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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
33/136

花束のプレゼント



「隼人の二重人格めー」

「煩いよ」


 歩いてると隣で若菜が文句を言ってくる。


「それより椿のお父さんがっていうのはどういうこと?どんな仕事をしてるの?」

「クリーンコーディネーター……あれ?クリーニングコーディネーターだっけ?」

「掃除?クリーニング?それのコーディネーターってなに?」


 俺は椿の話に出てきたお父さんの掃除をしてる姿と受付にいる姿をぼんやりと想像してみた。


「なんだっけー?……あ、椿が植木屋さんみたいなって言ってたー。おばあちゃんの家に来る人みたいな感じだよきっと」

「若菜、この前グリーンコーディネーターって言ってたよ」

「ああ!!それ!!」

「グリーンコーディネーター……どんな仕事?植木屋かあ……」

「さあ?椿もよく知らないって!!あんまり興味ないって」

「え!?椿って興味ないことあるの?」

「んー興味ないというか度合いが違うというかー。チョコレートのお菓子食べててそのチョコレートは美味しいけど包装の開けるのがこう摘まむように切り込みが入るようになったのはなんでだろうって、そっちの方が気になっちゃってお菓子ほっぽって考え始めちゃうのー」

「ひぃ……。可愛いよー」


 俺は椿の可愛さに慌てながらも携帯でグリーンコーディネーターというものを調べてみた。


「こういう所で植物を使った空間デザインをしたりするみたいだね」


 ふと、この調べるという行為が椿みたいだと思って嬉しくなった。


「あー!!あれじゃないー?」


 若菜が指差す方向には子供たちがたくさん集まってなにかイベントをしていた。そして大きな看板の両サイドが植物で飾られていた。

 こういうことに詳しくないからわからないけどあちらこちらに伸びている草や幹が賑やかに動き回る子供たちと重なって楽しげな雰囲気だ。


「ああいう所で小さい時よく遊んでたね。あんまり意識したことなかったけどああいうのを作る仕事があるんだねー」


 昴の言葉に俺は頷きながら見たことのない椿のお父さんを想像してみていた。椿が言っていた芸術肌で琴線に触れるものがあると夢中になって時間を忘れてしまうというお父さん。椿の自然がある所が好きというのはお父さんの影響かもしれない。だけどお父さんの仕事にはあまり興味がないという。椿の中ではどんな区切りで興味の度合いが違うんだろう。多分だけど明確な区切りはなさそうな気がする。

 そんな風に結論付けるとまた若菜が騒ぎ出した。


「昴ー!!怖いー!!ニヤニヤしてるー!!」

「きっと坂下さんのことを考えてるんだよ」

「煩いってば。行こうよ、上?」


 そう言ってエスカレーターで2階に上がり、雑貨のお店に入ろうという時そばに椅子があるのを見つけた。


「そうだ、そこで待ってるよ」

「え、行かないの?」

「だって俺必要ないし」

「隼人も書くんだよー」

「は?なんで?」

「あ、言ってなかった。せっかくだからアンナさんにも買って送ってあげようって話したんだ。みんなに送ったらお小遣いが足りなくなるからアンナさんのとこだけだけど」

「3人でお金出しあうのー」

「そうなの?まあ良いか、わかったよ。けどどうやって送るの?一回帰ってから?」

「……隼人くん住所知らない、よね?」

「当たり前だよ」

「じゃあ聞いといてー」

「仕方ないな……。聞きながらここで待ってるよ」


 ということで店に入っていく2人と別れて俺は家に電話をかけた。


「もしもし」

『あら隼人?まだ昴とお買い物?』

「うん。父さんは?」

『いるけどなにー?』

「父さんに聞きたいんだけど」

『がーん!!また!!』

「昴が秘密にしたいって言ってるから母さんじゃ駄目」

『昴までなんなのー!!』


 どうせならサプライズで彩華さんに渡したいと昴が言うから今日は部活帰りに昴と買い物に行くとだけ伝えていた。


『もしもし隼人?どうしたの?』


 母さんが騒いでいるから父さんが替わってくれたようだ。


「実は昴がサプライズで彩華さんに花束をプレゼントしたいって買い物に来たんだけどなぜか若菜も一緒で」

『あ、そうだったんだ?』

「うん。だから渡すまで秘密にしてほしくて。で、それだけじゃなくて昴と若菜がアンナおばあちゃんのとこにも送りたいって言うからそのまま出していこうと思って。住所がわからないから教えてくれない?」

