付き合える猛者は俺たちの中ではいません」

「女性なら誰にでも優しい関さんも来る者拒まずだった竜二さんでも無理って言ったもんな」

「来る者拒まず……」

「学生の頃の話だよ」


 竜二さんもモテてたんだな。テンポ良く話をしてくれる関さんと違って口数は少ないけどどっしり構えてる感じの竜二さんもかっこいいと思った。学生時代はヤンチャだったみたいだけど。


「優菜さんと結婚した浩一さんは本当にすごいと思いました」

「どんだけ寛大なやつなんだと思って興味津々で会いに行ったらすごい謙虚な人でこっちが恐縮しちゃったよ」

「すごい変わり者だと思って行ったんですけどかなり年下の俺たちに丁寧に接してくれて」

「こりゃ年の功だなって納得したよ」

「浩一さんはすごく優しいです」

「ふん、パパは村っちたちと違うんだから」

「俺たちも驚いたんだよ。琉依たちが一段落したと思ったら優菜ちゃんも結婚することになったって聞いて」


 昇さんがそう言って思い出し笑いをする。


「面白そうだから相手がどんなやつなのか調査しようって木村が言い出してさ、分かれて会いに行ってみたんだよ」

「まずは僕と村岡で行ったんだ。さっきみたいな優菜ちゃんの女帝ぶりを話しにさ。そしたら出してくれる日本茶は美味しいし楽しそうに話を聞くし出してくれたお茶菓子は美味しいし」

「木村が餌付けされたのですぐに帰りました」

「そのあと昇と小林が行ったんだよ」

「親父さんにも琉依にもなにも聞かされてなかったら可哀想だと思ってこれまでの優菜ちゃんの男遍歴を披露したんだ」

「昇がそう言い出したから思い出せる限りの話をまとめてプロジェクターで資料を映し出して説明したんだよ」

「作戦会議した時に浩一さんが不憫だって言ったら本気のプレゼン資料作ってきたんだよ村岡、馬鹿だろ」


 昇さんがゲラゲラと笑って村岡さんは咳払いした。


「でも結局浩一さんは親父さんに聞いてたしそれでも良いって思って決めてたのに俺たちのプレゼンを最後まで聞いてくれたんだよ」

「頑張ってくださいって握手して帰ったんだ」

「最後に俺と竜二で行ったんだよ」


 俺はこの人たちいったいなにしてるんだろう、と思いながら聞く。


「口からでまかせ作戦をしたんだよ。木村たちも昇たちも馬鹿だからね、こっちは大人アピールだと思って」

「でもさらに大人な優菜ちゃんの旦那の余裕には恐れ入ったよ」

「なに言ったんですか?」

「知りたい?」


 関さんの問いかけに俺は頭を全力で横に振る。


「大人って怖いですね。ところで親父はなにしてたの?」

「ん?僕はなにもしてないよ。浩一さんが良い人だってことは初めて会ったときに十分わかってたからね」

「浩一さんはどう思ってたんだろ」

「パパは年が離れてるからみんな心配して来てくれたんだね、優菜ちゃんは愛されるんだねって言ってたわ」

「その話を琉依から聞いて浩一さんはなんかすげえやつって結論で調査は終了したんだよ」

「へえ……」


 昇さんの言葉にそれしか言えない。この人たち馬鹿なんだなとわかっただけだった。




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