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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
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接触禁止



 その夜俺はぼんやりしながら気付いたら昴の家に来ていた。


「あら、隼人?おかえり」

「た、ただいま」

「どうしたの?」

「うん、ぼーとしてたらこっちに来てた。昴いる?」

「もしかして椿ちゃんのこと?こっちで話してよ」

「……いや、良い!!昴ー!!」


 彩華さんの目が輝いて正気に戻った俺は慌てて昴の部屋に駆け込んだ。


「な、なに隼人くん……」

「聞いて昴、大変なんだ」

「どうしたの?」


 俺は今日の椿のことを話す。


「隼人くん……」

「なに?」

「なんでそんなに触ってるの!!変態なの!?変態だった!!」

「ええ……違うよ……」


 黙って聞いていた昴が突然騒ぎだした。素晴らしく可愛い椿の話をしたのになんなんだろう。


「まず最初に肩触れるとこに座っちゃ駄目って言ってたでしょ」

「そうだったっけ?いつもそういう距離だよ。カミ―リアもその距離に座るし」

「慣らされちゃったの?なんてことだ。でも立ち上がろうとする坂下さんを止めるなら言葉だけで良いでしょ」

「そんなこと言われても自然にやってたんだから仕方ない。なんで肩を触って身体を真っ赤にしてたんだろう」

「そのせいでしょうが」

「はて?なんで?」

「なんでわからないのー……」


 頭を抱えだす昴にわけもわからず肩に触れてみる。


「ほら、昴に触ってもどうにもならないでしょ」

「そりゃあ僕だもん」

「異性だから?」

「男の人に触られたら嫌がられるか不快に思われるかもしくは……」

「もしくは?」

「好きな人にだったら嬉しいかも」

「……ってことは!!」

「そうだね、でもま「椿も俺のことを好きになってくれたんだ!!」ちょっと落ち着いて!!」


 そうか、あれはそういう反応だったのか。そうだよ、そもそもあんなに一生懸命来てくれたんだから。


「ちょっと落ち着いてってば。まだわからないよ」

「え、そうなの?でも最後も」

「それも完全に駄目だよ。そもそも付き合ってないのにそんなにベタベタ触っちゃ駄目」

「失礼な。ベタベタ触ってないよ」

「多分意識はしてるんだろうってことは明確だけどまだ自覚してるかはわからないよ。それで、そういう反応してたってことはこれからも触ったら逃げられちゃうと思う」

「ええ……そう?」

「それだと困るでしょ」

「それは困る」

「それは困っちゃうよね」

「「うんうん」」


 ……。


「いや、待て!!」


 勢いよくドアに顔を向けるとドアの隙間から優菜さんと彩華さんと一輝さんが覗いていた。


「あー見つかっちゃった。てへ」

「てへじゃないよ!!いい年して!!」


 俺が優菜さんの言葉に怒鳴ると3人と気まずそうにする浩一さんが部屋に入ってきた。


「母さん、呼んだの……?」

「ごめーん。面白いかなって思って優菜に連絡したらこっそり聞こうって」


 彩華さんが全然反省してる様子もなく謝ってきた。


「全然見守る方針じゃないじゃないか」


 やっぱり父さんが言ってた話はおかしいと思う。


「まあまあ、良いじゃない。そういうことなら優菜様に聞きなさいって」

「深入りしてこないでよー」

「まあまあ。椿ちゃんは彩華さんタイプね」

「彩華さんタイプ?」

「男性に免疫がなくて触られたら過剰に反応しちゃうタイプ」


 彩華さんに顔を向けるとそっぽを向いている。


「そうだねー。付き合う前に手繋いで良い?って聞いたら付き合う前にそんなことするなんて軽い男のすることよってそのあと全然話もしてくれなくなっちゃったよね」

「わ、私の話は良いじゃない……」

「いや、参考になる話は聞くべきよ。先人に倣うって言うじゃない」

「それって優れた業績を残した人にって意味じゃなかった?」

「なんだって良いのよ、昴」

「一輝さんって軽い男なんだ」

「ちがうよー。ただ触ってみたいなーって」

「でも彩華さんだって本当に軽い男だって怒ったわけじゃないのよ」

「そうなの?でも口も利きたくなかったんでしょ」

「そうだけど。でもそんなこと慣れてないから緊張したのよ」

「緊張すると怒りたくなるの?」

「恥ずかしくなるのよ。それで、彩華さんの場合はツンデレだから話しかけるなってなっちゃったんだね、これが。乙女心の難しいところなのよ」

「じゃあ椿は?」

「椿ちゃんは少なくても意識して挙動不審になるような感じね」

「どうしたら良いの?」

「そっとしておくのが良いんじゃない?」

「ええ……いつまで?」

「彩華さんはいつなら良かった?」

「付き合ったら良かったわ。だって付き合う前にそういうことする人なんて信用ならないもの」

「むー手を繋ぐだけなのに。でもそういうところがお母さんの可愛いところだからね」

「そういうことを言わない!!」

「はーい」

「つまり最悪そういう男だと思われちゃうから付き合う前に触るのはやめた方が良いわね」

「座る時は?」

「……強情ね。それは良いんじゃない?椿ちゃんもそれにはもう慣れちゃったみたいだし」

「良かった。じゃあ頑張って触らないようにする」

「それが賢明ね」

「けどもう嫌われちゃって逃げられちゃうかもしれないよ」


 一輝さんの言葉に、嫌いと言って背を向けて歩いていってしまう椿を想像してしまう。


「それは嫌……」

「まあまあ、隼人。まだそうと決まったわけじゃないよ」


 ただ1人俺たちの話し合いを見守っていた浩一さんが俺に声をかける


「そうだよね。でも椿に嫌われたらもう生きていけないよ」


 そう俺が呟くと優菜さんが背中を思いっきり叩いてきた。


「痛!!」

「大丈夫!!嫌われてもめげちゃ駄目!!隼人には椿ちゃんしかいないんだからへこたれない!!ましてやまだなにも起きてないんだから!!」

「あらあらー?まだお話中だったのー?良かったー間に合わないかと思ったのー」


 そう言ってひょいと顔を覗かせてきたのは母さんだ。


「美香、隼人が椿ちゃんに嫌われたら生きていけないってよ」

「えーーー!?いやー生きてー!!」


 そう言って突進してくる母さんを受け止める。


「美香、それはないから平気よ。優菜も中途半端に心配させるようなこと言わないの」

「ソーリー」

「隼人ー」

「か、母さん……」

「美香さん、坂下さんに嫌われることなんてないから平気だよ。坂下さんどんな悪人も良い人に思えちゃう人だから」

「そうなのー……?じゃあ平気ね!!」


 元気になった母さんは俺から離れる。


「せっかくだからこっちでご飯にしようと思ってシチュー持ってきたのー。夜ご飯にしましょ」

「あら、それなら置いてきた若菜呼んで食後のデザートでも食べましょうか」


 そう言って優菜さんは携帯を取り出し電話をしはじめ俺たちはぞろぞろと階段を降りてリビングに行った。

 そこにはすでに父さんがシチューをよそって待っていて、しばらくすると呼び出された若菜が文句を言いながら椿に意地悪されたと話す。俺たちは苦笑いをしながら若菜には秘密という暗黙の了解でその話を聞いたりまったく別のなんでもない世間話をするのだった。




 

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