ただの相談がなぜこんな事態に(2)
「で、結局俺を晒してるのは何人なんですか?」
「そんなことしてないよ」
「親父は黙ってて」
「俺と村岡と竜二、それで琉依の会社一緒にやってる昇と小林と木村の6人だね。小林と木村は見たことあるでしょ」
「何度か会ったことはありますけどそんなに知らないです。小林さんは副社長をしてる親父の同級生で木村さんは1つ後輩なんですよね?」
「そう。2人とも真面目でね。父親の知り合いなんて付き合い面倒だろうから自分たちは隼人くんに必要以上に関わりません、陰ながら見守る見守り隊ですって。けど小林なんて病院で泣き出す琉依より先に付き添った自分が生まれたばかりの隼人くんと目が合ったって今でも自慢してるよ。木村は村岡と似た者同士なんだよ、毒舌でさ。いつも隼人くんと仲良くなった俺にチクチク言ってくるんだ。村岡は村岡で飲食店じゃなくてアパレルやれば良かったって言ってるよ。去年初めて店に来た時に琉依の知り合いでこの辺で私服の店やってる人いないんですかって聞いてきたでしょ。店の窓からたまに隼人くんが歩いてるの見て俺も話したいってずっと言ってたんだよ」
「え、今の人の話ですよね?そんな感じじゃなかったですけど」
「ポーカーフェイスだから。村岡って隼人くんにとっての昴くんにちょっと似たような感じでね。昔から琉依と美香ちゃんのバタバタの巻き添えになって苦労してたから親戚のおじさんみたいな気でいるんだよ。竜二はここから離れてる所に住んで会社経営してて。半年に1回くらいしか俺たちも会わないんだけど七五三の3才の時には一緒についていったんだよ、優菜ちゃんの旦那みたいな強面の人覚えてないよね?」
「……覚えてないです」
「その時に隼人くんと手を繋いだってそれだけ思い出にしてる馬鹿なやつなんだよ。ね、面白いでしょ。わちゃわちゃ大勢で隼人くんに構ったら駄目だろって直接関わってないだけでこんなに隼人くんの話共有してる人いるんだよ。けど隼人くん覚えられないでしょ。みんなわかってるから忘れて良いよ。隼人くんが忘れても俺は忘れないって変なやつらだから」
「え……それは……たぶん覚えられます。全然話さない人はわからなくなるってだけでだけですし」
「あ、本当に?みんなに教えてあげよっと。あ、待って、木村から早く隼人くんの相談に乗ってあげてくださいこの裏切り者って来てた。あはは、酷いでしょ」
「僕が相談に乗ってあげるよー隼人。親父だから!!」
「う、うん……ありがと」
相談に乗るのがそんなに嬉しいのかなと思いながら問答無用で腕を引かれそうになった話をした。
「そうだ、乱暴にならないように女の子を退ける方法はないかな?シュッてやったら危ないし」
「隼人優しい」
「優しいね」
「優しいです」
あれ?
「村岡くんなんで座ってるの?コーヒー持ってきてくれたならもう良いよ」
「隼人くんと関さんに料理の提供も終わりましたし俺の今日の仕事は終わりです」
「絶対シェフに追い出されたね」
「話してきたいなら行ったらどうですかとか言われたんでしょ」
「まあそうとも言いますね」
「は、はあ……」
なぜか俺の隣に親父、正面に関さん、関さんの隣に村岡さんが座ってる。不思議だな、なんでこうなったんだろうと思っていると関さんが言う。
「村岡やってみ」
「俺ですか?」
「隼人くんのためなんだから」
「……誰か待ってるんですかー?一緒に遊びましょうよー」
ひぃ……突然変なのが始まった。村岡さんが棒読みで喋りながら関さんの腕を掴む。
「ここでもう片方の手で女の子の腕にそっと触れて顔を近付けて「運命の女の子を探してるから君と遊んでる場合じゃないのって言ったら良いよ!!」……危ないやつだと思われて引いてくれるかも」
「危ないと思われて守衛とか呼ばれて終わりです。琉依さんは本当に役に立たないですね」
「えー……。ね、隼人、良い案でしょ?」
「……確かに椿は運命の女の子だけど知らない人が聞いたらこの場所で運命の女の子に出会おうとナンパで待機してると思われそうな気がする」
「琉依は喋るなって昇が」
「っていうか関さんメッセージ続いてるんですか?」
「うん。さっき隼人くんがみんなのこと忘れないって言ったらみんな喜んで相談を聞くんだって」
「そうですか……」
親父の知り合いってみんな変なの……。
「琉依に邪魔されたけど、俺なら待ってる子がいるから遊べない、向こうにイケメンがいるからそっちに遊んでもらいなって言うね」
「そうやっていつも僕のとこに振ってきてましたよね!!」
「その琉依さんがのらりくらりして俺だけ女子集団の中に取り残されてました!!」
「あの……」
「ごめん、後半は嘘。きっぱり遊べないよって断らないとね」
「そうなんですね」
「この人たちみたいに自然体でいないといけないです。でっち上げでも堂々としてれば本当のことになるって俺はこの人たちを見て学びました」
「そ、そうなんですか。村岡さんはどうしたら良いと思いますか?」