『なんて良い子たちなんだろう……』

「ちょっと、まだ母さんに言わないでよね」

『わかったよ。住所メッセージで送るよ』

「ありがとう」


 電話を切ってしばらくすると昴たちが戻ってきた。どこかカフェに入って書こうということになった。


「なんて書こうかなー」

「あれ?さっきのじゃないの?」

「そうだけどヘアアクセだけじゃなくて新しいバッグも買ってほしいと思ってたのー」

「感謝の言葉を書くもんじゃないのかよ……」

「隼人くんもアンナさんにちゃんと書いてよね」

「はいはい」


 昴と若菜は2人分、俺はアンナさんにだけメッセージを書く。書くことなんてないと思いながら手でペンを回しながら2人の書くメッセージを眺めていたら昴に注意される。


「昴が言うことを書くよ」

「ラブレターの返事じゃないんだから自分で考えてよ」

「なんて書けば良いんだよ」

「なんでも良いじゃない」

「なんでもって言われてもなあ……」

「おばあちゃん大好きって書けば良いのにー」

「嫌だよ」

「なんで?僕も書くよ」

「そうだよねー」


 まったく、そんなに簡単に大好きだなんて言わないだろ、とため息をつく。

 おばあちゃんは……おじいちゃんもだけど孫は3人だって認識してる。昴が引っ越してきて仲良くなってすぐにおばあちゃんとおじいちゃんがうちに遊びに来てその時昴も彩華さんも一輝さんもすんなり家族として受け入れたんだ。最初はさすがに彩華さんと一輝さんも遠慮してたけどおばあちゃんのフランクな明るさにすぐ打ち解けてしまった。

 昴なんて小さい頃おばあちゃんにアメリカでは挨拶でキスをするのと言われてそういうものなんだーと受け入れて、今でも会うとそうやって挨拶する。俺は信じられない、ここは日本だと言って子供の時から断固拒否している。

 と、考えながら1文字も書けないでいると昴が呆れて言ってくる。


「なんでも良いんだよ?今度遊びに行くねとかまめに連絡するねとか。最近こんなことがあったよーとか」

「んー」


 いつまでも悩んでいても仕方ないと思いながら文字を書いてみた。


『この前母さんと優菜さんと彩華さんの買い物に付き合わされて1人で荷物を持たされて酷い目に遭ったよ。どうにかして』


 はたしてこれは花束に添えるメッセージカードとして正しいのだろうか、と思いながら若菜の欲しいものを書いているメッセージカードを見て、なんでも良いかと思った。


「書けた?」

「うん」

「なになに?うん、アンナさん喜びそう」

「そうか?」

「こういうなんでもない話を聞きたいんだよ、アンナさんは」

「そうなのかー」


 よくわからないがこれでオッケーということで2人もメッセージを書き上げて次は花束を買いに花屋に向かった。せっかくだから家の近くではなくこのショッピングセンター内にある広い花屋に行くことになっていた。