「そうですね……俺は2人と違って平凡でしたから。隼人くんは上手くかわせた時は1度もないんですか?」
「んー……そういえば椿とデートしてた時は気分が高揚してたので慌てないで話して椿が来たら椿のところに走って行きましたね」
「冷静に対応するのが一番です。引きぎみだと向こうも押せ押せになってしまいますからね。余裕を持ってあなたに構ってる時間はありませんと伝えてみたら良いと思いますよ」
「そう、だからこうやって近付いて相手に戦意喪失させるんだよ、隼人くんはかっこいいんだから」
「僕とそっくりだよ!!」
「できるかな……」
「やってみて、村岡で」
「え?村岡さんで?」
「隼人くんのためですからね。……一緒に遊びましょうよー」
村岡さんが俺の隣に来て腕を掴んできた。おかしいと思いながら俺はやってみる。
「えっと……こっちの手でやんわり相手の腕に触れて顔を近付けて……待ってる子がいるので遊べません」
「えーそんなこと言わずに遊びましょうよー。待ってる間だけで良いですからー」
「げ……」
終わりかと思ったら村岡さんが続けてきてどうしようと関さんを見る。
「ほら、そこで困っちゃ駄目。付け入る隙を与えないで」
「隼人ー頑張れ。嘘も方便だよ」
「ええ?えっと、もうあと1分で来るって連絡があったので駄目です」
「残念、わかりましたー」
「ふう……」
村岡さんは真顔で席に戻った。
「これで良いんですか?」
「そうだね、言ったもの勝ちだし。あ、待って、木村が携帯で電話してる振り、だって」
「木村くんは僕たちと話して面倒になるとやってたよねー酷い」
「けど、これは良いかもね。電話し始めちゃえば女の子も引き下がるしかないし」
「なんだか悪い気が……」
「隼人くん!!」
「え、はい?」
いきなり村岡さんが大きな声を出すから驚く。
「隼人くんは良い子ですけど良い子なだけじゃ駄目です。隼人くんが考えるべきなのはその子のことだけです」
「えっと……はい」
そっか、逆ナンに戸惑ってる間に椿が通りすぎちゃって気付けなかったら大変だ。はっきり断って椿探しに集中しないと。
「と、これは話しかけられた時の対処法だね。そもそも話しかけられないようにするにはどうしようか」
「マスクをしたら良いよ!!帽子も被って」
「え、変質者だと思われないかな」
「でも隼人くんは目立ちますから単純に顔を隠すのは良いですね」
「そうなんですね。じゃあそうします」
「ちょっと待って!!」
「なに、親父」
「どうして僕の意見に文句言うのに村岡くんの言葉で納得しちゃうの!?」
「村岡さんの言うことは説得力があるからだけど?」
「がーん!!」
あ、面倒なやつだ。親父がわかりやすく落ち込む。
「村岡、お前大バッシングだよ。木村が裏切り者、小林がポイント稼ぐな、昇が隼人くんとの付き合い長いのに、竜二が俺そっちに引っ越そうかな……だって」
「これも人徳があるからです。みんなと違って」
「関さんだけじゃなく村岡くんまでー?悔しいー……」
「あ、木村が悪そうな人には女の子も声かけようと思わないんじゃないかって。確かに隼人くんは爽やかだもんね」
「ダサいとかチャラいとかそんな格好してたら良いかもしれませんね」
「チャラい格好してる知り合いがいます。あんな感じにしたら声かけられないでしょうか?」
「あ、それならいっそヘッドホンつけて話しかけるなオーラを出してみたらどうですか?」
「そうだね、それ良いかも」
「じゃあ僕ヘッドホン買ってあげるー」
「琉依遅かったね。昇がもうポチッとしたって。明後日家に届くよ」
「え?どういうことですか?昇さん?」
「昇もその線だって一足先に通販で探し始めてもう買ったって」
「ええ!?昇さん!!」
「あ、大変だ。木村も小林も竜二も自分たちも隼人くんになにか買うって躍起になってる。隼人くんなにか欲しいものないの?」
「え、ないです!!止めてください!!」
「俺もなにか買います。帽子は俺がって伝えてください」
「いや、それ被る。木村も帽子だって。帽子なんていくつあっても良いでしょ」
「仕方ないですね」
「あ、あの、待ってください」
「竜二がサングラスとかどうかなって。小林は……なんでだろ、キーケース」
「捻り出したんでしょうか?」
「あ、良いの良いの。今日仕事中に小林くんと隼人に似合いそうだなーって革のキーケースを見てたから」
「親父仕事中になにしてるの?仕事は?」
「息抜きだよ。雑誌持ってって小林くんの座り心地の良い椅子に座ってたら会議から戻ってきた小林くんも一緒に見るって言うから」
「俺はなにを買おうかな……」
「関さんは良いですって!!いつもスーツでお世話になってるんですから!!」
「そう?じゃあいっか」
「なんでこんなことに……」
「みんな隼人くんに構いたかったんです。ありがとうございます」
「いやいや、感謝するのこっちですから。ごちゃごちゃしてましたけどとりあえずこれでなんとかなりそうです。ありがとうございます。親父の知り合いはみんな変わってますね」
「俺はノーマルですけど」
「俺もいたって普通だよ」