「隼人くん、ここにある花で良さそうなのは?」

「そうだなー。無難にピンクのバラとか白いダリアは?」

「ママはバラが良いと思うー」

「ああ、優菜さんは好きだね」

「じゃあ僕はダリアにしようかな。アンナさんにはどうしようか」

「んー……。サルビアは家族愛とか良い家庭とかの花言葉だよ」

「あ、それ良いね」

「でもそれだけだと……」

「そう?」

「じゃあ他のお花と組み合わせたらー?」

「あ、そうだよ。美香さんに渡したガーベラも感謝の花言葉があるんでしょ?」

「もう色で選んじゃえばー?ほら、オレンジ色のガーベラとかアンナおばあちゃんって感じするー!!」


 若菜がなにも考えずに店員を呼んできてあれとこれと、と言うとやたらと豪華な花束ができた。


「これ大丈夫なの?」

「なにがー?」

「お金だよ。足りる?」

「店員さーん!!これいくらになるー?」


 そう言って聞いた金額は意外とそうでもなかった。


「だいたい隼人全然お小遣い使わないじゃん」

「俺はお前たちのことを考えてあげたの。きっちり3で割るんでしょ」

「年上のくせにケチだ!!」

「はいはい。じゃあこれで良いってことで」


 俺はケチではない。買いたいと思うものがないからほとんどお金を使わず、部活などで必要なものは父さんが買ってきてしまうし服も買い物に出かけた時に母さんがこれ良いんじゃないかなーと選んで俺がその中からじゃあこれと言って父さんが買ってくれるんだ。そういうわけで毎月もらうお小遣いもお年玉も貯まる一方で全然出ていかない。

 そうして花束を3つ買った俺たちはそのままおばあちゃんに渡す花束を送る手配をして家に帰った。

 家に帰ると母さんがいつも以上にニコニコしながら迎えにきた。


「隼人ーおかえりー!!優菜と彩華さんに聞いたわよー!!」

「ただいま。連絡くるの早いね、相変わらず」

「すごく嬉しいって!!」

「そう。良かったね」

「お義母さんも楽しみにしてるって!!」

「あ、どっちかから聞いたんだ。で、言ったんだ」


 まあそれは別にサプライズにしようとか思ってなかったし良いか。

 そしてなぜか今回は自分のことじゃないのにすごく機嫌が良くなった母さんは夜ご飯にステーキを出してきた。


「隼人も若菜も昴も本当に良い子ー。ね、琉依さん!!」

「そうだね。良い子だね」

「そこまで言うことかな……」




 そして花束が届いたおばあちゃんから興奮してまた電話が来た。


『隼人ー!!花束ありがとー!!』

「知ってたでしょ」

『わかってたけどこんなに素敵な花束が送られてくるなんて感動したわー!!写真もあとで送るわね!!それにメッセージも嬉しい!!お母さんたちの荷物を持ってあげて優しいわ!!』

「無理矢理持たされたの」

『でも持ってあげたんでしょー!!本当に隼人は良い子ね!!隼人が生まれた時のことを思い出しちゃうわ!!あんなに小さかったのに!!』

「17年前のことなのによく覚えてるね」

『忘れないわよー!!もちろん若菜の時も嬉しかったけど初孫だもの!!』

「ところでおばあちゃん」

『なーに?』

「俺に英語で話すのは良いけど母さんには日本語で話しなね。電話で花束のこと連絡した時に途中からなんて言ってるのかわからなかったけど喜んでたみたいって言ってたよ」

『あら?ゴホン、そうだったかしら』


 おばあちゃんは流暢な日本語で問いかけてきた。


「母さんは馬鹿なんだから通じないよ」

『お母さんに馬鹿なんて言っては駄目よ。美香は明るくて元気で可愛らしいじゃない。でも気を付けるわ』

「母さんは泣き虫だよ」

『そうねー美香は繊細な子だもの。だから隼人がお母さん思いの優しい子に育ってくれて本当に嬉しいの。自慢の孫だわ』

「大げさだな」

『そんなことないわよー』


 そして今度は昴と若菜にも電話するというおばあちゃんに気が向いたら連絡するよと言うと感動してまた英語に戻っていたがそのまま電話を切った。

 まあ、おばあちゃんのこれには昴と若菜も慣れてるから問題ないだろう。






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